『大日本魚類画集』の魚たち〔大野麥風展〕①日本の「博物画」の系譜

突然ですが、日本の博物画ってすごいかっこいいですよね。

東京国立博物館なんか行きますと、江戸時代の博物画を見ることができますが、ほんとに素晴らしい。・・・あ、でも博物画、というか本草学の図譜というべきですね。この場合。

江戸時代、日本中で「本草学」と呼ばれる学問が盛んにおこなわれました。
本草学というのは、もともとは中国で薬効のある動植物を研究する学問、医薬学みたいな感じで発展したものですね。日本にも奈良時代には伝わっていて、薬学の基本みたいになっていました。

16世紀末、中国の本草学の決定版『本草綱目(ほんぞうこうもく)』が上梓され(上海・1596)、間もなく日本にも輸入されました。それに触発されて日本でも本草学に本格的に取り組まれるようになり、その後、貝原益軒の『大和本草』、寺島良安『和漢三才図会』などが上梓され、独自の発展を遂げます。
#この『和漢三才図会』、今でいうと絵のついている百科事典みたいな感じです。薬効のある動植物だけでなく、星の名前や、食器の種類や酒の種類にいたるまで網羅されています。

江戸時代は、こんな感じで今でいうと「博物学」的なものが大流行したのですね。大名の間でも、自藩の魚介類、鳥類、植物などを図鑑としてまとめる作業が大流行。大名のやることですから、ものすごく丁寧な、密度の濃い絵を掲載した図譜が作られました。

っと、前置き長くなりましたが、今回はそんな日本の博物画のある種の到達点ともいえるんじゃないかという『大日本魚類画集』と、それに至るまでの日本の博物画の流れを改めて見直せる展覧会『大野麥風展』(東京ステーションギャラリー)のご紹介です!
大野麥風展もうチラシからして可愛いですよね。デザインがまた良し!!
チケットチケットもまた凝っていますね。こういう凝り方は、今回の趣旨ともとってもあっていると思います。もしこれを麥風さんが見たら喜んだんじゃないかな~。
「ありがとう、…でもこの口下から腹にかけての切り方はどうにかなりませんか」
なんていうんじゃないでしょうか?
すみません、100パーセント妄想ですけども。

図録もまたかわいいです。
図録この本体が薄い水色の透明プラスチックケースに入ってました。いいですねえ。いいですねえ。

さて、今回の展覧会は、前半では江戸時代(栗本丹洲)、明治・大正時代(平瀬與一郎)の博物画が展示されており、夭折した平成の天才博物画家・杉浦千里(1962年生まれ・享年39)の原画も展示されていました。

そして、いよいよ本題の麥風(ばくふう)さんの『大日本魚類画集』の登場です!
#ちなみにこの画集は、会員500名限定で1937年から1944年まで、6期に分けて、各期に12点、断続的に頒布されたものです。あれ?よく考えましたらこの期間って思い切り戦時中含んでますよ。ええええ??!

どわ~~~!すごすぎる!これが木製版画~~~!!!???
「原色木版二百度手刷り」ってのは、いったい???!!変態的にすごい多重刷りですよ。(ちなみに今の一般的な印刷は4枚の版で構成されています)
なんかもうすごすぎてよくわかりませんが、私が好きだなと思ったものを図録から引用してみますと。例えば、このナマズ。
なまずかわいいい!!!
なんかメルヘンな感じになっちゃってますけど(笑)。
江戸時代の鯰絵みたいな構図ですね。そして、水草の実がまるで宝石のように赤い。仏画のようにも見えます。
カツオこちらはカツオ。美しく張りのある体のラインと強い目が印象的です。そして構図がまたすごいですよね。フォーカスのかけ方というか…
麥風さん、カメラも持たせたら素敵な写真を撮ってくれそうな感じしますね。

(続く)

大野麥風展(~9/27) 東京ステーションギャラリー
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/now.html

 

file.31 虎屋の「あんみつ」

いちにちいちあんこ

あんこが好きだと言いまくっているので、今度スイスに移住してしまう友人Kさんから「一番お勧めはなに?」と聞かれました。スイスに行く前に食べてみたいとおっしゃるのです。

そ、それは。責任重大!
嬉しくも悩ましいお題ですよね~~。

あんこと言っても、あんこを使ったお菓子ということで考えますと、種類がたくさんありますし、豆の種類もいろいろあるし…

ううう~~ン、ううう~~~ン、と考えておりましたら、はたと思いついたのが今回ご紹介する「虎屋のあんみつ」です。
さっそく、Kさんご夫婦と食べおさめに行ってきました!

