file.81 木屋傳の「ふくさ」

いちにちいちあんこ

若狭国(わかさのくに)にいってまいりました~!!

若狭とは、ざっくり言って福井県の西半分(嶺南というそうです)。ちなみに東半分(嶺北)は昔越前国(えちぜんのくに)と呼ばれていましたので、文化も言葉もかなり違います。

若狭は、ちょっと京都っぽい。言葉も京都弁に通じるものを感じますが、嶺北のほうはちょっと東北っぽい感じです。

私はどちらの福井も大好きで、これまで何度か一人旅をしています。
今回は、5回目。一人旅では3回目です。しかしながら、今回は8年ほど間が空いてまして、ちょっとタイムラグは否めません。実際いろいろ廻ってみて、結構いろいろ変わってましたね。そのあたりのお話はまた、「ブツタビ」にてご報告することにしまして…。
まずはあんこのお話から!
anko20141116-1(久しぶりの小浜駅!)

さて、今回は小浜市内に一泊、若狭高浜に一泊、最終日は若狭から出て、滋賀県高月に一泊してきました。

まずは初日。
小浜についたら絶対食べたいと思っていたのが、「木屋傳」さんの、酒まんじゅう!これまでも、結構売切れてることが多かったですけど、二回食べてます(二勝二敗;;)。

anko20141116-2こちらは、酒まんじゅうのほかに、小浜名物くずまんじゅうも有名。しかし残念なから今の季節はやってないんですよね。夏限定なんです。

始発に乗って、約7時間かけて、どうにかこうにか小浜駅についたのが11:46。木屋傳さんには多分12時半くらいに入ったんですけど、残念ながら酒饅頭は売り切れ><。

残念ですけど、でも何か食べたい!
ということで、黄色がきれいな「ふくさ」を購入。

初日は、とにかく風も強いし無理をしないで、羽賀寺さんに行くだけでやめとこう、と決めたました。ですので、このお菓子たちは、羽賀寺さんに拝観してからのお楽しみです。

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こちらが「ふくさ」。
金沢のお菓子に「ふくさ餅」という同じようなお菓子がありますが、それと同じかな?

袱紗(ふくさ)包みのように、焼いた生地であんこをくるむので、ふくさというらしいのですが…

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包んでるというよりははさんでますね。
anko20141116-4あ、なるほど!

一枚の大きな焼き生地に、粒あんを塗って、それを4等分に畳んでるって感じなんですね!

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生地は、この気泡が美しいですね。

黄色は秋の色なのかな。

あんこは、粒あんです。ふっくらとしていて、かなりちゃんと甘いあんこ。生地はどら焼きの生地を軽くしたような感じ。

酒饅頭を買えなかったのは痛かったけど、でも、移動で疲れた体にこの「ふくさ」はベストマッチでした。二個買えばよかったなあ。

それにしても、やっぱりちょっと残念。次回来たときはどうにか酒まんじゅう買いたいなあ。

木屋傳
http://www2.plala.or.jp/kiyaden/

file.79  香住売店の「天狗焼き」

いちにちいちあんこ

友人Sちゃんと高尾に山歩きに行ってきました。

高尾山は、新宿駅から約一時間でいけますし、都内の皆さんはもちろん、最近では外国人観光客の方に大人気の登山スポットですね。

高尾山は、ケーブルカーもありますから、街歩きの延長線的な装備で行くこともできますし、ちゃんと山歩きしたい人にも十分楽しめる、強弱を自由自在にできる、という点もいいところですよね。

また、お寺好き、仏像好きにとってもこちらはたまらないと思います。

なんと言ってもこちらには、現在も修験修行が盛んな薬王院さんがあります。こちらのご本尊は「飯綱大権現(いいづなだいごんげん)」さんです。

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薬王院さんはその名の通り、もともとは薬師如来さんがご本尊さんだったそうですが、14C頃の中興の祖・俊源という人が、修行の末、飯綱大権現さんを感得して以来、ご本尊は飯綱大権現さんとなったとのこと。

飯綱さんは、神仏習合の仏さんで、もともとは長野の飯綱の仏さんですが、修験の中でも強力な呪力を持つ仏さんということで、信仰されました。

そのお姿は、羽があり、鳥のような顔をし、手にはけん索と剣を持った姿で表わされます。そして狐の上に載っているのですが、何も知らない人が見たら「天狗さんだ!」というと思います。でもちょっと違う。不動明王のような、迦楼羅神将のような、ダキニ天のような、あくまでも仏教上のいろんな方々を合体させたようなお姿、といった感じです。

「天狗」さんというのは、この飯綱さんの眷属(おつき、お使い)なんですね。すごくざっくりと言ってしまえば、天狗さんは山伏の格好をしています。

そんなわけで、高尾は、この天狗さんがシンボルです。あらゆるところで、天狗さんの銅像や天狗さんのマークが出てきます。

そんなわけで、ここで、本日のいちあんこでございます!

