file.93 ドライブイン不動小屋の「よもぎ餅」

いちにちいちあんこ

先日、山梨と埼玉の県境あたりにある秘境「西沢溪谷」に取材に行ってきました。同行のS社副編集長Nさんも、カメラマンのMさんも、腕っこきの大先輩でらっしゃいますが、お二人とも穏やかで優しいおにいさま方なので、緊張しながらも安心して後ろからついていきますよ!
(……早くも甘え始めてます^^;)

さて、そんなドキドキワクワクなお仕事ではありますが、もちろんあんこチェックは欠かさずに。

実は西沢溪谷は初めてなんですけど、昨年もこの近辺には来ております。その時に私は葡萄味の羊羹なるものを買って、ひとくち食べてあんまりなお味に悶絶。

アズキの味も何もなくて、ファンタグレープ味のあんこ的なもの、という感じで、もう……。今思い出しても、悔し涙が出てくるような思いです。

ちなみにあんまり悔しかったので、Nさんにも、そのブドウ羊羹を買った「道の駅三富」に立ち寄った時に、「Nさん、これです!!これですよ~!」と激しく訴えました。
#そんなこと訴えられても、困りますよね、ほんとすみません、Nさん。

さて、そんな口惜しさをばねに、今回はちょっと前もってリサーチをしておきました。そうしましたら、奇しくも、取材先のひとつである西沢溪谷の入り口にある「ドライブイン不動小屋」の「よもぎ餅」が美味しいらしい!との情報を見つけ、これはぜひともいただきたい、と心のメモに控えました。

駐車場を降りて、入口へと向かうと、目ざとい私は、早速お目当ての「よもぎ餅」を発見!

「え、ええ、Nさん!あのお餅買って行って、滝の前でいただきませんか!?私買いますので!」

と、少々うわずった声でお訊ねすると、優しいNさん、「あ、武藤さんあんこ好きだったよね、いいよ、買って食べよう」とにっこり。申し訳ないことに奢っていただいちゃいました。

ひゃあ、申し訳ないなあ。買っていただいちゃったあ、と恐縮しながらも、買っていただいたよもぎ餅をみてにんまり。そりゃもう綺麗な緑色で、西沢溪谷の宝石みたいな緑をそのまま映したかのようです。こりゃ、美味しいに違いない…

20150527-2さて、西沢溪谷は、なんと言っても滝が素晴らしいのです。
遊歩道を歩いていますと、大久保の滝、魚止滝、三重の滝、龍神の滝…と素晴らしい滝がこれでもかと続きます。そのもっとも奥にある「七ツ釜五段滝」は、本当に信じられないように美しい滝なんですが、それは誌面でのお楽しみということで。

上の写真でも、もうすでに十分美しいですけど、五段の滝はこの上をいっちゃいます!

さて、片道二時間。結構な岩場もありましたし、身体も結構疲れました。

そこで、登場しますのが、そうです!
よもぎ餅さんです!
20150527-3ポケットの中で少々潰れてしまいましたが、
その翡翠のような美しい緑色は変わらず!
20150527-4売店の方のお話しですと、こちらの蓬は西沢溪谷で朝摘んできたものを使ってるんだそうです。
この鮮やかさ、なるほどという感じですね!

20150527-5あんこは、もちろん粒あんです。

甘さ控えめで、小豆のコクがたってますね。言ってみれば、「ビターなあんこ」。よもぎのさわやかな苦みと絶妙なコンピネーションです。

あんこの量もどちらかというと控えめなので、甘いものはそれほどお好きじゃないと言う人でも、美味しくいただけるんじゃないかな、と思います。

それにしても、山で食べるあんこって、またひと味美味しくなる気がしますね。この空気と適度な疲労感がいいスパイスなのかも。ちょっと一息にはもってこいですね!

さてさて、帰り道は、沢の脇を行く往路に比べると、とても楽な道程です。

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木材や石などを運ぶために作られたというトロッコ道跡を歩いていきます。写真はカメラマンMさんとトロッコ跡。

そして往復ちょうど4時間で、また入口まで戻ってきました。

そこそこ岩場もあったりして、山登り気分も味わえますし、滝はきれいだし、よもぎ餅も美味しいし、西沢溪谷すっかり気に入っちゃいました!ぜひまた来たい!

そして、Nさん、Mさん、どうもありがとうございました~!

