決然と生きられない自分。しかし「幸せ」は、その迷いの中にこそあるのかもしれない/『迷いながら生きていく』五木寛之著(PHP研究所)

「迷い」はあっていい

ご紹介が遅くなってしまいましたが、五木寛之先生の新刊『迷いながら生きていく』が出版されました!

私ごとではありますが、悩むことがあり、自信を失って途方に暮れた思いにとらわれていました。まるで人生の迷子になったような気分。まさに迷いの最中に在ったのです。こんなふうに立ち止まる自分も嫌でしたし、モヤモヤして落着かない日々を過ごしていましたが、ある日、校正紙を拝読していて、

「私は今日も迷いながら生きています。私も皆さんと同じ。すべてが初めてのことで、わからないことだらけなのです」

という一節にくぎ付けになりました。何度も目にしてきたはずなのに、この飾らない優しい言葉が、まるで立ち上がってくるように、胸を打ちました。

……先生ほどの凄い人でも、迷ったりするし、分からないことがあるんですよ!!

見知らぬ地を旅するように「新しい世界」を生きる

何を当然のことを…とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、私は目から鱗が落ちたような気がしました。

私たちは、生きている限り、ずっとこういう心境を繰り返していくんですよね。それが人間ってものなんだと。そしてそんな迷いの最中にいる自分を、もっと認めていいんだと、思えたのです。

先生は「見知らぬ土地を旅するように生きたらいい」とおっしゃいます。「わからない」ということは、不安感を招くかもしれませんが、一方で「新しいことに出会えるワクワク感」も招きます。旅はまさにそんな経験の連続ですよね。

私は「わからない」のマイナス面ばかり見て、落ち込んでいたのでした。しかし、先生のお言葉で、はっと我に返ったのでした。

いやあ、またしても先生に救っていただきました。こんな気持ちになるのは、きっと私だけではないでしょう。今回の一冊にもそんな言葉が随所に在ります!!皆さんにも、ぜひ、お手に取っていただけたらと思います。

 

オロオロして弱々しいですが、よく考えたら、私は幸運!?

それにしても、ここ数カ月の私は、相当にオロオロしておりました。そして自分の弱さを嘆いたりしていたのですが、でもよく考えたら、私ったらけっこう幸せなんじゃないの?と、ふと思いつきました。

と言うか、むしろ、かなり運を持ってます。幸運者と言っていい気がします。

そうでもなければ、一介のフリー編集が、伝説的な作家である五木寛之先生とこんなにも長くお仕事できません!!

五木先生のご本をお手伝いさせていただいて、今回でなんと7冊目。書下ろし単行本としては、5冊目になりました。先生とお会いできるというだけでもラッキーですのに、こんなにお仕事ご一緒させていただくことになろうとは……。

そう考えると、じーんとあたたかい気持ちでいっぱいになります。

改めて、いつも優しく微笑んでくださる五木寛之先生、そして困難も楽しいことに変えてくださるN編集長に、心から御礼申し上げます。次のご本も、ぜひよろしくお願い申し上げます!

(むとう)

「あなたはあなたのままでいい」。存在を全肯定する珠玉の言葉集、ついに登場!『ただ生きていく、それだけで素晴らしい』/五木寛之著(PHP研究所)

ようやく、皆様のお手元にお届けできることができます!

お手伝いさせていただきました五木先生の新刊、『ただ生きていく、それだけで素晴らしい』、刊行されました!!
20161022

お手伝いさせていただくのは『私訳歎異抄』『自分という奇蹟』に続きまして今回で三冊目なのですが、実は、先生が本当にお忙しいので、企画が立ち上がってからこの刊行まで約3年ほどかかってしまいました。ですので、なんと言うかもう、感無量。
とはいえ、大好きな五木先生にお目にかかるという名目があり続ける、というのはこの上ない幸せで、この三年間、個人的には至福の時でした。

そうなんです。
大変私的な告白で恐縮ですが、私は五木寛之先生が大好きなのです。

子供のころからご著書を拝読して、その見識の深さに憧れ、特に仏教に関して、日本人の心性についての先生のご本には、たいへん影響を受けています。
ですので、はじめてお目にかかった時には緊張して、ただ上ずったようなお返事をするので精いっぱいでした。本当は、申し上げたい言葉が胸いっぱいに詰まっているというのに、何も言えず、編集長の影でひたすらメモをとり続けるしかない私。そんな挙動不審な私に、先生は優しく微笑みかけ、「ムトウさんは今までどんな仕事をしてきたの?」と聞いてくださいました。
私は、アワアワしながらこれまでの仕事をのことなどざっくり申し上げますと、また柔らかに微笑んで、「そう、…ちゃんとがんばってきたんだね」と言って下さったのです。

こんな風に書くと、あまりにも普通のやりとりに思われるかもしれません。
しかし、先生がこの優しい言葉を、絶妙な間でおっしゃるともう、ものすごく特別な丸みを帯びて、こころにスルッと染み入るような言葉になってしまうのです。

本当に、本当に、すごいんです、ほんとに!
正直言ってこの時、思わずこみ上げるものがありました。
ああ、頑張ってきて本当によかったなあ、なんてありがたいんだろう、そんな感動で鼻の奥がツウンとしてしまい…。先生に受け止めていただけたような、私という存在を肯定していただいたような、そんな思いで胸がいっぱいになってしまったのでした。

本書の中でも、「面授」という言葉が出てきます。元は仏教の言葉で、師が弟子に面と向かって仏の教えを伝えるといった意味なのですが、先生はその言葉から、人と会うことの貴重さを説いておられます。私は本書を通じて、まさに五木先生という偉大なる師の面授をいただいた、と僭越ながら感じました。

『蒼ざめた馬を見よ』、『風の王国』、『生きるヒント』、『大河の一滴』、『親鸞』などなど、先生が描かれてきた作品のテーマは多岐にわたりますが、実は、その中心には、ずっと変わらない大きなテーマが流れている、と思います。それは――こころ、いのち、人生、生と死、――ではないか、と思うのです。
先生がずっと対峙してこられたこれらのテーマは、すべての人にとっても大切なテーマではないでしょうか。本書は、そのテーマを改めて分かりやすくまとめてくださった、そんな一冊になっているように思います。

そして、先生が「ここのところ、特に皆さんに言いたいことだよ」、と言っていた言葉がそのままタイトルになっています。

『ただ生きていく、それだけで素晴らしい』

何かを成し遂げなくても、誰かに評価されなくても、「生きている」それだけでもう十分。いのちとはあり得ないような奇蹟的なバランスでこの世にある、そのことをもっと気付いてほしい。
先生は、このことを何度も何度も、繰り返しおっしゃられていました。

その言葉を伺っていて、担当編集のNさんも私も、そしてPHPさんの営業の皆さんも、タイトルはそれしかない、とそう思ったのです。そして先生も「僕もそう思うよ」と言って下さいました。

今必要なのは、悲しみや涙をも内包しつつ、それでも、だからこそいのちを肯定していくそんな言葉なのではないか、そんな風に強く感じています。

本書を通じて、皆さんも、私が先生の言葉に肯定していただいて泣きそうな気持ちになった、そんな言葉を見つけていただけたらいいな、と思います。

ぜひ、お手に取ってみてくださいまし!

そして最後になりますが、本書のお仕事を振ってくださったN編集長さま、そして担当してくださったN副編集長さま、本当にどうもありがとうございました!!

(むとう)