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はい、出ました~!

天狗さん~!!
(葉っぱのスタイリングはSちゃんがやってくれましたよ)

こちらは、ケーブルカー山上駅のすぐ前の売店・香住売店で販売している、「天狗焼き」。

言うまでもありませんが、そうです。天狗さんの型で焼かれた今川焼のようなお菓子です。でも、いわゆる今川焼とは違うのですよ。
anko20141027-5うふ。

ものすごく可愛いですよね!?

キリッとした眉、ぐっと噛みしぼった嘴。だけどどこまで行っても丸っとしたフォルムで、ちょっとコミカルな感じです。

「う、う、うまひ…!」

写真を撮っている私の横で、早速食べ始めていたSちゃんが、そういって絶句しました。

Sちゃんは、放送系ディレクターで、食材の番組なんかもたくさん手がけている口の肥えたお方。私のようなあんこ大好き、というわけでもないので、私がこれは美味しいから食べたほうがいいんだよう!と何度も何度も言うので、それにつきあって一つ食べてみよか、みたいな感じで、購入してくれてたような…。

「ね?ね? うまかろう~!」

私が得意がってもしょうがないのですが、私、得意顔。

私も、初めてこちらの天狗焼きを食べたとき、かなり驚いたのです。皮が、今川焼とはまたちょっと違って、表面はカリッとして中はふわっとしてます。そして軽い感じなのです。

そして何より…

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あんこが、黒豆のあんこなのです~!!!

大きな黒豆が柔らかくふんわりと炊かれていて、甘さも控えめで黒豆の味がダイレクトにきます。小豆のような濃い味ではなく、もっとあっさりとしてますので、パクパク食べられてしまうのです。軽いテイストのカリフワの皮と相まって何とも言えない絶妙なバランスです。

普段は私よりもゆったりと食事をするSちゃんですが、びっくりするような速さで完食。見事な食べっぷりです。

うふふ。

私は、幸せそうなSちゃんの笑顔を見てすっかり嬉しい気持ちになったのでした。

皆さんもぜひ高尾さんに言ったら食べてみてくださいね!

お土産として持って帰ることもできますが、あのお山の上でいただくのがまたひときわ乙でございますよ。

香住売店
http://www.takaotozan.co.jp/miyage/

file.76 藤田九衛門商店の「鯉焼き」

いちにちいちあんこ

仕事が急にぽかりとあいてしまい、時間ができたので長野市と上田市に遊びに行ってきました。
実は…。大きな声では言えませんけど、仏教美術関連の本にかかわってきたのにもかかわらず、善光寺に一度も行ったことがなかったのです。ひゃ~やばいやばい!!

そんなこんなで、まず訪れたのは善光寺。

まずは荷物を預かってもらおうと、ゲストハウス1166さんへ。
一人で旅をするときは、よくゲストハウスを利用します。この5・6年で日本でもゲストハウスがぐんと増えましたよね。地元の情報を教えてもらえたり、また普段はなかなかクロスしないような人と出会うこともできるので、すごく楽しい。

さてさて、今回のいちあんこも、ゲストハウスの方に教えていただきました。

善光寺から、少し路地に入ったところにある「藤田九衛門商店」という和菓子屋さん。美味しいたい焼きみたいなあんこのお菓子「鯉焼き」が食べられますよ!とのこと。早速尋ねてみたい気持ちではありますが、まずは善光寺さんにご挨拶しないと。

そんなわけで、善光寺さんへお参りしてこちらのお店に向かったのは、4時を超えてしまっていました。肝心のお菓子が売切れてしまったらどうしよう、と思いながら急ぎ足でむかいます。

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善光寺の参道周辺には、宿坊がたくさんありますが、正面参道を一本入った少し細い道を進んでいくと…
anko20140912-2ありました~!こちらが「藤田九衛門商店」さんです!

粋な藍色ののれんがかっこいいですね~。昔からあるお店なのかしら?落ち着きがあって雰囲気のある店構えです。
anko20140912-3こんにちは~と言いながらそろそろと引き戸を開けると、こんな感じのガラスのケース。

お菓子まだ残ってる!よかった!

店内は思ったより天井も高くて広い。美しい日本の器、漆器などがさりげなく使ってあって内装も素敵ですよ!

そんな中で現れたのは作務衣姿の男性。ご主人ですね??

早速、鯉焼きを二種類一個ずつ。本当はお土産にもっと買いたかったのですが日持ちしないとのことで、今日自分で食べられる分でぐっとこらえました。

こちらの鯉焼きのあんこは、なんと「花豆」なんです!

