インド映画『マダム イン ニューヨーク』。言葉を獲得して自己を肯定していく物語!

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先日、インド映画「マダム イン ニューヨーク」を観ました。
ちょっと悲しい気持ちになっていたワタクシ。でも本映画を見てすっかり復活!!

だれでも、「自分っていったい何なんだろう」なんて疑問を感じて、自信を失ってしまうときがあると思います。そんな時には特にお勧めしたい素晴らしい映画です。

ストーリーをざっくり言うと……

インドの中流よりちょい上目の家庭の主婦シャシさんが主人公。
できるビジネスマンな夫とできる学生な娘は英語ペラペラ。ヒンディーしか話せないシャシのことを事あることにバカにしています。本人たちには悪気はないんですが、英語が喋れない頼りない母、料理作りできるから取り柄があってよかったね、みたいな態度を取り、優しいシャシを傷つけています。

そんなシャシの姉はニューヨーク在住。姪が結婚するのでシャシにきて手伝って欲しいと連絡があり、家族と離れて一人だけでニューヨークに4週間、家族と合流して全部で5週間の滞在が決定。

最初は英語が喋れないので心細く情けない目にあってしまうシャシ。でもふと「四週間で英語が話せるようになります!」という英語学校の広告を見て、家族には内緒で学校に通うことを決意します。

そしてそして…。

あんまり書きすぎるとネタバラシになってしまいますので、あれですが、とにかく、なんとも言えない希望と優しさに溢れたいい映画です!

私は特に英語が喋れないのでものすごく共感してしまいました。相手が喋ってる言葉の意味が分からない、これは本当に心細いものです。

数年前、一年ほどバンコクに住んでいたことがありましたが、その住み始めた頃に、彼女と全くおなじ心境になりました。

同居人は英語もタイ語も話せるけど、私は両方できません。言葉の仕事をしてきて、日本語にはそこそこ自信がありましたが、そんなことは全く役に立たない。
そんな自分は何にもできない、小さくて情けない存在に思えてしまって、とてもきつかった。

でも、タイ語の学校に通うようになって変わりました!
タイ語しか使わないでタイ語を教えてくれる学校だったので、英語が話せようが関係なし。最初の一ヶ月はどの国のひとも全く話せない、赤ちゃんレベルでどうにか話そうとするので、まるでカオス。
インド人、シンガポール人、イギリス人、韓国人、日本人、ロシア人、オーストラリア人。そんなバラバラな人たちががんばってタイ語を話そうとしてる、それだけでなんか笑えます。

最初は名前と出身地、年齢くらいしかわからなかったのが、二ヶ月目には大学でなんの勉強をしてるのか、何の仕事してるのか、どんな趣味があるのかわかってきて、三ヶ月目にはだいぶカタコトですが電話で話したりもできるようになりました。

言葉を獲得していく喜びは、自信を取り戻して行く過程そのものです。

そして、自分で狭くしてしまってる世界の中で息をするのが苦しくてしたがないとき、「ああ、世界ってこんなに広いんだ、いろんな文化があって、いろんな人がいるんだ」と感じることは癒しになりますよね。

シャシも、学校で出会ったいろんな国の友人との交流、肯定によって、彼女本来の価値を自ら見出し、自信を取り戻して行きます。

女性には特にお勧めですが、男性にもぜひみてほしい!

なんか自分に自信がもてないな、とか、周囲の人となんだかしっくりいかないな、そんな時にはとってもよく効く映画ですよー!


「マダム・イン・ニューヨーク」
http://madame.ayapro.ne.jp/

”山への一歩を踏み出す小冊子”『山歩みち』、三冊一気に届く!!

先日、古巣が一緒(でも部署は違う)の仲良しで、退職後も仲良くしてもらっているK氏と、お昼を食べました。

K氏は本当にアツくて実行力のある人で、すごい人なのですが、わたしから見るとお茶目な「野生動物」のような人なのです。

待ち合わせ場所に現れたK氏、ランニングに短パン、リュックサックに坊主頭で肌はこんがり焼けています。

「遊びすぎてる小学生男子か!」

と思わず突っ込んでしまいましたけども(笑)。久しぶりに会うので、なんとなく照れくさそうに頭を掻くK氏。

まったく憎めない、微笑ましい人物です。

さて、そんな彼がしているお仕事の一つで、彼の志の根幹ともいえるのが『山歩みち』というフリーペーパーです。山のフリーペーパーとして、こんなにおしゃれで一流の書き手や登山家、写真家が登壇する雑誌というのはまずない、というか、K氏でなければ不可能に近いでしょう。

『山歩みち』
http://www.sanpoweb.net/

質のいいものは読者に伝わるもので、年々発行部数を伸ばしまくり、書いていいのかわかりませんので書きませんけど、こういった雑誌としてはちょっとぎょっとするような部数を発行しています。

近況から、今後の計画、ビジョンを改めて教えてもらいましたけど、ぎょええ、すごいじゃん、でもKさんはやっちゃうんでしょ、それ!?と叫ぶ私。

志高いなあ。

細かくここでは書けませんけど、彼なりの理想があり、それを少しでも実現させるための計画はすごく緻密に、理系的に考えられているのです。

ううむ。

これぞ、私が考える「野生動物」ってやつです。理想を実現させるためには何が必要か冷徹に判断してる。動物が生き抜くために必要なことを直感的に選択しているのと一緒です。すごいなあ。

……さてさて、ちょっと前置き長くなっちゃいましたが、そんなK氏が編集人を務める雑誌『山歩みち』が手元に届きました!

