About 武藤 郁子

神仏・聖地探訪家。編集者兼ライターとして神仏や聖地、歴史や自然をテーマに活動中。著書に『縄文神社 首都圏篇』(飛鳥新社)、『縄文神社 関東甲信篇』(双葉社)、共著に『今を生きるための密教』(天夢人)がある。2024年6月『空海と密教解剖図鑑』(エクスナレッジ)を上梓。

命の気高さ――保護された犬たちの美しいポートレート集『SHELTER dogs』/トレア・スコット著(山と溪谷社)

昨日、入魂の一冊が無事に予定通り責了できたので、今日はお仕事は休んで部屋の掃除。本棚を整理していましたら、久しぶりにこの本が目にとまりました。

20140816サラリーマン時代に担当した写真集『SHELTER dogs』です。思い出深い大好きな一冊!!

2009年発行なので、もう5年前になりますか~。
月日が経つのは本当に早いですね。

さて、この写真集は、アメリカのシェルター(保護施設)に収容された犬たちのポートレート集です。

著者のトレア・スコットさんはファッション誌出身の写真家。

動物が大好きで、たまたまシェルターを訪れて、多くのシェルタードッグたちと出会います。犬を引き取るだけではなく、ネットや記録に載せるための写真撮影もうけおうようになり、里親に出会って自由になる幸運な子たちだけではなく、次々と安楽死させられてしまう現実を前に、「イヌたちの本当の姿を映すポートレート集を撮ろうと決めた」(P90より引用)といいます。

彼女の言う「本当の姿」とは、哀れな、絶望している姿ではなく、それぞれの犬が本来持っている個性のことで、もっと言えば「魂の輝き」「存在の確かさ」のこと。

「私にとって、これ以上シンプルで本当のポートレート集はない。やることはほとんどない。なぜなら、私の被写体はすでに美しく、生きる力に溢れ、アップ写真がとれる準備ができているのだから」(P90)

実際のところ、彼女の言う通りの素晴らしい写真がずらりと並びます。
気高く美しいイヌが56匹。

もともとこの企画は、愛すべきボス・Kさんの企画で、引き継がせていただいて一緒に作った一冊なのですが、初めてこの写真集(すでにアメリカで出版されたもの)をKさんから見せていただいた時、大袈裟な表現でなく、瞬きをするのも思わず忘れて見入ってしまったことを覚えています。

写真集というのは、商売として考えると大変困難な道なのですが、しかし、これは出さなくてはいけない本だ、と思いました。Kさんもそういう思いで企画を通されたと思います。

とにかく写真が素晴らしい。

この素晴らしさをより魅力的にすべく、日本の印刷技術のお家芸、とでもいうべき素晴らしい表現力で、もっといいものにもっていこう、とKさんと相談。

取り寄せたデータは、印刷された状態から想像していた通り、かなり青い方向に寄っていたし、ものによって方向性にばらつきがあったので、スコット氏の代理者に確認してより温かい色味、美しい毛並みを表現できるように調整させていただくようにしました。

私たちがもっとも気にしたのは、スコット氏のことばにある「憐れみを誘うような」存在なのではなく、見た人が「虐待された生きものたちに美しい魂が宿っていることに気付く」写真である、という点。

寂しそうな、悲しそうな、そういう写真ではないということ、それを表現したいと考えたのですね。

そこで、Kさんだけでなく、大先輩で師匠と仰ぐEさんにみていただきながら、作り上げていきました。

今改めてみてみると、自分で言うのもなんですけど、この写真集、やっぱいい!!

写真やテーマ性がいいのはもういうまでもありませんが、写真集表現としての状態もかなりいい!!
白表現、毛の質感、温かく気高い感じがよく出てます。また黒部分もいい。奥行きのあるいい黒。いうなれば温かい黒です。

KさんとEさんという、偉大な先輩がいっしょにやってくださったからこそ出来たことではありますが、この本にかかわった自分を褒めてあげたくなりましたよ。

最後に、印刷立ち合いをした時のこと。一緒に来てくださったEさんが、ニコッと微笑んで、

「むとうは本当にいい経験をした。こういう写真集をつくれるというのは幸運なことだよ。いつかこの写真集を作ったことを誇りに思うと思うよ」

そう言っておられたのを思い出します。

本当に、おっしゃる通りです。

何度見ても、感動できる写真集にかかわれた私は幸運者だなあ。そしてお仕事振ってくださった元ボスKさん、師匠Eさんに改めて心からの感謝申し上げたいと思います。

本書は、日本の現状もお伝えしたいと思い、短くではありますが、日本の保護施設がどうなっているか、保護された犬や猫はどういうシステムにのせられてしまうのか、そういうことも取材して補足しています。

ぜひ、お手に取ってみてください!

(むとう)

”山への一歩を踏み出す小冊子”『山歩みち』、三冊一気に届く!!

