About 武藤 郁子

神仏・聖地探訪家。編集者兼ライターとして神仏や聖地、歴史や自然をテーマに活動中。著書に『縄文神社 首都圏篇』(飛鳥新社)、『縄文神社 関東甲信篇』(双葉社)、共著に『今を生きるための密教』(天夢人)がある。2024年6月『空海と密教解剖図鑑』(エクスナレッジ)を上梓。

六田知弘『石の時~宇宙との対話、祈りのトポス~』展(~3/9まで)

さて、今回はちょっとイレギュラーかもしれませんが、『石』をテーマにした素晴らしい写真展をご紹介いたします。

今回もこの展覧会に連れて行ってくださったWさんは、もともと超大手新聞社で企画展などのお仕事をされていた方。え!?あの展覧会もWさんの企画だったんですか?!みたいに、お話を聞くたびにびっくりしてしまうような、すごい方です。

でも、とても気さくな方なので私は恐れ知らずにもご厚意に甘え続けて、はや何年^^;。
Wさんには、ほんとうにいろいろなものの見方を教えていただいています。

さて、そんなWさんにお連れいただいたのは、六田知弘さんの写真展です。

古美術売買の名門、繭山龍泉堂さんで開催されている写真展「石の時」。
六田チラシ
スコットランドの巨石遺跡、スペインの中世寺院、ボルブドゥール、アンコールワット、タブローム、スリランカ、雲崗石窟、奈良、慶州など、各地に残るおそらく祈りの対象になったであろう石造物を展示されてます。

会場はそれほど広いわけではありませんが、非常に趣味良く効果的に、写真が展示されいて、私たちは会場にはいいた時から、浮き立つ心を止められない!という感じになってしまいました。

一階にはブリテン島の巨石遺跡から始まり、大陸のほうのスペインなどのプリミティブな原キリスト教といった面持ちの写真を経て、二階に展示されているアジアの石造物へとつながります。

素晴らしい流れ!

特に私にとって印象的でしたのは、スコットランドの巨石遺跡。そのたたずまいたるや、まあ美しい!
特にチラシにも掲載されている写真。こちらは、まるで名作庭家が精魂傾けて作り上げた立石のようにも見えますし、信仰そのものといった存在感をバシッと感じさせてくれます。
六田さんのお写真は、たぶん私の肉眼で見るより非常に鮮明で、奥行きのある像を認識させてくださる写真なんですよね。

ちょっと話ずれちゃいますが。
ヨーロッパ各地に残る巨石信仰の遺跡は、子供のころからすごい憧れてたんですよ~。
例えば、「ストーンヘンジ」とか。昔「世界の7不思議」みたいな本には必ず出てたあれです。

ブリテン島の北部にあるスコットランドは、ヨーロッパでも最古の国、ともいえる長い歴史があります。多くの環状列石などの巨石祭祀遺跡等は、紀元前3000年ごろから紀元前1000年ごろにわたって建造されたそうで、ここに豊かな文化をもった民族が繁栄したことを示しています。しかし当時は文字がつかわれていなかったので、その実像はいまだ謎…。

この六田さんの写真にとらえられているルイス島の環状列石(カラニッシュ遺跡)は、紀元前1700年ごろに建てられたとのこと。
すごいですよね。3700年余り、この姿のままこの島に立ち続けてるんですよ~~。

この素晴らしい写真展で、「そういえば、私、ヨーロッパの遺跡とかすごい見てみたいんだった!」ということを、ものすごく強く思い起こされてしまいました。いやはや。

銀座のほうに御用のある方は、ぜひ!
Wさんに教えていただきましたが、繭山龍泉堂さんはとても格式の高いお店とのこと。そんな普段だと敷居が高すぎて入れない空間に入れる、というのもまた、うれしいことですよ~~。

『石の時』展(2013年3月9日まで)
http://www.mayuyama.jp/mayuyama_event_01.html

 

『へんな仏像』という本がすごい!

最近チェックしていなかったので、資料を探す意味も含めていろいろ本を探したりして見てたら、さすが学研さん!という本を発見しました。

江戸時代あたりの、割と新しい時代のものが多いのですが、お?というものもちゃんと掲載してますし、私自身初めて知る珍品も多数登場!
千葉県にあるという「覆面観音」という仏像なんて初耳でした。「覆面」ですよ。マジでわけわからんですよね。すごい!

いやあ、これは労作です。大変ですよお。こういう本作るの^^;;。

構成もこっています。

目次↓
第一章 忘れがたき神仏像
第二章 怪仏観音
第三章 あらわれた異形の神々
第四章 聖者たちの異貌
第五章 鬼女・聖女礼賛
第六章 ダイコク変化
第七章 変容する地蔵尊
第八章 異相の阿弥陀
第九章 天王の偉容
第十章 黄昏の性神たち

単純に言ってしまえば、ほとんどが神仏習合の、神であり仏である…といった境界型の仏像がほとんどです。民間信仰で大切にされてきた身近な仏像、といったかんじ。
やりすぎ感も洗練されない感も、民間ならではです。素晴らしい想像力、いや、妄想力!

