file.87 いなば播七の「おはぎ」

いちにちいちあんこ

関西のあんこもまた、本当に美味しい。

というか、正直、どこの地方でも、土地の方がていねいに作ったあんこは、間違いなく美味しいんですけどね!!

でも、あえて言うなら、プロフェッショナルな味がする、というかんじ、かなあ。都会の洗練さと申しますか…。

お江戸のあんこも、やはり都会の洗練さというのもありますし、もちろん美味しいですけど、なんと申しましょうか、……方向性がそれぞれちょっと違う。

これまた、京都と大阪もまた、それぞれ違う…。

全体的に、お料理なんかいただいてても、大阪と京都は違うなあ、という印象はありましたけれども、やはりあんこも同様に、やはり違うなあ、と思いましたですよ。

20150325-1

3月9日に大阪にお邪魔しまして、いつも大変お世話になっておりますH山先生の親友Aさん、そしてY姐さん、サプライズゲストN編集長と合流。
めちゃくちゃ美味しいお寿司屋さんに連れて行っていただき、おなか一杯美味しいおすしをいただきました。

新幹線の最終で東京にもどるというN編集長を見送ると、

「もうちょっと飲んできましょ、それからむとうさんの好きなあんこもまだやし!」

とAさん満面の笑み。

しかし、この時点でも9時ごろ。東京だと和菓子屋さんはもうしまってる時間です。和菓子屋さんて店仕舞い早いですもんね。

でも、さすがAさん。さささ、とお目当ての和菓子屋さんに入り、ささささとおはぎを箱買い。

「ほな、いきましょか」

またさささささ、と軽快にとあるビルのエレベーターへ…。私はひたすらさささささについていくばかりですが、おはぎ持ち込めるお店なんてあるんでしょうか。

エレベーターが開くなり、わあ、なんておしゃれなバー!

Aさんがおっしゃるには、行きつけのバーなので、お願いすれば持ち込んでも大丈夫、とのこと。ひゃ~、それにしても、バーにおはぎ持ち込みなんて新鮮過ぎませんか?!

でも、若くてかっこいいマスター、ふんわりと微笑みつつ快諾。うわあ、すみません!!

20150325-2早速箱を開けて、きれいなお皿におはぎを3つ乗っけてくださいました。

まあ!!!
なんてきれいなおはぎなんでしょう!

粒あん、こしあん、きな粉。

大きさはそれほど大きくありませんが、しかし、おすしでパンパンなお腹に、10時近くのこの段階で、この3つちゃんと食べきれるのか!?>私!
視覚的にはものすごく食べたい、ワホワホいきたい。
しかし、胃袋的にはほとんど余裕はない、大丈夫か?私?
とひたすらおはぎを見つめ続ける私をよそに、Aさんが、ささささささとマスターに、

「むとうさん、お酒あんまのまへんから、フルーツで軽いのでも作ってもらえる?」

なんてかっこよくオーダーしてくださってますよ。
え!でもおはぎにカクテルって!?
和菓子にお酒って、あうのかな、どうなのかな。

キョロキョロする私。明らかに挙動不審です。

そんな落ち着きのない私とは対照的に、流れるような美しい所作でささっとマスターが作ってくださったのがこちら…

20150325-3フレッシュなイチゴと紅茶のリキュールのカクテルでございます~!!
ひゃあああ!なんてきれいなの~!!

さっそくいただくと、新鮮なイチゴの甘さ、匂いがふわーっと広がりますが、抜けるときに紅茶のきりっと爽やかなテイストがある感じで、ものすごく美味しい。

そして、おもむろに……

20150325-4

こしあんのおはぎからいただきました!

うわああ、美味しい~~!

あんこがものすごく上品!!甘さはごくごく控えめです。こしあんらしい食感、アズキの風味がものすごくたってる感じ。そしてここにカクテルをキューっといいただくと…。

合う!

ものすごく合います!

よく考えてみたら、イチゴとあんこって、相性いいですものね。言ってみたらイチゴ大福みたいな感じです。でも、ちょっとお酒が利いているので、体験したことのない余韻みたいなものが漂います。

大人だ!

興奮してそんなことを喋りまくりながら、おはぎをどんどんいただいちゃう私。カクテルもごくごく。もっとゆっくり飲みなさい、と心の中で良識ある私が私を窘めますが、美味しくてくちが止まりません。

その後に、さらに出してくださったカクテル第二弾は…

20150325-6

アレキサンドリアというブドウを使ったカクテル。さわやかなブドウの甘さと、仄かな苦みがたまらなく美味しい!

