本田不二雄さん監修の『仏像列島』(宝島社)発売中!

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神仏探偵こと、本田不二雄さん監修のムックが、宝島社さんより発売されました。

一般的に、仏像の本や雑誌の特集などに登場するお像は、国宝や重要文化財などの国指定文化財が多く、どうしても重なっていると思います。それを悪いことと言いたいわけではありませんよ。重なってしまうのはしょうがない面がありまして、限られた紙数で紹介できるお像は、かなり絞られますし、最も王道でオーソドックスなものをまずはご紹介して…となるのは、当然と言えば当然なのです。

しかし、日本は世界でも類を見ない「仏像大国」です。国宝や重文に指定されていなくても、素晴らしいお像がたくさんありますし、地元の皆さんとの関係性が、涙が出るほどステキなお像もたくさんあります。このムックには、そんな魅力あふれる仏像が、これでもかと紹介されています。神仏探偵によるセレクションですからね。カバーデザインを見ても一目瞭然だと思いますが、一筋縄ではいきませんよ~!

第1章 厳選 日本の美像
第2章 感動の虚像と大仏
第3章 唯一無比の異形像
第4章 謎めく容貌の仏像ミステリー
第5章 全国のすごい仏像

という章立て。ランナップを見ますと、なるほど、さすが本田さんだなあという面々です。知らない仏像もご紹介されてました!中でも印象的だったのは…

山形県鶴岡市・瀧水寺大日坊の「波分大聖不動明王立像」。上のページの左を見ていただけたらと思いますが、大日坊にこんなお像があったとは!?とびっくりしました。

私も何度かお詣りしておりますが、記憶があいまい…。思い返してみると、大日坊さんと言えば、即身仏・真如海上人がいらっしゃるお寺として有名です。私も鶴岡の即身仏を拝観したくて訪れたのでした。そのため、他の尊像の印象が少し淡くなってしまっているのかも。

いずれにしても 「波分大聖不動明王」とは……。

本文を要約しますと、不動明王が持つ剣(不動明王の力の分身とも考えられる「 倶利伽羅剣」)は、絵画で表わされることが多いものの、本像は珍しくそれを立体化したものだとのことです。 倶利伽羅剣自体は立体化されることもそんなに珍しくないのですが、このように龍が剣先を咥えている様子のものは、観たことがないです。これは珍しい。

ちょっと調べてみますと、湯殿山信仰ならではの尊像と考えたほうがよさそう。大日坊は、湯殿山信仰の中心地であったお寺さんですが、 「波分大聖不動明王」という尊名は、行の中にあらわれる湯殿山信仰ならではの、不動明王の一形態のようです。

他にも気になるお像がたくさん掲載されていましたが、どれもこれも一筋縄ではいかないようなお像ばかり。早速参拝したい仏像のページに付箋を貼りました。

それにしても、見たいものが多すぎて困っちゃいますね。生きているうちにどれだけ参詣できるでしょうか。

仏像とは、日本文化の結晶であり、日本史の証言者、地域の人々が繫いできた心の宝物であると私は考えています。本ムックで本田さんがご紹介されている仏像はまさにそんな宝物です。ぜひ皆さんにも、本ムックをご覧いただいて、豊かな「仏像列島」日本を、もっともっと堪能していただきたいと思います。

(むとう)

仏像にもっともっと会いたくなる!『仏像に会う』西山厚著(ウェッジ)

長年お世話になっております西山厚先生が、ついに仏像の本を上梓されました!

奈良博さんで学芸部長として八面六臂のご活躍をされていたころから、お忙しいことは重々承知ながらも、どうか先生の「仏像の本」を作ってください、ファンとして待望しております!と言い続けてまいりました。そんな私にとって、まさに待望の一冊です。

さすがです。さすがとしか言いようがない。
何がさすがかと言うと、本文から少々以下、抜萃させていただきます。

ーー【時代分け】
時代分けは政治史が基準となるので、ここでは厳密に考えなくてもいいと思っている。(中略)まず仏像と出会うことが大切で、それぞれ自由に感じていただけたら、それでいいと思っている。

冒頭で、こういうことを言って下さるわけですよ。このスタンスは、西山先生ならではで、その教えに、私も多分に影響を受けています。学術的な側面はもちろん大切かもしれないけれど、それよりなによりまず「心で仏像と出会う」。その大切さを先生はずっと教えてくださっていますからね。

