その二、阿麻氐留(あまてる)神社〔式内社比定〕
鶏知から国道を北上して間もなく、阿麻氐留神社に到着しました。車道の脇にちんまりと鎮座する可愛らしいお社ですが、なんと言っても名前がすごいです。「あまてる」ですからね。
「あまてる」と聞くと、ほとんどの人が「アマテラス」を連想するのではないでしょうか。皇祖神・天照大神(アマテラスオオミカミ)です。太陽の神さまですよね。
しかし、似てますが同じ神さまではない気がします。祖型のひとつかもしれませんが…
アマテル〔アマノヒノミタマ〕が、ホアカリだとすると…
こちらの神さまの名前は「天日神命(アマノヒノミタマノミコト)」と言います。
別名を「天照魂命(アマノテルミタマノミコト)」というそうですが、そこから手繰っていくと、どうもこの名前は、天孫族の一人、天火明命(アマノホアカリノミコト)の別名でもあるみたい。
この、ホアカリさんはややこしいこと言いますけど、天照大神の孫にあたります。そしてこの神さまが登場となると、ちょっと面白いことになっていくんです。
ホアカリさんは、古代の大族である「尾張」氏の祖であり、大阪の住吉神社の歴代宮司であった「津守」氏の祖であり、元伊勢と呼ばれる籠(この)神社の社家である海部(あまべ)氏の祖でもあります。
これまた、「海人族系の氏族」揃い踏みです!
たしかに太陽神ですけど、子孫たちを見ていくと、ど真ん中海人族ではありませんか。
急な石段をカクカク登っていくと、またしても階段の真正面ははずした形で、本殿が現れました。
こうなってくるともう、これが普通なんじゃないか、という気がしてきますね。
拝殿は、とても素朴な作りです。
正面にはなんとサッシの硝子戸が取り付けられてますよ。普通のおうちみたい。
しかし、横へ廻ると、こんな感じでちゃんと本殿があり、その前に拝殿がある、という神社らしい構成です。
もうひとつの太陽神・オヒデリ様
さて、今回はたずねることはできませんでしたが、対馬にはもう一柱、太陽の神さまがいらっしゃるんだそうです。
その名も「御日照(オヒデリ)」。
この神さまは、「社がなく、神社の形式から外れているために祭りも絶え、名前も廃れてしまった」(『日本の神々』より)とのことで、現在は厳原町阿連(あれ)地区の里にのみ、その祭祀が伝えられているんだそうです。とても厳しい禁忌があるとのことで、私のような観光客にはうかがい知ることはむずかしいですが、何かそういうことも含めて、沖縄に残る太陽崇拝の祭祀を連想してしまいます。
ちなみに、どうも前者の「アマテル」は男神で、「オヒデリ」は女神のようなんですが、そのあたりも何かとても興味深い気がします。
(続く)