ドライブイン不動小屋
http://tabelog.com/yamanashi/A1901/A190102/19005988/

【山梨旅】「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦先生連載)の舞台へ①武田松姫ゆかりの向嶽寺

20140510-2松姫が一時隠れていた塩山の名刹・向嶽寺へ
大善寺さんを後にして、次は「向嶽寺」さんへ。車で15分ほど。この辺りではけっこう大きな駅・塩山駅のほど近くです。

塩山はえんざんと呼びますが、これは向嶽寺の山号でもありますし、その北側にある小さな山・塩の山からきたものでもあります。数年前に市町村合併で、それまで塩山市でしたが現在は「甲州市塩山」になっています。

この向嶽寺は、「疾風に折れぬ花あり」の中で、とても大切な場所です。物語の主人公・松姫さんが、古府中(甲府)を脱出した後、一時こちらに潜んでいたんですね。

「松姫が臨済宗の向嶽寺を立ち寄り先と決めたのは、この大寺院が南北朝の時代を生きた甲州武田家の8代目・武田信成によって建立された寺だからである」(『文蔵』2014.1月号より引用)

大善寺はもちろん、この界隈には武田家ゆかりのお寺がたくさんありますが、やはりこちらも武田家縁のお寺だったんですねえ。

現役の修行場、の風格
以前、中村先生とN編集長がこちらを訪れた時の感想として「とても広い境内で、今も修行僧がいる現役の修行場、という感じがしたよ」と伺っていましたが、なるほど、想像していたよりもさらに境内が広い!

火災で何度か燃えてしまっているとのことで、古い建物と新しい建物が混在している感じです。尋ねた時間帯があまり良くなかったのか、お坊さんの姿は拝見できませんでしたが、今も修行僧(雲水)の皆さんが修業してるのかな~。

こちらのお寺は非公開のお寺さんなので、境内からそっと拝観します。境内の写真撮るの忘れてしまいましたが、いかにも禅宗らしい佇まいのすがすがしいお寺です。上の写真は、仏殿。ここまでは誰でも入れるんですね。

やはり、資料や地図などではよく拝見していたつもりでしたが、 実際こうしたおとずれてくると、なるほどと腑に落ちるような感じがします。

もし、織田軍がやってきても勝沼から笹子峠のほうに抜けられますし、またこれだけ寺域が広ければ、お坊さんも多かったでしょうし、松姫さん一行を滞在させるだけの場所も十分にあったことでしょう。
そしてこのお寺に滞在したことが、その後の松姫さんの逃亡先を確定することになったのですから、まさに運命の場所と呼んでもいいかもしれません。

そして、ここから次に行く恵林寺さんは、2・4キロしか離れていません。恵林寺さんは武田家の菩提寺。武田勝頼が死んで武田氏滅亡となった後、織田軍によって容赦ない破壊をされたお寺です。

(続く)

「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)、第8回「天の咎め(2)」掲載!

ご報告が遅くなってしまいましたが、4月半ば、中村彰彦先生の「疾風に折れぬ花あり」、第8回目掲載の『文蔵』2014年5月号が刊行されました。

5月号の文蔵の表紙イラストは、燕と菖蒲、いや、アヤメかな。この可憐さはアヤメな感じですね。
20140504燕、と言いますと、私は「ツバクラメ」という読み方が好きなんですけど、皆さんどうですか。ツバクラメ、ってなんかかわいいですよね。

さて、表紙は相変わらずほんわりかわいいですけど、我らが「疾風に折れぬ花あり」の松姫さんは、変わらずのっぴきならない状況です。

前号では、織田軍による武田の残党狩りが始まり、戦国時代の常識からしてもあまりにも過酷な方法で迫る残党狩りの手から逃れるため、松姫さんはいよいよ他国へ脱出するため出発しました。

今号では、塩山の向嶽寺に隠れていた松姫さん一行、とにかく織田家の手が届かないであろう、北条家が治める相模国、またその先の武蔵国を目指して、過酷な山道を進みます。

そのルートは、今も昔もあまり変わらないんです。
山梨から、東京(武蔵国八王子)に抜けるルート。甲州街道・最大の難所・笹子峠を越えて、大月、上野原、案下峠をこえ、陣馬街道を東進すると、八王子の恩方へと抜けます。

さすが甲斐の国・山梨、山国ですね。戦国時代、いえもっと昔から人が通る道はそうそう増えないということでしょう。

しかし、この道を、女性を中心に、4歳児3人もつれて徒歩で。しかも追っ手の目を気にして、甲州街道から一本入った山道を歩いたりしていくわけです。本当に過酷な道行きだったろうと思います。

さて、松姫さんたちは、無事安住の地へとたどり着けるのでしょうか!?

ぜひ、お手に取ってみてくださいね!