「花豆」は、生産量もそれほどない貴重な豆です。私の記憶では、私が生まれた埼玉中部では取れず、群馬県のほうに遊びに行った時に母がお土産で買ってくる美味しい豆。いわば「ご馳走豆」でした。

その「花豆」を贅沢にもあんこにしてしまうとは!
そんな感動をご主人にお伝えすると、

「花豆は標高700から1000メートルの場所でないと豆がとれないんです。長野でも当店のあるこのあたりでは、花は咲くのに実がならない。不思議でしょう」

へえええ!不思議~~!!

花豆は長野でも標高が700~1000メートルの場所でしか収穫できない貴重な豆。その土地でとれたものを使って美味しいものをつくるということがしたかったご主人は、この貴重な地の豆・花豆をあんこに、そしてこれまた長野県産の美味しい小麦を使ってお菓子を作ることにした、……とそんなお話をしてくださいました。
anko20140912-5「これが、鯉焼きの型の原型なんです」

そう言って見せてくださったのが、かわいらしい木製の鯉。おお!かわいい~!左が表、右が裏、かな?この二つの型を合わせて一体の鯉になる、ということですね。

「仏師の方に彫っていただいたんですよ。長野は海がない県でしょ。だけど、皆さん何の疑問も感じずに普通に『鯛焼き』を作る。え?長野は鯛はいないのになんで?と思った。佐久は鯉が有名です。だから『鯉焼き』を作ったらいいじゃないですか、と言うと、なるほどねとは言ってくれても、だれも作らない。だったらもう自分で作ろうと思ったんです」

ご主人は大坂のご出身で、銀座で日本料理の料理人をされていたんだそう。いろんな世界を見てきた方だからこそ、そんな「シンプルだけどずっと住んでいる人にとってはわかりにくい大切なこと」に気付く『目』を持っておられたんでしょう。

「それでね。型を作るときも時間がかかりました。鯛焼きみたいに動きがないデザインにしたくなかった。死んでる魚じゃなくて、生きてる鯉でお菓子を作りたかったんですよね」

なるほど!確かに生きてる生きてる。生きてるっていうか「跳ねてる」!

……そんなお話をしているうちになんだかもう、その場でこの鯉焼きをいただきたくなってしまいました。こちらではお抹茶も何種類かおいてらして、御主人が点ててくださるとのこと。一番高価なものは2500円のものもありましたが、私は手を出しやすい500円くらいの種類のものでお願いしました。

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ご主人がお茶を入れてくださってる間に、撮影大会!!こちらが二種類の鯉焼きですよ!

青い包装のものが最もプレーンな鯉焼き、黒いほうが生地に墨が入っている鯉焼きです。

anko20140912-8包装紙をとるとこんな感じ。よく見ると両方ともお腹のほうを並べて写真撮ってますね、私。
anko20140912-10こちらが表(墨)で…
anko20140912-11こちらが裏(プレーン)。

かわいいでしょ~!?
anko20140912-6ご主人がお茶を持ってきてくださいました。ではではさっそくいただいてみましょうか!
anko20140912-9思い切ってお腹から割ってみました。こちらが花豆のあんこですよ~!よく見ると、皮の部分が入っているのがわかりますでしょうか。
anko20140912-7この花豆の皮、ですが。これにもご主人のこだわりが。
なんと花豆を炊くときに、二種類の方法で炊くんだそうです。花豆は皮が固めなのですが、それも美味しさとして考え、一つは皮の硬さが少し残る炊き方にし溜まり醤油を加え、細かく刻んで皮の存在感を残す。そしてもう一つは皮もやわらかく炊き上げる方法で作り、…。そして出来上がった二つのあんこを混ぜ合わせてやっと「鯉焼きのあんこ」になるんだと。

ひゃ~、手が込んでますね~!

いただいてみますと…なるほど、花豆の風味がどんとくるその先に、少し香ばしい気配があります。言われてみたら醤油の香ばしさですね!そして皮の食感がごくごくわずかなアクセントとして舌にあたります。

美味しい!!

すごく美味しい!!

あんこはもちろんですけど、この皮がまた美味しい!!モチっとしていて、食べてて気持ちよくて癖になる食感です。

ううううむ。これはいい。

もし、家の近くにこのお店があったら二日に一度は絶対食べに来ちゃいますよ!と叫ぶ私。なぜ二日に一度かというと、それぐらい制限をかけないと果てしなく食べてしまうからです。

そんなことを口走る私に、御主人はにっこり笑って、

「来週また来たらいいですよ。今季節もので桃のあんこを開発中ですから」

と悪魔の?ささやき…。桃のあんこ~!!?何それ絶対美味しいよ~!!

「来週も、お待ちしております」

……とどめ刺されました。さすがに来週は無理かもしれませんが、鯉焼きを食べるために、そしてご主人と話したいがためにまた来てしまうのは間違いないです!

本当に魅力的なあんこものとご主人でした。皆さんも長野に行ったら絶対に行ったほうがいいですよ~!

藤田九衛門商店
http://fujitakuemon.wordpress.com/