About 武藤 郁子

神仏・聖地探訪家。編集者兼ライターとして神仏や聖地、歴史や自然をテーマに活動中。著書に『縄文神社 首都圏篇』(飛鳥新社)、『縄文神社 関東甲信篇』(双葉社)、共著に『今を生きるための密教』(天夢人)がある。2024年6月『空海と密教解剖図鑑』(エクスナレッジ)を上梓。

2017年は「慶派イヤー」!⑥始まりました!『運慶』展!!@東京国立博物館(9/26~11/26)

『快慶』展、そしてついに始まった『運慶』展!

待ちに待った『運慶』展、いよいよ始まりましたね~!

『2017年は「慶派イヤー」』ということで、何度か既に弊HPでも書かせていただいておりますが、今年は4-6月には『快慶』展(@奈良博さん)にて開催され、秋には、この『運慶』展が開催されるということで、多くの仏像ファンが浮足立ち続けた一年、と言っていいんじゃないでしょうか。

それにしても奈良博さんの『快慶』展、よかったな~。
あの「金色の坩堝(るつぼ)」空間は、本当に素晴らしかった。

快慶という人がつくりあげようとしたものの一端に、ちょっとだけ身をひたせたような気がしました。「理解した」とかではなく「身をひたせた」という表現が自分的には正しいかんじ。あの深遠で濃厚な世界を私ごときが「理解した」なんておこがましい。でも、理屈じゃなく体感させてもらえた何かはある、そんな感じなのでした。

さて、一方の『運慶』展はどうかな~。

10月15日より前の平日が狙い目かも?!

今日は贅沢にも、神仏探偵ことH先輩と、担当編集のSさんもご一緒です。
いいですね!誰かと一緒にというのは!

平日木曜日のお昼頃でしたが、待ち時間は20分でした。とはいえ、実際にはそんなに待たなかったように思います。10月15日にNHKの『日曜美術館』で放映があるそうなので、その前までだったらだいたいこんな感じなんじゃないかな、と予想。
なので、皆さん、そこをひとつポイントとお考えいただくといいんじゃないかなと…。

様々な雑誌で特集を組まれていましたから、どんなラインナップかはご存じの方が多いと思います。私は、こういういい方はあれですが、あえてあまり雑誌を拝見しないようにしてました。
というのも、運慶や慶派のお像は、本当に有名なものばかり。拝観したことがあるものが多いんですね。なので、今回は「何が来て何が来ないか」を、知らないままには拝見したかったんです。

仏像好き人生のエポックメイカー・毘沙門天さん@願成就院!

実は、仏像好きの人生を歩むことになるきっかけをもらった仏像というのがありまして。それは、願成就院の仏像なのです。
あれは確か、小学2年生のころ。伯母の家が願成就院の近くにありまして、私がすでに仏像好きだと聞いた伯母が、願成就院に連れて行ってくれたのです。

それまでは、好きだけど、「唯一大好き!」というわけではなかったんです(エジプト考古学にも同じくらいはまっていたのでした)が、この出会いにより、圧倒的に仏像のほうへとひきつけられてしまったんです。

それも、願成就院の「毘沙門天」像でした。
看板の写真にも登場している、こちらのお方です!

30年ほど前のことですから、当時の願成就院は本当に小さくて、子どもが見てもかなり質素な現代風のお堂でした。その小さなお堂の中に、ものすごい存在感の阿弥陀仏、毘沙門天、不動三尊像が所狭しと並んでおられました。

その時の衝撃ときたら……!!

仏教のこともよくわかりませんし、何の知識もありませんけど、「うわあああ」と思いました。ここまで振り切ってると、これがものすごいんだということは、子どもにだってわかるんです。

でもよく考えたら、ここ数年お目にかかっていません。2013年に国宝に指定されたと聞いて、まるで身内の尊敬している長老が受勲したような、誇らしい気持ちになったりしてたんですが、最後に拝観したのはそれ以前ですから、もう7・8年は拝観できてませんね。

ポスターにも図録の表紙にも登場しているくらいですから、間違いなく来られているでしょう。願成就院は国宝5体こられてるのか。否か……。

(続く)

『運慶』展 @東京国立博物館
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1861

 

【2017宗像・対馬・壱岐旅】⑮対馬で最も陽気を感じたお社・天神多久頭魂(アマノタクズタマ)神社〔式内社〕

対馬北部の山道を走っていると、にわかに立ち上がる「山梨」感

翌日、さらに北上し、ツシマヤマネコ保護で有名な佐護地区を目指します。その間の道程は、ほとんどが山道。道はよく整備されていますが、海はほとんど見えない島の真ん中をひたばしるので、いったいここはどこだっけ?という気持ちがふつふつと…

「なんかさ、山梨っぽくない?」

友人がポツリとつぶやきます。
わかる~~!そうなのよ、そう!
いきなり目を瞑ってここに連れてこられて、ここどこだって言われたら、山梨か、長野って答えるわ!…という、そんなかんじなのです。