これまたおはぎに合います~~~~!

この苦みがまたニクイ。あんこと一緒にいただくと、コクが増すと申しますか。いやあ、それにしても和菓子とお酒っていうのもこんなにも美味しくいただけるものなんですね。

本当にびっくりしてしまいました!

帰宅しましてから調べてみましたら、こちらのおはぎ、「いなば播七」さんという餅屋さんのおはぎでして、なんとこのお店、1781年創業の老舗なんだそうですよ!
そして、夜22時まで開店してるみたい。すごいなあ。
こちらは「ジャンボおはぎ」というのが名物みたいですね。一キロくらいの大きなおはぎだそうです。

それにしても、Aさん、本当に美味しいお店、そして大人なおもてなししていただきまして、本当にありがとうございました。Y姐さんもお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。

また、マスター、本当に美味しかったです!ありがとうございました!近かったら通いたいです~!

大阪サイコ―ですっ!

いなば播七
http://www.rurubu.com/sight/detail.aspx?BookID=A4001100

file.73 茜丸本舗の「名入れどらやき」

いちにちいちあんこ

なんとひと月以上あいてしまった~~!!

一日一あんこは、続行しておりますが、アップが間に合わず…。あかんですよね。

反省。

……

さてさて、気をとりなおして、本日のいちあんこでございます。

本日のいちあんこと言っても実はもう二週間ほど前のいちあんこ(正直申告)。実はリアル今日のいちあんこは十万石まんじゅうでございましたが、これはもうご紹介済みですので、良しとして。

20140303さて、こちら、編集をお手伝いさせていただいております畠山健二先生の大ヒットシリーズ第二弾!『おけら長屋(二)』。来月にはお待ちかねの第三巻も発刊されます。今頑張って最後の仕上げに入っておりますよ~!

さて、そんな畠山先生かいただきましたのが、今回ご紹介するどらやきです。

anko20140802-1

大阪在住のカリスマ添乗員Hさんが、たくさん送ってくださったとのことで、おすそ分けいただきました。

anko20140802-2わああ、名前が書いてあります!

ネットで調べてみますと、こちらの茜丸本舗さんでは、「名入れ菓子本舗」という事業をされているみたい。
anko20140802-3ほわほわした生地でおいしそう。

どれどれ……

anko20140802-4

あれ??

あんこの色が少し淡いですよ?

よく見てみますと、どうもアズキだけじゃない豆が入っているみたい。サイトを調べると茜丸本舗さんの一押し商品が「五色どらやき」で、なんと五種類の豆を使ったあんこなんだそうですよ!
金時豆、うぐいす豆、小豆、虎豆、白小豆の御種類が入ってるんですって。私が食べたものの中ではうぐいす豆は見かけませんでしたが、なんとなく虎豆かな?金時豆かな?というのは発見できました。

アズキだけじゃなくていろんな風味の豆が入ってると、味がぶつかるかなとおもいますが、そんなことはなくちゃんと一つの味になってます。すごく美味しい!さすが大阪!!
サラッと軽い感じでいくらでも食べられちゃう味です。

先生からは9個もいただきましたが、我が家は全員甘党ですので、瞬殺でした。私は二個しか食べてないです…悔しい…

 

茜丸本舗
http://www.akanemaru.co.jp/

【関西旅】⑤植治七代目の仕事に出会う「慶沢園」/『山の神仏』展@大阪市立美術館

さて、『山の神仏』展は、想像していた通り濃厚な展示で、私はへとへとになってしまいました。余力があったら動物園にもよろうかな、なんて思っていたのはやはり無理がありましたね。

気温も急に上がったことも理由かもしれません。園内にある喫茶店で冷たいお茶でも飲んで一休みしたら、素直に京都に向かおうかしら、と思いながら、美術館を出てふと左手に歩いていると…

「慶沢園」

といういわくありげな扁額を掲げた門があります。

そういえば、この大阪市立美術館は、住友本家の本宅を寄贈したものです。だとしたら、当時最高の庭師が入ったに違いないですよ。

少々熱中症気味の痺れた頭を、どうにか動かしながら、ちょっと説明書き読んで見るかどうか決めよーっと、とよれよれしながら説明書きを見て、一気に目が覚めました。

「小川治兵衛作庭による…」

ええええ!!植治(うえじ)じゃん!!???

