【若狭旅】⑤観る者を無碍自在へと導く美しさ!中山寺ご本尊、秘仏・馬頭観音菩薩坐像

秘仏・馬頭観音菩薩坐像!!

さて、今回の旅の、最大の目的である中山寺のご本尊を拝観しましょう!

実際に拝観したのは11月ですからもう三ヶ月くらいたちますが、あの感動は今見たかのようによみがえってきます。

中山寺の山門で、えらいこと感動したわたしでしたが、またこちらの本堂を前にして思わず震えました。

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かっこいいです!!!!

1343年に建立されたという本堂は、重要文化財に指定されています。この穏やかながらもすっと伸びた屋根の反りの美しいこと。

そして由緒正しいお寺にふさわしい、正面一基の金燈籠。灯籠自体は新しいものですが、このスタイルを選ばれているところが、さすがという感じです。

この中に、あの白洲正子さんも絶賛した馬頭観音さんが居られるとは。なんと相応しいんでしょうか。

文化財に指定されますと鉄筋コンクリートで耐震構造のある建物で保管しなければならなくなったりします。どうしても、法律上しょうがないことなのですが、やはり本来祀られている場所に、そのままある、というのすがたに出会いますと、本当に嬉しくなってしまいますね。

観る者の意識を解き放ってくれるような!?

そしていよいよ、ご対面です。

山門の仁王さんでまずはひと感動、さらに本堂でも感動を重ねて、そこからの馬頭観音さんですよ。期待は否が応にも高まります。

年を経て美しい茶色になった階段を踏みしめ、ほの暗い本堂の中へと入ります。

そして、いつになくいそいそしずしずと、お厨子の中にあるご本尊で秘仏の馬頭観音坐像を拝観しますと…

……

………うっ。

美しい!!

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ご参考までにパンフレットに掲載されてました写真をご紹介させていただきますが、正直言って、この10倍美しいです。

不思議なことなのですが、まさにこのお姿なんですけど、ナマで拝見するとなんか違うんです。気配っていうか。なんと言えばいいのか…。

例えば、腕や手の柔らかく優しい線、写真でもお分かりになるかと思いますが、実際にはその優しさが限りない感じなのです。限りないというか、はてしない、といった表現のほうが合うかもしれません。

また、お顔は憤怒相をとられてますが、男性的に見えて男性的でない。かといって女性でもない。いや、でも女性のもつ美しさ、強さ、そういったものも感じさせてくれるのですよ。それが同時に男性的な力強さをも帯びている、といった感じ。

ううむううむ。

何でしょう、この美しさは!

ちょっともう、どうにも説明できませんよ!

それでも、あえて言うならば……。

圧倒的に美しく、まさに人界を超えた世界を現しておられるので、果てしないイメージの広がりや可能性を、観る者に与えてくれるお像、といったかんじ。

今回私は、このお像に拝観して、すごく「認められてる」ような気持ちがしました。

「よくきたな。そうそう、それでいいよ」

そんなかんじです。肯定されるようなあたたかい感じをいただきました。

でも、また違う精神状態の時には、まったく違う印象を感じるかもしれないと思います。実際、一緒に観た方たちにも、コワイと思った方もおられたようですし、まさに千差万別です。

人によってその姿を変える、まさに「観音」さんそのものではないですか!
無碍自在(むげじざい)、この言葉は禅の世界で妨げるものなく自由である境地のことを言うそうですが、そんなふうに、その美しい変幻自在なお姿でもって導いてくださるような、ものすごいお像だと思います。

こちらのお像は秘仏ですから、生きている間に再び拝観できることはないかもしれません。次は17年後……。

…あれ。50ン歳か。いけるかも??!

また、来たいな。その時にはどう思うんでしょう。自分がどう思うのかすごく気になりますね。

念願の秘仏ツアー、大満喫!
さて、こうして、無事長年の願いであった、中山寺と馬居寺の秘仏・馬頭観音さんにお参りすることができました。

中山寺さんでは、美味しい和菓子とお抹茶の接待もしていただき(ツアーの中の一環です)、とても心地よい時間を過ごすことができました。

あいにくの雨でしたが、とても晴れやかな気持ちになる、いい一日でした。

やっぱり、本物を見るのが一番楽しい!

そしてそのために、はるばる来るのが、またたまらなく楽しいんですよね。たいへんですけど!