もちろんこの地域に来たからには、
対馬野生生物保護センターで、ツシマヤマネコさんにお目にかかったり……

対州馬にも体験乗馬させてもらったり……

イキモン部活動も、存分に楽しんできましたが、そこはまたイキモンブ項目でご紹介できたらなということで、ここは先を急ぎます。

その五、天神多久頭魂(アマノタクズタマ)神社〔式内社〕と、神御魂(カミムスビ)神社〔式内社〕

佐護のあたりは、古くより対馬唯一と言っていいような穀倉地帯です。穀倉と言ってしまうと大きすぎますかね。いえ、でも水田が広がる唯一の場所とはいえるでしょう。

水田地帯を抜け、入り江に出るとそのほとりに、かわいらしいこんもりとした緑地帯が見えてきました。天神多久頭魂(アマノタクズタマ)神社です。

わああ…。
何とも言えず気持ちのいい場所です。
そして、すごく愛らしい場所……。

溜息をつきながら、たたずんでいると、何かの視線を感じました。
ふっとソテツの下に視線を向けると、

あ、なんかいる。…目があった!

茶色の毛がふっさふさの、やたらにかわいい生き物が私のほうを見つめていたのです。見つめ合ったのは一秒もなかったでしょうが、妙に長い時間がたったような気がします。

はっと気が付いたら、その生き物はいなくなっていました。おそらくイタチ、チョウセンイタチかなと思われますが、このお社に招き入れてくれたような気がして、ますます嬉しい気持ちになります。

タクズタマさんのお使いかな~、と口元をほころばせながら、さっそく…

こちらのお社のご神体は天道山で、社殿のない古い様式です。写真で二つ目の鳥居の奥に見える祭壇は、天道山を遥拝するために設けられたもので、「東面と北面に鳥居があり」と『日本の神々』にあるのですが…。

鳥居は三基建っていますが、上の写真の方角が東面しているのは確かにそうですが、下の写真が南面してるような…あれれ?

それはともかく。

遥拝所を中心に、両側に二基、積み石型の石塔があり、東面、南面を鳥居でもって結界してるこの様子は、まさに磐境(イワサカ)です。かっこいい!

この結界の中に入ると、なんとも爽やかで、軽やかな気が流れているように思います。今回の対馬で参拝したお社の中でも断トツに明るい!気持ちいい!

ただし、この祭壇がある場所の前までは、って感じですね。それより中は沖縄の御嶽(うたき)のような濃厚な気配がして、写真を撮ることも憚られる気がして、撮りませんでした(びびり)。

タクズタマと「天道信仰」

ところで、こちらの主祭神は「タクズタマ」という神さまなのですが、いったいどんな神さまなんでしょう。

実は、対馬には固有の神道「天道(てんどう)信仰」というのがありまして、タクズタマはこの天道信仰の象徴である「天道菩薩」と同体なのです。

この信仰は、神仏習合が盛んに行われた中世に生まれたものようですが、

「尊い生まれの女性が、太陽の光で受胎し、男の子・天道童子を出産。神童の誉れ高く、僧となり巫祝の術を覚え、上洛、帰郷する。33歳の時、体調不良をどうにかしたい天正天皇の要請を受け、再び上洛。見事平復させ、感謝した元正帝は、様々な恩賞と、宝野上人の称号を賜った…」

といったような、物語が語られるんですけども、極めて中世らしい物語かなと思います。

一方、タクズタマは、タカミムスビとカミムスビの子どもです。この二柱は先だっても少し書きましたが、日本神話では「ヒトリガミ」とされる尊い神々なんですけど、対馬では、夫婦神なんですね。

おそらくこちらが、古い神話として対馬に根付いていて、中世になってから、天道法師の物語と習合した、ということだと思います。

面白いのは、この夫婦神と子供神が一緒に祀られていないということ。

タクズタマを祀る特に重要な神社は、二つありまして、ひとつがこの「天神多久頭魂神社」で、もうひとつが、対馬の最南端の集落・豆酘(つつ)に鎮座する「多久頭魂神社」なんですが、前者の近くにはお母さんであるカミムスビのお社があり、後者の近くにはお父さんであるタカミムスビのお社があるんです。

必ず、片親とセットって言うのが、なんか不思議ですが、興味深いですね。
天神多久頭魂神社から、車で5分ほどの場所に、お母さん、カミムスビのお社・神御魂神社があります。

こちらも杜の中、鬱蒼と茂る草を押しのけて進むと、現れます。

めちゃくちゃ、素朴!
鳥居には手書きで神社名が書かれてますし、お社も、普通のおうちのよう。
しかし、気配はとても濃厚なので、鳥居の中に入らずに遥拝して、失礼しました。この濃厚な気配、沖縄の御嶽にそっくりですよ!

(続く)

『運慶』@東京国立博物館、観に行ってきましたー!

トーハクさん開催中の『運慶』展にいってきました!

今日のお昼頃で20分待ちと出ていましたが、さほど待たずに入場できましたよ。

日曜美術館の放映がたしか10/15だったと思うんですが、その前までが狙い目かも。

詳しいレポートはまた改めて書いてみたいと思っておりますが。

とりあえず、仏像好きのみなさま!

言わずもがなですが、観に行かなくてはならない展覧会ですよー!!