弁天さんの紋章「三つ鱗」
狛犬さんや宇賀神さんのキュートさを堪能しているうち、45分余りあっという間に過ぎてしまいました。靴を脱いでお堂の小さな回廊で並んで待っていると、堂守のおじいさんがにこにこしながら、
「今回は皆さんよかったですね!お堂の中に入って弁天様のすぐ近くに来れるなんて、もう何十年もなかったことなんですよ」
と少々興奮気味におっしゃいます。こちらのご開帳は12年に一度行われてますが、内陣まで入れるというのはなかなかないみたいです。やったあ!
お堂の裏手のほうが入口になっています。弁天さんがいらっしゃるの祭壇の上の厨子。正面から見ると一番奥のほうにありますので、裏手から入ったほうがより近くに寄れるからでしょうか。
その後ろ扉のあたりにこんな紋章がありました。
そのおじいさんのお話では、これが弁天さんの紋だそうです。
この真ん中の三角三つは、結構有名なもので「三つ鱗(みつうろこ)」と言います。有名どころでは、鎌倉幕府の執権を務めた北条氏はこの「三つ鱗」です(「北条三つ鱗」と言います)。
調べてみましたら、そもそも北条氏が「三つ鱗」の家紋を用いるようになったのには、江ノ島弁天さんが関係してるんですね。
北条執権の祖、北条時政が、いまいち不遇だったころに家運興隆を江ノ島弁天にお祈りしたところ、満願の日の朝に高貴な女性が現れて「法華経をよく報じて非道なことをしないようにすれば栄えるだろう」とお告げをして、めちゃくちゃ大きい蛇に変化して海に姿を消したんですって。そしたらそのあとの床に、大蛇の鱗が三枚落ちていて、時政はそれを持ち帰って家宝にし、また家紋にもした、…というストーリーがあるんですね。
以来、北条氏ゆかりのところでもこの「三つ鱗」は目にしますし、弁天さんに関係あるところでもよくこの紋をみることができます。この写真のように「三つ鱗に波紋」のパターンが弁天さんの紋になってるみたいです。
井の頭の弁天さんにいよいよあえる!!
さて、そうしていよいよ内陣へ。
もうお気づきかと思いますが、秘仏ですので、写真撮影はNGです。(というか、そもそも仏像はほとんどが写真撮影不可です。申請などしたらまたお話は別ですが)
でも、ここで皆さんにそのお姿をご報告できないのは残念すぎるので、その時の記憶をたよりにちょっとイラストにしてみました。
腕は8本。持ち物は、ほとんど覚えてないんですが、剣と宝珠をもってた、と思うんですよね。
それから額の上にも宝珠があった、ような。
ンでたぶん頭頂部に宇賀神さんがいた、ような…。
正直言って、全部勘違いかもしれません。すみません。
だけど、拝観できた時間、たぶん10秒くらいなんですよ~~^^;。しかもその場でメモるなんて言語道断って雰囲気ですし。そんなわけで、ざっくりこんな雰囲気のお像だった、と思っていただけたら幸いです。
全体的な雰囲気をご報告しますと、彩色がよく残っていて、とっても美しいお像でした。造作も大変繊細で、上品です。
お顔は丸顔で、ふっくらとして優しいお母さん、といった感じです(顔はこのイラスト結構似てると思います)。
HPなどで明記されてませんので、時代はちょっとわかりませんが、創建当初からの、「最澄作」というのはちょっと難しいかな^^;。時代はもうちょっと下ると思います。鎌倉末期、または室町くらいじゃないかな、と。いや、でも、何の根拠もないあれです。雰囲気だけでは、そんな感じだった、と思ってください。
とはいえ、何より感じたのは「ああ、ここのあったかい雰囲気通りの弁天さんだなあ」ということ。拝観したくて集まってきた人々がにこにこして譲り合う感じ。お寺側でご奉仕している氏子の方々もみんな楽しそうだった。いらいらした人なんて一人もいなかったなあ。
そんな優しい雰囲気の中心にいるのが、こちらの弁天さん、というのが、ものすごく腑に落ちる感じでした。とにかく優しいのです。そしてなんだかおめでたいのです。
吉祥寺が文化度高いのにはやっぱり…
そもそも、弁天さんこと弁才天は、仏教の中の神様ですが、もともとはインドのヒンズー教に登場する川や湖の女神サラスヴァティーのこと。水と豊穣をつかさどる女神で、富・福をもたらす女神であり、芸術や言語の女神でもあります。
吉祥寺は、100年ほど前には山深い武蔵野の地でしたが、ここ数十年はまさに文化の街として発展しています。そんな街に、こちらの弁天さまがいらっしゃる、というのが何となくものすごく正しい気がします。
さすがだなあ、やっぱり吉祥寺だなあ、なんて思いながら拝観を終え、お堂の外に出ました。お堂の左わきには、「不動堂」があります。こちらには不動明王が祭られているとのことですが、こちらも秘仏みたいですね。
お堂の周りを一回りしてみると、こちらにもかわいらしい弁天さんがいらっしゃいました。
こちらの石像の弁天さんも頭の上に宇賀神さんお乗せてるので、宇賀弁天さんです。江戸時代のものだと思われますが、こちらも優しい感じで素敵ですね!
境内には、こんな石像もたくさんありましたが、そのすべてにお花が供えられてました。そのお花が、なんだか妙にお洒落でね。ガーベラやユリを中心に、まるでフラワーアレンジメントって感じ。こちらの弁天さんにはこんなお花もまたよく似合います。
この頭頂部でとぐろを巻いてる宇賀神さんがまたいいですね!
お堂の中の弁天さんには12年に一度しかお会いできませんが、こちらの弁天さんにはいつでもお会いできます。それでも十分ありがたいなあ。
皆さんも、吉祥寺にいらっしゃる際には、ぜひこちらの弁天さんに足を延ばしてみてください!
なんだかとって和みますよ~!
井の頭弁財天
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