先日、古巣が一緒(でも部署は違う)の仲良しで、退職後も仲良くしてもらっているK氏と、お昼を食べました。

K氏は本当にアツくて実行力のある人で、すごい人なのですが、わたしから見るとお茶目な「野生動物」のような人なのです。

待ち合わせ場所に現れたK氏、ランニングに短パン、リュックサックに坊主頭で肌はこんがり焼けています。

「遊びすぎてる小学生男子か!」

と思わず突っ込んでしまいましたけども(笑)。久しぶりに会うので、なんとなく照れくさそうに頭を掻くK氏。

まったく憎めない、微笑ましい人物です。

さて、そんな彼がしているお仕事の一つで、彼の志の根幹ともいえるのが『山歩みち』というフリーペーパーです。山のフリーペーパーとして、こんなにおしゃれで一流の書き手や登山家、写真家が登壇する雑誌というのはまずない、というか、K氏でなければ不可能に近いでしょう。

『山歩みち』
http://www.sanpoweb.net/

質のいいものは読者に伝わるもので、年々発行部数を伸ばしまくり、書いていいのかわかりませんので書きませんけど、こういった雑誌としてはちょっとぎょっとするような部数を発行しています。

近況から、今後の計画、ビジョンを改めて教えてもらいましたけど、ぎょええ、すごいじゃん、でもKさんはやっちゃうんでしょ、それ!?と叫ぶ私。

志高いなあ。

細かくここでは書けませんけど、彼なりの理想があり、それを少しでも実現させるための計画はすごく緻密に、理系的に考えられているのです。

ううむ。

これぞ、私が考える「野生動物」ってやつです。理想を実現させるためには何が必要か冷徹に判断してる。動物が生き抜くために必要なことを直感的に選択しているのと一緒です。すごいなあ。

……さてさて、ちょっと前置き長くなっちゃいましたが、そんなK氏が編集人を務める雑誌『山歩みち』が手元に届きました!

20140811

今回は、なんと三冊も一緒に!

本誌の特集は「北アルプス」。夏と言えばなんとなくこの北アルプス、とさして詳しくない私が思ってしまうので、Kさんがこの季節いつも北アルプスにかかわる仕事をしていたからかもしれません。

初心者に優しい誌面づくり変わらず。行く人には役に立つのはもちろん、行かない人でも行った気になっていい気分になること間違いなし。

連載がいつも楽しみなんですよね。

巻頭カラー「風と頂き」は石川直樹さん。そして密かに北川さんの「山麓ラーメン」は毎回熟読しています。今回が相模湖周辺でしたが、山に登らなくてもラーメン屋さんだけでもまわりたくなってしまいます。

そして、ほかの二冊は「別冊」。「伊豆七島の山」と「谷川岳」ですよ。

それにしてもすごいな~。これ全部編集人Kさんですもの。ほんとすごい。

こちらは、全国のアウトドアショップで手に入れることができます!
http://www.sanpoweb.net/category/shoplist

ぜひ、お手に取ってみてくださいね~!

(むとう)

文系女子にも大プッシュ!生きもの図鑑の新形態『ときめくカエル図鑑』と『ときめく小鳥図鑑』/山と溪谷社刊

わたしが以前在籍していた山と溪谷社は、山の出版社として有名ですが、イキモノ系の人には、図鑑の会社としても認知されているかと思います。

本格的なものから、ハンディなものまでさまざまな図鑑を出していましたが、最近、読み物書籍サイズの図鑑シリーズを刊行しています。

「ときめく図鑑」シリーズ、というらしいのですが、女性が好きかな?って感じのシリーズですね。

さて、その中でこの

20140806

「小鳥」と「カエル」!

カエルのほうは大好きな写真家・松橋利光さんの、ということで以前自分で購入しましたが、小鳥のほうは先週、編集を担当されたYさんから直々に頂戴しました!ありがとうございます~!

偶然に、というか、やっぱりというか両方ともYさんの編集。Yさんはフリー編集者の大先輩で、在籍中にも本当にお世話になったお方。いつも面白くて、お洒落なしっかりとした本をつくってらっしゃいます。

カエルのほうは、松橋さんならではの綺麗でかわいい写真がこれでもかと登場。この本に掲載されているカエルの名前を覚えれば、かなりカエル通になれるんじゃないかと思います。

ほんと綺麗だな~。

小鳥のほうもまた凝ってますよ!
鳥じゃなくて「小鳥」ってのがそもそも乙女な感じですよね。

吉野俊幸さんの写真がまた美しい。小鳥ってこのまるっとしたフォルムたまらんですよね。

それから小鳥の写真のそばに吹き出しで、その鳥の啼き方が入ってるのもいいなあ。

どちらの本も、ちょっと普通の図鑑と違う「文系アプローチ」なページがあります。両方のご本ともに著者の方が若い女性というの無関係ではありませんね。雑貨なカエル、とかカエルが出てくる物語、小鳥が出てくる文学作品の紹介、などなど。こういう部分が、他の図鑑にはないところですよね。

自分用はもちろんですが、プレゼントにもよさそう。オトナ女子で、カエルグッズ集めてるとか、小鳥デザイン好きな人とかっていますよね。そんな人にドンピシャですよ!

そんなわけで、やっぱし、文系女子にもお勧め、かな!
これまで、あまり生きものに興味がなかったような人も、抵抗なく手に取れる本と思います。

お子さんと一緒にみる、なんてのもいいな。すごくシンプルで見やすいデザインだし。

ぜひお手に取ってみてくださいね~!

(むとう)