いやあ、ほんとすみません。油断してました。今回はとにかく「山の神仏」展を見に来たので、そのほかのリサーチはしてこなかったんです。危なくもったいないことをするところでした。

慶沢園 うっほ~!この第一歩からして、治兵衛サンっぽいわ~!石橋から眺めるこの池の美しいこと。まずは「光」のアプローチ、って感じ。残念ながら曇りでしたけど、それでも植栽に植え込んでいるツツジや花菖蒲なんかが美しく色を添えてくれてます。一雨来た後にこの光景を見れたらさらにベストだったなあ。

さて先ほどから連発してますこの「小川治兵衛」さんというのは、京都に江戸時代中期から続く植木屋・造園業者「植治」の七代目。1860年生まれですからぎりぎり幕末生まれ、明治から昭和にかけて大活躍した名作庭家です。

庭園研究家の泰斗・尼崎博正先生をして、
「日本の庭園史上、特筆すべき造園家が三人いる。中世の夢窓国師、近世の小堀遠州、そして近代庭園の先覚者、植治こと7代目小川治兵衛である。」(『植治 七代目小川治兵衛』京都通信社刊より引用)

と言わせしめているお方。あの夢想国師、小堀遠州と並ぶと、尼崎先生がおっしゃるんですもの、まさに庭園史上の「巨人」です。
20140621-1(上の本は私のバイブル。写真も美しくて素晴らしい一冊ですよ!!)

「かれらは独自の自然観、美意識、造形感覚を提示しつつ、新しい時代を切り開いていったという共通点を持つ」(同書から引用)

確かに夢想国師は平安時代の庭では表現しきれない新しい世・鎌倉時代を代表する作庭を行い、それ以降の作庭を決定づけましたし、小堀遠州も安土桃山時代の華やかさを継承しつつも、近世らしいより開かれた空気感のある方向性に、江戸初期以降の作庭を方向づけました。そして、小川治兵衛さんも江戸時代から明治期という、それまで支配者にはなりえなかった階層のひとたちが貴顕の士となった時代の写実的で開明的な作庭を方向付けました。
慶沢園

(手前は四阿。こういう四阿から池、植栽の広がりってのがまた絵になりますねえ)

この7代目植治さんの代表的なお庭と言えば、山縣有朋邸の無鄰菴(京都)、円山公園、平安神宮神苑などがあります。どのお庭も、ほんっと~~~に素晴らしいので、ぜひまだご覧になったことがない方は、観に行ってください。特に、治兵衛さんのお庭は「体感」することが大切。ただ眺める庭ではなく、実際に回遊して「五感」で感じるようにしているお庭なんですね。
慶沢園(四阿から眺めた池。手前には睡蓮、奥にはツツジがきれいに咲き始めてました)

また彼は「水と石の魔術師」なんて呼ばれたりしてます。とにかく水の使い方、石の使い方がかっこいい!!
特に石橋や、飛び石の絶妙さは、素人の私でもワクワクしてしまいます。平安神宮の飛び石「臥竜橋」なんてもう、絶妙すぎて動揺して池におちそうです。
慶沢園(この石橋なんかも、治兵衛さんぽいんですけど、なんか微妙に管理が心配^^;)

こちらの慶沢園も、いかにも治兵衛さん作庭のお庭という雰囲気が随所に残っています。回遊しながら水のせせらぎ、四阿の陰翳から、眼前を広がる明るさを感じて崎には邸宅が臨める、と。
慶沢園(洲浜のようなエリアから飛び石、水のあるエリア、島へのアプローチ、そしてその先には本邸背面。この絶妙な連結感!)

それにしても。
和のお庭にもかかわらず、その自然主義的なデザインは、洋館との相性もばっちりです。本当に不思議なことですけど…。

今回、帰宅してから、改めてこの本を開いて読んでみて、つくづく思いました。わたしは治兵衛さんのお庭がすきだ!!・・・と。

今回の出会いを、きっかけに、これから重点的に治兵衛さん作庭のお庭を見て廻ろうかしら。

それにしても、大阪市立美術館、そして慶沢園、今回かなり無理やりスケジュールに入れこみましたが、本当に行ってよかったです!