虎屋はあまりにも有名でお店もたくさんありますし、皆さん今更?とおっしゃるかもしれませんが、いやあ、やっぱり500年以上の歴史は伊達じゃありません。

虎屋さんは、創業は室町末期。もともと京都で御所にお菓子をおさめている和菓子司さんでしたが、明治時代に天皇家が東京に遷座された時、東京にも進出してきたんですよね。

虎屋さんの和菓子は、その歴史そのままという気がします。京都和菓子の正当さを守りながらも、東京らしい武家文化的な潔さを感じさせる「きりっとした味」。

赤坂に本店があり、私はこちらであんみつをいただくのを「ご褒美」と呼んでます。
あんみつは約1200円。ちょっとお高めですね。普段、私が食べるあんみつは700円くらいまでのもの。そんな私にとっては、ちょっと贅沢な逸品なのです。

今回は、六本木ミッドタウンの菓寮へいってきました。
六本木ミッドタウン店の良さは21時までやってるというところですね。そして平日だとかなりすいていて、ゆったりと過ごすことができます。

このあんみつは1200円払って食べる価値のある素晴らしいあんみつなのです。それがこちら!!あんみつひゃ~うつくし~~!
虎屋さんのあんみつを見ると、あんみつも「和菓子」だということを再認識しちゃいますね。

あんこが美味しいのはもちろんですが、寒天以外にも、同じようにカットされた水ようかんやキビ、やゼリー、金時豆にえんどう豆…と、その一つ一つに「仕事」を感じさせてくれます。

あんみつもういうまでもありませんが、このこしあんの美味しいこと!

黒蜜も本当に美味しいし、金時豆とえんどう豆がまた美味しい!オプションで花豆3粒を100円で入れてくれるサービスもありますよ。オプションといえば、白玉とアイスクリームも100円プラスで入れてくれます。

いっしょにいったKさんご夫婦も、とても喜んでくださいました。「パリの虎屋に食べに行く!」と意気込むKさん。そうそう、虎屋さんはパリ展開されてますもんね。

チェーン店展開されてますけど、虎屋さんは味を落とさないんじゃないかな~。なんて思います。ぜひ皆さんも、お近くの菓寮にいってみてください!カキ氷やほかのものもはずれなしですよ!!

ちなみに、赤坂本店では、「虎屋文庫」という菓子資料館も併設しており、年に何度かですが展覧会を催してます。私のお勧めは、こちらで日本のお菓子の歴史に触れて、菓寮で一服、です。ちなみに、今年は11月一日から「和菓子の贈りもの」展を開催されるそうですよ!!
私も久しぶりに行ってみる予定です。

虎屋
http://www.toraya-group.co.jp/main.html

虎屋六本木ミッドタウン店
http://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13037370/

【仏勉】仏画・曼荼羅の世界を楽しみたい


仏像は好きだけど仏画はちょっと苦手、と思ってました

仏像は大好きでよく観仏に出かけておりますが、平面的な方向は大変弱いのですね。

よく考えたら、これって不思議なことですね。普段でしたら絵も大好きですからよく観に行きますし、自分でも下手な絵をよく書いています。…それなのに、仏教に限っては、絵画が苦手、とは。これいかに。

実は、これには理由があるんです。

まず理由の第一は、「すごく難しい感じがするので苦手」。特に「曼荼羅」となると、複雑すぎます。ざっくり金剛界・胎蔵界の二つの世界を表わす曼荼羅がある、ということぐらいしか知りません。

そして第二の理由は、これまでいいものに出会ってこなかった。ということだったみたいなのです。すごくシンプルな理由。

このことに気が付いたのは、昨年開催された『ボストン美術館 日本美術の至宝』展でのこと。さすが、フェノロサ、ビゲロー、岡倉天心が買い集めただけあって、ま~筋のいいものばかり!
私のような素人にもそのクオリティの高さには、驚愕させられました。特に、仏画のクオリティは思わず声をあげてしまうほど。

「あああ、ここまでふりきってたら私にもわかります~~!」

と心の中で叫びました。

つまり、たいしていい眼は持ってないですけども、振り切って素晴らしいものというのはわかります。2位、3位、4位の差はわからないけど、1位はわかる、みたいな。そんなかんじ。

難しくてもわからなくても、「自分が好きなもの」ができたらこっちのもの
特に『法華堂根本曼荼羅図』(奈良時代)なんてもう!!
これは、東大寺の法華堂(三月堂)に伝わったものだそうで、日本にあったら間違いなく国宝ですよ。お釈迦さんが法華経を説くシーンを描いたもので、こういうものも「曼荼羅」とよびんですね。

法華堂根本曼荼羅図@ボストン美術館像

(『ボストン美術館 日本美術の至宝』展図録P54より引用)

夢見るように美しいお釈迦さんと脇侍の菩薩さんとそのほか諸尊の皆さん。素晴らしいです。

私はこの仏画をはじめ、ボストン美術館所蔵のあまりに素晴らしい仏画群を見てはっきり認識しました。「仏画ってわからない」じゃなくて単に「素晴らしい仏画に出会えてなかったけ」だってこと。

私がふだんから金科玉条?のごとくおもっている「わからなくても何でも、圧倒的にいいもんはわかる!』法則は、やはり有効なのですよ。

こういう体験があると、ちょっとしたフックが自分の中でできてくるので、仏画を見ることが自分にとって意味のあることになっていきます。

このフックというのは、この場合、
「自分にとってすごく好きだと思った『法華堂根本曼荼羅図』」が、自分の好みの核になった」ということを意味しています。これができますと、その定点をもっていろいろものを見られるようになるので、すごく世界が広がるのです。

さて、そんなわけで、根津美術館で開催中の「曼荼羅展」、そんな自分を試す意味も込みでとても楽しみにしておりました。

私のフックは有効なのか??
そして、私にとって仏画はいまだ「難しいもの」の域を出ないのか?

わからないまでも、楽しみたい、これが私の小さな野望だったのです。

(続く)