2025年。新年のご挨拶

あけましておめでとうございます! 

この年末はインフルエンザになってしまいまして、一週間寝込んでしまいました。2024年はずっとせわしない日々を過ごしておりましたので、「休みなはれ」と強制的にお休みにされてしまったような気がします。おかげさまで疲れもとれ、だいぶ調子がよくなりました。

周囲でもインフルはじめ、様々な流行り病が流行っているようです。皆様も気を付けて、健康第一でお過ごしくださいね!


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さて、新年ということで、旧年を少し振り返ってみたいと思います。

ここ数年、編集仕事、執筆仕事のいずれも、本数もかなり絞っております。もっとたくさんお仕事をした方が収入は安定していいと思うのですが、全力でぶつからないとちゃんとした仕事ができないもんですから、そうせざるを得ないという……(汗)。仕方なしではありますが、自分で望んでそうなってしまってる仕事スタイルともいえます。そういう意味では、2024年もそんな塩梅で、お仕事できたかなと思います。

編集のお仕事では、畠山健二先生の『新 本所おけら長屋』の第一巻、第二巻をお手伝いさせていただきました。『本所おけら長屋』シリーズの20巻+別冊は、PHP文芸文庫さんで刊行されてきましたが、新しいシリーズは、新天地・祥伝社文庫さんでスタートされました。私も引き続き、編集のお手伝いをさせていただくことになり、気を引き締めて臨んだ一年でした。おかげさまで、Amazon登場後、数週間「歴史・時代小説」部門で一位を獲得するなど、おけらファンの皆様はじめ、新規のお客様にもご好評いただけたようで、胸をなでおろしております。

そして、こちらも長年お世話になっております、関裕二先生の『消された王権 尾張氏の正体』(PHP新書)をお手伝いさせていただきました。「尾張氏」と言われると、古代史マニアとしては「お!?」と腰を浮かしてくださるかなと思いますが、一般的にはちょっとマニアックだったかもしれません。しかし古代史の謎を解くために、「尾張氏」は看過できない最重要氏族。古代史作家の関先生のお仕事の一つの区切りとされるような一冊となったのではないかと思います。


そして、執筆のお仕事では、6月に『空海と密教 解剖図鑑』をエクスナレッジさんから上梓いたしました。

この企画がスタートしたのは、2021年の秋。それからとにかく取材をして、資料を読み、考え続けました。「ほとんど修行だね」と言われるような日々。しかしそれほど没頭しないと、「空海さん」や「密教」について書くなんて、とてもじゃないけどできないことでした。監修の宮坂宥洪先生が優しく灯台のように進む道を示してくださり、編集の久保さんががっちり並走してくださって、それでもほぼ3年間かかっての刊行。どうなることかと心配しておりましたが、素敵なデザインとイラストの力もあって、大変ご好評いただくことができました。

さらに嬉しいのは、12月で6刷になったこと。ありがたいことに版を重ねております。お手に取ってくださった皆様に、改めて御礼申し上げます。

2025年は、引き続き畠山先生と関先生の編集のお手伝いをさせていただくとともに、エクスナレッジさんの『解剖図鑑』シリーズでも、次のテーマに挑むことになりました。『空海と密教 解剖図鑑』で学んだことを、さらに一歩進めるような内容になります。どんなテーマになるかは、まだ言わない方がよさそうですので、もう少し進みましたら、ご報告させていただきたいと思っております。

また、ちょっとわかりませんが、進行するかもしれない企画の種が、いくつか起こりつつありますので、そのあたりも実現できたらいいなあと、念願しております。

そうそう、それから、昨年始めた新しい試みがありました! 「まいまい東京」さんで、ツアーガイドを始めたのです。「縄文神社」をメインテーマに、東京の大森を歩くツアーを企画していただき、ご好評いただくことができました。それで、2025年も、ツアーガイドを継続させていただけることになりました。1月、2月、3月、4月、6月と、月一回のペースで開催していただく予定です。ぜひお時間ある方は、ご参加ご検討くださいまし。

そしてライフワークである「縄文神社」探訪の方も、引き続き重ねてまいります。こちらは「縄文神社.jp」でご報告続けていきますので、ぜひご愛顧のほどをお願いいたします。

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長くなってしまいましたが、今年もひっそりコツコツと、面白いことを重ねてまいりたいと思います。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます!!

2025年1月 元日   武藤郁子 拝

呪術合戦の話

そう言えば1~2年くらい前、『呪術廻戦』の大ヒットで、「呪術」についての企画とか提案してよ~みたいな版元さんが数社ありました。残念ながら詳しくないの、●●さんがいいと思います、みたいなフワッとしたお返事をさせていただいたんですが…

でも、たしかにいろいろ拝見してますと、呪術というか修法に関わるような記述を見たりすることも結構あります。非常に偏ってますけどもね。

今、密教本の確認をしていて、レイアウト的にかなり書き直しが必要で頑張ってるんですが、『太平記』に登場する、空海vs.守敏の修法についての記述が、やっぱり面白いなあと思いました。

太平記の記述は、時代も下りますし、物語で史実ではないですが、少なくとも南北朝~室町時代の修法については、なにがしかを語っていると思います。

太平記の中で、守敏は「軍荼利夜叉の法」で、三角壇を築き、本尊を北向きにかけて修法を行っています。これは明らかな「調伏法」で、空海を調伏(降伏)しようとしています。一方、空海は「大威徳明王の法」を修します。はっきり書いてませんが、おそらく空海も調伏法を用いています。

お互い修しあっていて、勝負がつかないため、空海は一計を講じて、「空海は死んだ」という情報を流すのです。守敏はそれを聞いて、自分の行が成就したと喜んで、自分の壇を壊してしまいます。そして、その瞬間、守敏は目がくらんで鼻血を流し、心身ともに惑乱状態になって亡くなるのです。

これはまさに…呪殺……。

この暗さ。
いかにも南北朝時代…という雰囲気がしますよね。

改めて念を押してしまいますが、このエピソードは、史実上の空海には関係ない物語です。
空海という人のパーソナリティを少しでも知ると、こういう修法の用い方は、執らないだろうと思います。しかし、フィクションの中では、こういう方法をとる人として描かれてしまっているのを見かけます。それが、空海への誤解の元にもなっているのかしら…と思ったりして。

先日、本田不二雄大兄のトークイベントでも少しお話しさせていただきましたが、戦国時代の武将についての資料を読んでいると、リアルな合戦と同じくらいの熱量で、修法による呪術合戦の手配をしています。以前、戦国武将の呪術合戦について、ちょっと調べたことがあって、願文についての論文などを読んでいたことがあります。あの辺は、時間ができたらもうちょっとちゃんと調べてみたいなあ、と今日はふと思ったのでした。

そんな今、改めて楽しみにしているのは、荒山徹先生の新刊『風と雅の帝』です!
PHPさんより9/15に発売されますが、舞台はまさに南北朝。呪術合戦が繰り広げられる展開とのことなのです!
まさしく荒山先生の真骨頂。ワクワクしています。