【犬スペシャル】琉球犬に会いたい②

琉球犬保存会の元会長、新垣さんのお宅へ
レンタカーを借りてむかったのは与那原町。那覇市内から車で30分弱くらいです。沖縄本島の南部に属する場所です。

「今日もあいにくの雨だねえ」
新垣さんは、そう言いながらにこにこと迎えてくださいました。
実は、本当に予定していた日は、嵐のような大雨だったので、日程を変更していただいたのでした。それでもやっぱり雨が降ってしまってましたが、梅雨入りした沖縄ですからしょうがないですね。これくらいで済んでよかった、という感じです。

早速おいしいコーヒーをごちそうになりながら、琉球犬についてお話を伺いました。

新垣さんは、獣医師で、長らく沖縄県職員として勤めておられました。「琉球犬保存会」を設立するきっかけになったのは、沖縄県動物管理センターで所長をされていたときのこと…

野犬として保護される犬の中に、昔から地元で「トゥラー」と呼ばれていた犬がまれに含まれていました。新垣さんはその犬たちのかわいそうな姿を見ていて、「このままではトゥラーがいなくなってしまう」と危機感を持たれたんだそうです。

沖縄では、古くから虎柄の在来犬のことを「トゥラー」(虎)、茶色の在来犬のことを「アカイン」(赤犬)と呼んで一緒に暮らしてきました。でも、その存在はあまりにあたりまえで、その犬たちが徐々に姿を減らしていることに、なかなか気づかなかったのでしょう。
ほかの地域の在来犬も、ほとんどがそのような流れで、結果消滅してしまいました。「いなくなってしまう」ということに気付けるかどうかが、大きな分かれ道と言えます。

そのことに気付いた新垣さんは、同様な危機感を持った有志のお友達と「保存会」を発足させました。そして、「トゥラー」「アカイン」を「琉球犬」(りゅうきゅういぬ)と名づけ、名称を統一。保存のための調査にも乗り出しました。
琉球犬・アカイン           (写真は新垣さん宅の「アカイン」。とっても陽気!)

「岐阜大学(当時)の田名部雄一先生と一緒に調査しました。田名部先生の遺伝学的調査結果によると、琉球犬はとても古い犬であることがわかったんです。日本国内ですと、最も近いのは北海道犬。縄文時代の古い犬に近いんですよ」

「北海道犬」といえば、あのソフトバンクの「お父さん犬」で皆さんよくご存じと思います。その名の通り、北海道の犬ですが、最も寒い地域の犬と、最も暑い地域の犬の種類が近い種というのは面白いですね。

「そうそう、でも、琉球犬は暑いのにも強いけど、寒さにも強いんですよ。福島県に譲渡した子犬がいますが、すぐに下毛がたくさん生えてきて、ちゃんと冬に対応できてる。雪を見てはピョンピョンはねて喜んで、元気にしてるって」

なるほど~。犬は、もともと寒い地域の動物ですから、寒さに適応できるのかもしれませんね。

少しずつ数が増えて、県外にも
保存会発足当初は17頭だったという琉球犬も、皆さんの努力でだいぶ数が増えてきたそうで、最近では、県外にも猟犬や家庭犬として譲渡されているそうです。
琉球犬は、もともと本島北部の山原地帯や、石垣島で「イノシシ狩り」の猟犬として活躍していた犬。猟犬としてもとても優秀で、特別な訓練をしなくてもすぐに狩りができるDNAを持っている(本能)そうで、県外でも猟犬として大活躍しているとのこと。

「家でも飼いやすいと思いますよ。ちょっと内弁慶な性格でね。ヌシがいないと内気だけど、ほんとは陽気で人懐こい性格。番犬としてもいいよ。なれない人が来たら吠えるけど、ヌシが来たらすぐ吠えやむ。つられ鳴きもしない」

おお、確かに!

というのも、私が車で前を通り過ぎて新垣さんに家の中に案内していただくまで、みんな吠えてたんですけど、すっかり鳴きやんでます。
普通、犬を飼ってる方はお分かりと思いますが、犬が10頭ほどもいたら、誰かしら鳴きやまず、また鳴きやまない犬につられてまた吠え出したり、…となかなか収まらないですよね。それがこのピタッと鳴きやむ感じ。新鮮です。
アカイン                 (ものすごくフレンドリー。匂いチェック中。)

「だから、都会でも飼いやすいはず。体臭もないし食事も小食でね。優しいし。…あ、でもちょっとあれなのは小動物にはさっととびかかるよ。ネズミとか猫とかカエルとかね。あとよく『穴掘り』するね」

狩りをする犬は、よく穴掘りをします。オオカミもそうですが、子どもを産んで育てるときには、穴を掘りますし、また地中にいる小動物を捕食する目的もあります。
琉球犬もやはり、狩りをする犬ですから、その本能をよく発揮するんでしょう。

(続く)