私自身の体験からしても、仏像との出会いは、理屈ではないと思います。何かぐっとくるものがある、それは、非常にパーソナルな出来事で、人それぞれ違う、大切な体験だと思うのです。仏像との出合いと言うのは、そういうことがあるんですよ、ほんとに。

先生にお話をうかがうと、そのパーソナルな出会いに、より深度が加わります。美術的にどうとか、そういうことだけではなく、その仏像がなぜそこにいるのか、その背景の物語を先生が教えてくださると、途端に奥行きが生まれるのです。

先生の講演会がいつも満員御礼で、多くの方に愛されて止まないのは、先生のお話を聴くことで、そういう体験をしたいとみなさんが思っておられるからだろうと思います。この本は、まさにそういう体験をさせていただける一冊ですね。

拝読していると私自身も大好きな仏像も多く、自分の好みが、先生と重なっていることを静かに喜びつつ、ぜひ私もお目にかかりたいと思う仏像に付箋をしました。

特に絶対会いに行きたいと思ったのは、福井県小浜市の加茂神社の「千手観音」像。小浜市は何度も訪ねていますが、こちらのお像はまだお目にかかったことがありません。

それから、滋賀県・栗東市の金勝寺の軍荼利明王像。金勝寺は一度は行ってみたいと思っているお寺さんですが、なかなか行けていません。やっぱり行かねばですね。

そして、先生の文章を読んでいると、私が大好きな仏像の皆さんにもめちゃくちゃ会いに行きたくなってしまいました。今年は一度も奈良に行けてないしなあ。今はコロナ禍ということもあって、何となく行きづらいですが、本書を読みこんで、十分に準備したいと思います。

ぜひ、仏像大好きな方も、これから仏像に出会いたい方も、お手に取ってみてくださいね!めちゃくちゃお勧めです!!

(むとう)

武人たちが信仰した‶最強武神”毘沙門天とは/『歴史街道』令和2年3月号(PHP研究所)

いやあ、ほんと。
好きなものは好きだとアピールしとくもんですねえ。『歴史街道』編集長のOさんは、私が仏像大好きだ~!と話しまくっていたことを、ちゃんと覚えていてくださいましたよ。

歴史雑誌において、最も読者の皆さんのニーズがあるであろう、「血沸き肉躍る戦いの庭」みたいな世界……戦国時代や幕末あたりというのは、一般誌だったらまだしも、『歴史街道』さんでは、私ごときではとてもとても……。

しかし、そこに密教やら修験道、美術や食べ物なんかで角度を与えても大丈夫だったら、結構いけます。はい! 各社様、そんなオファー、ぜひぜひどうぞ。お待ちしております!

さてさて、そんなわけで、今回は大好きな仏像、しかも奈良国立博物館さんの特別展「毘沙門天―北方鎮護の神ー」開催に絡めての、毘沙門さんの記事を書かせていただきました!

ほんと至福。
至福としか言いようがない時間でした。

ぜひとも誌面でご覧いただきたいのですが、今回は4Pの記事なのに、なんと毘沙門天像の写真が6体も掲載されています!!さらにもう、その6体は選りすぐり中の選りすぐりです!

いち見開きに、鞍馬寺さんの毘沙門天像(国宝)と、東寺さんの兜跋(トバツ)毘沙門天像(国宝)が並んじゃってるんですもの。ほんと贅沢にもほどがあるってくらい贅沢。これは、書籍では到底無理です。奈良博さんの特別展あってこその、贅沢なご登場です。

 

今回は毘沙門天のお話だけでは、あれなので、「毘沙門天と武人」というテーマにして、ちょっとだけ角度を考えてみました。みんな大好き坂上田村麻呂とか、上杉謙信が、超ド級にガチ勢だったという話を中心に思いを込めて書かせていただいとります!

実は、ここだけの話ですが、こちらに掲載させていただいた分量の3倍は書いちゃいましたよ。いったん書いて、それを三分の一に縮めたんですが、最初の文章は冗長かもしれませんが、愛に溢れててなかなか悪くないので、いつかどこかでご紹介できたらいいなあと思っております。

ぜひ、お手に取ってみてくださいね!
そして、奈良博へ、GO!!!!!(3月22日までです!)

最後になりますが、O編集長、担当してくださったWさん、今回も大変お世話になりました。ぜひまたよろしくお願い申し上げます。

(むとう)