(むとう、了)

 

 

仏教美術の源流を観る!「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏」展開催(3/17~5/17)

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ちょっと先の話になりますが、東京国立博物館さんでは「みちのくの仏像」展のあとに、こちらが開催されますね!

インドと言えば、お釈迦さんの生誕地と連想する人は多いんじゃないでしょうか。
もうちょっと詳しく言うと諸説あるそうで確定されていませんが、ネパールとインドの国境辺りに生まれたということなんだそうですが…。

ちなみに『仏像』が作られるようになったのは、ブッダが亡くなってから5世紀ほど後、発祥地は、ガンダーラ地方(現・アフガニスタン東部とパキスタン北部周辺)で一世紀半ごろ。そして少し遅れてマトゥーラ地方(現インド北部)で作られるようになりました。

今回の展示は、そのあたりの流れをコルカタ博物館所蔵の逸品でもって、観ることができるようです。楽しみですね!

個人的には貝葉経のコレクションが観られるのも楽しみ♪

「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏」展
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1701#top

 

【若狭旅】①秘仏界の超有名仏像、馬居寺と中山寺の馬頭観音さんに会いたい

福井県、若狭の国エリアは関東から6時間かかります
8年ぶりに訪れた、福井県小浜市を中心としたエリア。昔風の言い方をすれば「若狭国(わかさのくに)」。

仏像の里としてあまりにも有名な場所ですが、関東在住の人間にとってはなかなか足が伸ばせないエリアともいえると思います。

理由は、……シンプルに、遠い!!

若狭のあたりというのは…
20141213-2ここです!

関東からいくとなると、東海道新幹線で米原へ、そこで北陸本線に乗り換えて、敦賀で小浜線に乗り換えて、ようやく到着。そんなかんじです。電車の本数が少ないということもあり、結局6時間弱かかります。

なかなかな時間ですよ。ほんと。
いきたくても、ちゃんと時間をとれないといけない場所ですよね。

今回は三泊四日、時間をとりました。
けっこう強引にとりました!

それはなぜかと言いますと、この、「特別開帳」に行きたかったからなのです!

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馬頭観音像界の超有名人(仏?)、中山寺と馬居寺の秘仏二体が!
毎年、福井県が行っている秋の特別ご開帳ですが、今回の目玉は、なんといってもこのチラシにあります二体の仏像です。こうしてチラシに知れっと掲載されていますと、なんとなくシレッとしてしまいますけど、実際にはシレッとしている場合じゃない仏像なんです。

右のお像は、中山寺(なかやまじ)さんの御本尊で33年と、17年に一度のご開帳、
左のお像は、馬居寺(まごじ)さんの御本尊で、25年と、12年に一度の午年にご開帳、
という拝観者にとってものすごくハードルの高い秘仏なのです。それが一気に同じ時期にみられちゃうっていうんですから、そりゃもう、浮足立っちゃうような話なわけです!

両尊ともに、「馬頭観世音菩薩(ばとうかんぜおんぼさつ)」という、いわゆる「観音(かんのん)」さんです。

「え?菩薩なのに、こんな怖そうな顔なの?」

と思われる方も多いかもしれませんが、馬頭観音さんは、このようなこわいお顔で表わされるのです。

『日本仏像事典』真鍋俊照編(吉川弘文館)を見てみますと…、

「慈悲を本誓とする菩薩であるにもかかわらず、この観音像に限って常に恐ろし気な忿怒相に表現され頭上に白馬の首をつけている。もちろんこの忿怒形はあらゆる魔障を消滅するための方便で、いわゆる衆生の六道四生といわれる生死すべての苦しみを断つことを内容とするものである。(中略)」

とあります。

また、この馬頭さんは、かなり時代は下りまして江戸時代以降は特に、ですけども、馬の守り神としてもとても人気があります。江戸時代の石仏の中にはこの馬頭観音さんがよくありますね。

しかし、この若狭のあたり、特に上のチラシにある二尊があるエリアは、そんな風にポピュラーな存在になる、もっと前、飛鳥時代くらいから始まる信仰の場所。少なくとも平安後期には「馬頭観音信仰」があったようで、「青葉山」という小高い山の周辺には、馬頭観音さんを本尊とするお寺が集中しているのです。

(つづく)