About 武藤 郁子

神仏・聖地探訪家。編集者兼ライターとして神仏や聖地、歴史や自然をテーマに活動中。著書に『縄文神社 首都圏篇』(飛鳥新社)、『縄文神社 関東甲信篇』(双葉社)、共著に『今を生きるための密教』(天夢人)がある。2024年6月『空海と密教解剖図鑑』(エクスナレッジ)を上梓。

これからを生きるために、自分の足元をちゃんと知りたい。日本文化の源流と叡智へ迫るシリーズ第一弾登場!『今を生きるための密教』/本田不二雄・武藤郁子著

日本文化の根源に迫る新シリーズ、ついにスタート!

密教をテーマに書いてるんですよ~、と言い続けて、早幾月。なかなか本にならなくて、白目をむく日々でしたが、明けない夜はないんですねえ。ついに、12月17日に発売になります!(少々フライングです。すみません!)

私たちの足元にあるものーー私たちの思考や精神の土台になっている大切なもの。

日本文化の基層にあるものを、本田さんと武藤なりに、一歩なりとも迫っていこうとするシリーズが、ついにスタート。第一弾は「密教」です。

これまでにも、仏教をテーマにした本などは何冊か「編集」として経験してはいるものの、今回は執筆者としてですから、ニュアンスが違います。

今回、このような機会をいただいたのは、神仏探偵としても名高い本田不二雄さんの大胆なご推薦によるものでした。そして、幸運なことに版元の天夢人(テムジン)さんの社長・勝峰さんは、私が勤めていた出版社の先輩。不安もおありだったと思いますが、快く承諾してくださいました。いずれにせよ、シロウトの門外漢である私が、「密教」について書いていいのか…。そんな葛藤を抱えながらでしたが、兄と慕う本田不二雄さんのおおらかさと導きによって、どうにかこうにか…。

結局自分なりに考えて、「シロウトで門外漢である」、そこを立脚点にしようと決めました。知らないことは知らない、知ったかぶりは絶対しない(出来ないけど)、と。本書は、本田さんという先達と、武藤という門前の小僧が辿る、「密教を知るための軌跡の記録」と言えるかもしれません。

そのため、ちょっと変わった構成になっています。

章立ても、「章」ではなく、「門」としました。ひとつひとつ、門をくぐって奥へ進んでいくようなイメージです。ですから、序(プロローグ)は「門前」という名前にしました。「密教」という大いなる叡智を前にして、「門前」に佇む私たち自身を、ちょっとでも表現したかったのです。

(本田さんが書き下ろしてくださった「まえがき」をぜひご覧ください!本書はそんな心持でお読みいただけたら幸いなのです)

「門前の小僧」を自称。素朴な質問を連発

そんな門外漢の私にとって、宮坂宥洪先生(真言宗智山派・智山伝法院院長、照光寺住職)との出会いは、最高の幸運でした。私の「わからない」に優しく応えてくださり、そのあたたかい言葉の数々があまりにも「目から鱗」だったので、本田さんにご相談して、本書の冒頭の「門前」の根源にさせていただきました。じつは、この「雲」の言葉の源は、宮坂先生のお言葉です(ちなみに、熊は本田さん、メガネ狸はワタクシ、武藤がモデル)。

(この可愛らしいイラストを書き下ろしてくださったのは、唐木みゆさんです!)

「密教とは何なんでしょう。できるだけ簡単に教えてください」

冒頭にそんな台詞を言っちゃってますけど、本来こんなこと聞けません。「密教を簡単に説明なんてできない」、多くのお坊さまはそうおっしゃるんじゃないかと思います。それはそれで、「おっしゃる通りです」とこうべを垂れるほかないのですが、しかし、本当の始まりとして、この質問をどうしてもいれたかったのです。

そして幸いなことに、宮坂先生は、こんな質問にも優しく、しかしはっきりとわかりやすい言葉をくださいました。さらに、本田さん執筆の第二門「密教を知る」では、「特別講話」として、密教について深く、わかりやすく語ってくださっています。

さらにさらに、私が書いた「第四門 仏尊の世界」を監修してくださいました。先生が見てくださったので、解説文はもちろんですが、密教ならではの仏尊の種子も真言も、間違いのない内容になっているのではないかと思います。

そしてもう一人、大変お世話になったのが羽田守快先生(天台寺門宗・金翅鳥院住職)です。本田さん執筆の第三門「密教の現場を知る」では、密教の祈祷が今どのように行われているかを、歯に衣着せぬ口調で、縦横無尽に語ってくださいました。
私も、「遊行」という章で、戦国時代の呪法について書いているのですが、羽田先生に呪法についてご教授いただきました。歴史研究者が間違えていることをたくさん教えていただいたので、今(だけは)瞬間風速的に、戦国時代の呪法についてはちょっと詳しい人になっています。それにしても、文献は大切ですけど、根本的な知識があって読まないと、読み間違えてしまいますね。

とにかく感動してしまったのは、空海という人の凄さ

今回、自分なりに勉強し、先生方にご教示いただいて、驚き・感動したことは本当にたくさんあります。しかし、あえて何か一つ、と思うと、やっぱり「空海さんって、本当にすごいな!」ということです(素朴で恐縮です)。

