戦国期、日本の最大輸出品は「傭兵」「奴隷」だった!!?


英雄たちの戦場」ではなく「雑兵たちの戦場」から見る戦国時代の実像!
入院中というのは、体力と同様に思考能力が落ちてるので、ひたすらただその世界を楽しめるような「小説」が向いています。私はひたすら池波正太郎さんの『剣客商売』『鬼平犯科帳』を貪り読んでおりました。

名人・池波さんの小説は、まったく読者に負担を与えません。読者はただその世界に遊べばいいのです。何の心配も思考も必要なく…。

二週間の入院を終え退院したものの、正直言って体はまだもとどおり、というかんじではないので、無理は禁物。原稿を書いたり、企画書を書いたりはちょっと無理だろう、と思って、ここ数日は「本読み」に徹しようと決めました。
入院時よりはだいぶ頭もクリアです。ちょっと「お勉強」な本、テーマは「戦国期」。普段ですとなかなかじっくり読めないような本。こういう時にこそがつっといっとくといいですよね!

そんなわけで、かねてから気になってはいたものの、ちょっと手が出ていなかった名著『雑兵たちの戦場~中世の傭兵と奴隷狩り~』(藤木久志著)から。
zouhyou20130705
うお~~!なんでこの名著をもっと早く読んでおかなかったんだろう!!私のバカバカバカ!と叫びたくなるような素晴らしい一冊でした。

すごくざっくり言ってしまうと、戦国時代を、「武将」という視点からでなく、実際には絶対多数であった「雑兵」から読み解く、という本です。
#雑兵というのは、武士(士分)ではなく、その武士に奉公している若党・足軽と呼ばれる「侍」、またその下で中間・小者・あらしこと呼ばれる「下人」、夫(ぶ)・夫丸(ぶまる)と呼ばれる百姓、また得体のしれない商人・山賊・海賊のこと、と著者は定義しています。

これがまあ、目からうろこなわけですよ!

戦国時代というと、下剋上の時代というイメージで、戦に明け暮れる武将たちの時代、という印象ですが、一方で、天災が相次ぎ、凶作と飢饉が恒常状態になっていた時代でもあるんですね。というか、飢餓状態が普通という時代だったからこそ、社会システムが崩壊し下剋上が可能になった、というべきなんでしょう。

つまり、「天下取り」「領土拡大」のための戦、という側面はもちろんありますけど、特に雑兵たちにとって「生きるため」「食う」ための戦だった、と言える、というのです。

まず、著者は、当時戦場ではヒトやモノの略奪が盛んであったことを明らかにします。そしてそれは戦争の目的であり、また正当な行為として見られていたことを、豊富な事例をもとに示唆します。

なるほど、「人や物の掠奪」があったのは、なんとなく想像範囲内でしたが、公的に認められている「正当な行為」だとは知りませんでした。
特に、「人の掠奪」。つまり「奴隷狩り」です。このことも正当な行為として認められていました。こうして奴隷となった人たちはどうなったかというと、身代金を払ってくれて、元に戻れる人もいれば、そのまま奴隷として生涯を終える人も多くいました。

また、日本人奴隷は盛んに東南アジアなどに輸出されていたという衝撃的事実も描かれます。その奴隷の中でも武術に優れた男たちは、傭兵としてアジア諸国、ヨーロッパ列強の間で重宝されていたそうなんです。

えええええええ!
本当に知らなかった!!!

いや、確か昔日本史の授業で、秀吉がキリスト教を禁教しようと思ったきっかけが、教会が日本人を奴隷として海外に連れ出していることを知って、まずいと思ったから…みたいな話を聞いたことがありましたけど、それどころの話じゃないわけですよ。

第一、秀吉という人は、明らかにこの「雑兵」階層出身の人です。身の回りにも人攫い(人取り)や掠奪の被害に遭ったことはあったでしょうし、自分でもやったことがあったでしょう。

うう~ん。目からうろこだなあ。

なんていって、実は、上記のようなことは、本書の内容の発端でしかありません。

しかし、これだけ違う土台から、戦国時代を見るとがらりと見えてくる風景が変わってしまいます。新鮮です。

一度読んだだけではちょっと頭が追い付かない感じなので、また何度か読まなくちゃ。