ちょっと残念なのは、カバーデザイン。
このお像を表1に持ってきちゃうと、天狗の本?なんて思ってしまって、ちゃんとした仏像の本だということが伝わりにくいように思いました。

こんなことを言いたくなってしまうのも、内容が大変な労作だからです。
しかもこれだけ頑張って、お値段571円(税別)!!!しかもオールカラー!!!
ううむ。これはすごい。本当にすごい…

なんだか少々ずれたところで感心してしまってますが、とにかく内容が素晴らしいのです。仏像好きな方にはお勧めです。「こんなお像あったの?」という驚きが必ず味わえますよ!

苔(コケ)にあいたい~鎌倉観察会編②鎌倉ぐるりコケだらけ!

生き物の生存戦略??
北鎌倉駅からまだ歩いて数メートルの段階で、早くも3種類のコケを教えていただいちゃいました。今回、N先生はあらかじめ下見までしてコースを選んでくださったそうで、動きに全くむだがありません。確実にコケを見せてくださいます。

東慶寺からまたちょっと行ったところにある『去来庵』(ビーフシチューで有名なお店です)の門前にある大きな石の前でストップ。 ヒメジョウゴゴケ

ちょっと写真が見づらいかもしれませんが、このグレーの粒粒して見えるもの、これが「ヒメジョウゴコケ」という地衣類の一種だそうです。「子器」と呼ばれる部分がじょうごの形をしてるので、こういう名前になったとのこと。
さらに、N先生のお話では、この地衣類は銅に汚染された場所に生えるものらしいです。汚染というと何だかコワイですが、例えば屋根が銅版で葺かれてたり、樋が銅でできてたりしますよね。そうすると、そこをつたった水が、下に落ちた時に銅成分を含んでいるんですって。それによってそこのあたりの土には多くの銅成分がしみ込んでるんだそう。なので、銅は生き物にとって毒なので、そのあたりには、銅に強い(もしくは銅を好む)生き物しか生えてこないんだそうです。
これも、生物の「生存戦略」ってやつでしょうか。ほんとに自然界というのは、よくできてますよね。

さて、この観察会では実にたくさんのコケをN先生にご紹介いただいたんですが、私の脳味噌の性能が悪く^^;、さらに自分が書いたメモが汚すぎて判読できない、という情けない状況なので、ここからは印象に残ったものをピックアップしてご紹介してまいりましょう。

東慶寺からほど近い浄智寺の門前に、池と石橋がありました。その池にはふわふわと緑のものが浮いてまして…
koke15

ちょっとだけ掬って観察。終わったらすぐに池に戻しました。自然のコケはとっちゃダメ!なんです。

ちょっとだけ掬って観察。終わったらすぐに池に戻しました。自然のコケはとっちゃダメ!なんです。

水面に浮遊したりするコケの一種で「ウキゴケ」というんだそうです。先のほうがY字になっていて、そのまた先がY字になってどんどんわかれて増えていくとのこと。
水の上にもコケがあるなんて初めて知りました!

続々と現れるコケの皆さん!」
浄智寺からちょっとだけハイキング気分で源氏山公園を抜け、銭洗い弁天へ。
この道すがらもたくさんのコケを観察することができました。

印象深かったのは、浄智寺裏手で教えていただいたこちら!
モジゴケ「モジゴケ」という地衣類の仲間。ちょっと遠目かもしれませんがよく見ていただくと、黒い筋のようなものがたくさん見えてきます。これ、組合せによっては文字みたいに見えるんです。なので「モジ」ゴケなんですって。この黒いのはは『子器』なんだそうですが、なんだか不思議な生き物ですよね。
ウメノキゴケ

こちらは源氏山公園で観察した「ウメノキゴケ」という地衣類。
排気ガスなどに弱くて、空気のきれいなところにいる地衣類なので、大気汚染の指標によくつかわれるんですって。
地衣類は成長がゆっくりなので、ここまで大きくなるにはかなりの年数が必要だそうですよ。

一度見つけると、だんだん見えてきます
さて、こんな風に観察していきますと、いつも見ているはずの風景の中に、コケはたくさん生きていることがわかります。まさに私の目は「節穴」。自分がどれだけ選択的に風景を見ているのかを自覚しますね。
でも、こんな風に教えていただきますと、単なる木のシミだと思っていたものが、何年も生きてきている地衣類だったりすることがわかります。
これって、すごい「気づき」ですよね。

先生と歩いていてつくづく思いましたが、鎌倉ってそこらじゅうにコケや地衣類がたくさんあるんです。特に先生が観察会のために、と選んでくださった場所を歩いたということはもちろん最大の要因と思いますが、それにしても、コケだらけでした!
寺好きゆえに、鎌倉には結構きていますが、こんなに生き物にあふれている場所だとは知りませんでした。改めて感動してしまいました。

帰宅してから、散歩していると自宅の周りの木も地衣類がたくさんくっついてます。みてなかったんですね。っていうか、これが生き物だ、ということと直結しなかったので、注目してなかったんですよね。

いまいち記憶力も悪いし、あれな私ですが、N先生の観察会に参加させていただいて、「コケ」という存在に「気づく目」を与えていただいたと思います。
そんな新しい目で見てみると、若干気持ち悪くなるくらいこの世の中はいきものだらけですよ!(笑)
嬉しくなっちゃいますね!

最後になりますが、お忙しい中ご用意いただき、ご案内いただいたN先生、本当にありがとうございました!そして、お誘いくださいましたYさんも本当にありがとうございます。また遊びに行きましょうね~~!

(終わり)