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今回は、なんと三冊も一緒に!

本誌の特集は「北アルプス」。夏と言えばなんとなくこの北アルプス、とさして詳しくない私が思ってしまうので、Kさんがこの季節いつも北アルプスにかかわる仕事をしていたからかもしれません。

初心者に優しい誌面づくり変わらず。行く人には役に立つのはもちろん、行かない人でも行った気になっていい気分になること間違いなし。

連載がいつも楽しみなんですよね。

巻頭カラー「風と頂き」は石川直樹さん。そして密かに北川さんの「山麓ラーメン」は毎回熟読しています。今回が相模湖周辺でしたが、山に登らなくてもラーメン屋さんだけでもまわりたくなってしまいます。

そして、ほかの二冊は「別冊」。「伊豆七島の山」と「谷川岳」ですよ。

それにしてもすごいな~。これ全部編集人Kさんですもの。ほんとすごい。

こちらは、全国のアウトドアショップで手に入れることができます!
http://www.sanpoweb.net/category/shoplist

ぜひ、お手に取ってみてくださいね~!

(むとう)

「朋あり 遠方より来たる また楽しからずや」

一昨日の晩は20代の頃よく遊んでいた友人Mちゃんと12年ぶりの再会を果たし、お土産に食パンをいただきました。食に関するライティングも多くものしているMちゃんだけあって、この食パンが美味しいのなんのって!!

Centre the Bakeryという、銀座にある食パン専門店の食パン。調べてみるとなんとあのVironの姉妹店みたいなお店です。ううむ、さすがMちゃんだなあ。

美味しい食パンって、本当に幸せな気持ちにしてくれますね。たとえるなら、「自分が猫になって、なでるのが上手な人に背中を撫でてもらってご機嫌になってる」みたいなかんじですよ。

トーストにしても素晴らしいし、そのまま食べても素晴らしい。こんなに美味しい食パン、なかなか出会えないですよお。

そんな食パンを幸せだわあ、と思いつつ目をつぶっていただいてると、今度は宅急便が。友人Tさんからの宅急便。

メールで、「借りてた本を発見したから送るね。あと武藤さんが好きそうな本も一緒に入れといた」と連絡をもらっていたので、あ、あれかなといそいそ受け取ってあけてみると…

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まずこの二冊は、私が貸してたもの。あ、Tさんが持ってたのか!!ないなあ、と思ってたんですよね。
実はこの二冊は私にとってとても大事な本(図録、雑誌)なんですよ。私の趣向のすべてがこの二冊で説明できるかもしれないってくらい。

そして、Tさんがおまけで入れてくれたのが、
20140509-2この三冊!!!

Tさん、私の大好物分かりすぎ~!!

まず、一番右の船尾修さん著『カミサマホトケサマ』は一見わかりにくいかもしれませんが写真集。かつてこの中で見た光景を生で見たくて、大分まで足を運んだことがあります。懐かしいなあ。

大分県の国東半島は、非常に濃ゆい宗教的土壌があり、仏教的であり、土俗的なさまざまな事象が今も伝えられていて、本当に素晴らしい場所です。この『カミサマホトケサマ』はその風土をこれ以上なく正しく捉えていて、素晴らしい一冊だと思います。

そして、中央の『自然と文化そしてことば』は、初見。なんと特集が「祭文と呪文の力」ときたもんだ!不勉強でまったく存じ上げませんでしたが、アジア・アフリカ言語文化研究所の研究活動を発表する場として発刊されていたものだそうです。

そして一番左は『大津絵』。日本を代表する「民画」である大津絵を集成した一冊。Tさんはかねがね「民画」に強い興味を寄せていたけど、大津絵にも手を出してたのか…とその博覧強記ぶりに思わずうなってしまいました。
大津絵をこれだけまとめてみたことがなかったのですが、なるほど、これはいい!!
Tさんが「民画」を愛してやまないことの意味が、ちょっと理解できた気がします。大津絵研究と言えば柳宗悦ですけど、今度そちらも読んでみようかなあ。

それにしても。

友人が買ってくれた最高に美味しい食パンを食べながら、友人が送ってくれた大好物な本を眺め観る、この幸せさ、ときたら…。

私って、かなりの「幸せもの」じゃない?
と、ふとおもいました。仕事が大変でプレッシャーに負けそうになって、お腹が痛くなったりしても。いわれもない悪意を受けて、泣き寝入りしたりしても。

こうして、理解してくれる人がいる。いつも一緒にいるわけじゃないですけど、「今頃どうしてるかな?元気かな?」とお互いを思うことができる人がいる。

本当にありがたいなあ、と。

『朋あり 遠方より来たる また楽しからずや』
論語の一節がふと頭に浮かびます。孔子師匠の言う通りですよ!ほんと!

さあて、それでは、今日ももうちょっと頑張りますか!!