こんなにすごい存在が、約1200年前に実際に生きていた人なのかと思うと、何だかもう、不思議な思いすら湧いてきます。どんなにすごい存在であるかは、本田さん執筆の第一門「空海を知る」をご覧いただきたいのですが、こんなに魅力的な人物が日本にいたのか、とつくづく感動してしまいました。

私が「密教」に感じる魅力というのは、ほとんど「空海」さんとイコールと言っていいかもしれません。表現力、言語力、構成力、デザイン力、そして包容力、他者への慈悲の深さなど、そのすべてが空前絶後だと思います。

本書が、そんな空海の、ひいては密教の魅力を知るための、ささやかな一助になれたらいいなあと、心から思います。

そして、私自身も、本書を書かせていただいたことで、小さな一歩を踏み出したような気持ちでいます(その軌跡はぜひ「遊行」という章をご覧ください)。密教を知った、わかったとは、思っていません。

ただ、あえて言うならば、「密教」という、「美しくて大きくて、果てしなく広がる深い森がある」ということを知った。そしてその深い森の入り口でちょっとビビりながらも、ワクワクしている、そんな心境なのです。

これからも、「密教」という大いなる叡智を、勉強していきたいと思います。今回の本は、私にとって始まりです。本書を手に取ってくださった皆さんも、そんなふうに感じていただけたら最高に嬉しいです。

ぜひ、ぜひ、お手に取ってみてくださいね~!!
よろしくお願いいたします!

最後になりますが、共著者の本田不二雄さん。一緒に歩んでくださって、本当にありがとうございました!そして、様々な形で導いてくださった宮坂宥洪先生、羽田守快先生、取材にご協力いただきました皆様、素敵なイラストを書いてくださった唐木みゆさん、デザイナーの高橋潤さん、そして編集を担当してくださった天夢人の武田さん、そして勝峰さんに、改めて御礼申し上げます。

(武藤郁子)

雑誌『BE-PAL』公式サイト「BE-PAL.NET」で、新連載「文化系アウトドアのススメ」をスタートしました!

私は、本サイト「ありをりある」で、密かに「文化系アウトドア」を標榜してきました。
それは、アウトドア系出版社に在籍していたということもありますが、実際に自分がやっていることに名前をつけたくなってひねり出した一つの概念だったんです。

しかし、特に大プッシュするでもなく、細々と書き連ねて早8年…。

……が、ようやく、皆さんに知ってもらえるチャンス到来!

雑誌『サライ』で大変お世話になっていた編集者Nさんが、アウトドア雑誌『BE-PAL』へ移籍され、このたびWEBの責任者になられて、「文化系アウトドアで書いてみない?」と、私にも声をかけてくださったのです。

Nさんは、ものすごい博識で、「文化」を絵にかいたようなお人なのですが、そんなNさんとお仕事するとしたら、やっぱそのテーマはこれしかないと、私も二つ返事でOK!

自分がやっていることを、そのまま発表してもいい場所を与えていただけて、本当に嬉しいです。張り切って楽しんで書いていきたいと思います。

ぜひ、お暇な時に覗いてみてくださいね~!

第一回「大和葛城山の山麓をゆく」

葛城山・吉野・金剛山~大和から河内へ。役行者を巡る旅~

11月初めに、葛城山、吉野、金剛山を旅してきました。

来年、修験道に関する本を書くことになったので、そのプレ取材です。
何ごともその場所に行かないと始まらない、という私のクセでありまして、今回も修験道と言えば、まずは役小角さんだろうということで、歴史上の役小角さんがいたであろう地を、歩いてきたんですね。

吉野の方は、度々訪ねてますが、葛城山と金剛山は初めてです。以前から、葛城山と金剛山は歩いてみたいと思っていたんですが、関東在住の身からしたら、なかなかに遠くて……。何かのついで、というわけにはいかない場所ですからね。
しかし、今回はお仕事でも必要だし!と、思い切って歩くことができました。

今回は、小角生誕の地、吉祥草寺を皮切りに、葛城山山頂→葛城山山麓(御所市)→吉野→金剛山山頂→金剛山山麓(河内長野市)というルート。

今回も、自分で日程設定しといてこう言うのなんですけど、かなり過酷でした。
頑張りました。
精いっぱい歩きました。
でも、時間が圧倒的に足りなかった!

それなりに、と思って、四泊五日取ったんですけど、甘かった……

しかし、とはいえ。

やはり実際に歩いてみないと分からないことがたくさんありました。
行ってよかったです。
(写真:葛城山山頂からのぞむ金剛山。綺麗でした!)

なぜ、「役小角」という超人があの場所に生まれ、修行し、活躍したのか。
日本文化の基盤である「山岳宗教」の大きな流れの突端が、なぜ、あの地なのか。

そんなことを考え始めるには、もってこいの取材ができたと思います。

今のところ、俄然私の中で盛り上がっているのは、「河内国」の存在感です。
大阪って、こういう側面からももっともっと全国に知られるべきすごい場所ですよ!!ほんとに!
メディアでこの手のことをご紹介するときに、土地勘もない関東の我々は、どうしても大和国からアプローチします。それも大切なことなんですが、しかしそれだけだと、かなりな片手落ちなんだなと、痛感しました。

このあたりのことは、来年の本にがっちり書きたいと思いますが、来月からもうちょっとライト目に、WEB版BE-PALさんでも、書かせていただくことになりそうです。

どうやって書こうかなあ、とちょっと迷い中です…^^;。

(むとう)