About 武藤 郁子

神仏・聖地探訪家。編集者兼ライターとして神仏や聖地、歴史や自然をテーマに活動中。著書に『縄文神社 首都圏篇』(飛鳥新社)、『縄文神社 関東甲信篇』(双葉社)、共著に『今を生きるための密教』(天夢人)がある。2024年6月『空海と密教解剖図鑑』(エクスナレッジ)を上梓。

モチーフから世界観と歴史を読み解く……『奈良美術の系譜』/小杉一雄著

東洋美術史の巨人・會津八一博士の直系
学問の世界は、領域意識が皆さん強いので(それだけ譲れない信念を持っている、とも言えます)、なかなか横に広がって検証する、みたいな動きは難しいようです。…そうしますと、ある領域では、当たり前のことでも、すぐ隣の領域では誰も知らない、みたいなことが起こってしまう、と…。

歴史学の研究者と、考古学の研究者、一般人から見て「え?何が違うの?昔のこと研究してるんだから同じじゃないの?」なんて思うかもしれませんが、当事者からすると、それはあまりにも乱暴なお話なわけで。例えば同じ時代の研究をしていても、まったく研究する方向性・方法論がちがうので、それによって導き出される結論もかなり違ってくるわけです。

以前、尊敬する歴史学者の先生がご著書で、「日本の歴史を、日本だけで語ろうとしてはいけない。もっと大きな視座を持たねばならぬ」という意味合いのことをおっしゃられていたのですが、いや、ほんとその通り!と膝を打ったのですけど、この本を読むと、本当に改めてそのことを改めて思い知らされました。
なんかもう読んでてワクワクしちゃってね、読み終わってから踊りだしたくなるような気持ちにさせられちゃいましたよ!
20140119

小杉先生は、偉大なる東洋美術史家で歌人の會津八一博士のお弟子だった方です。本書をものされた時(1993年)、すでにに85歳。

「師匠は私に奈良の美術の本当の姿を知るためにはうちがわからばかり眺めずに、美術の故郷である中国古代に身を置いて、中国がわから眺めなければならないということを教えてくださいました。それ以来六十有余年、私は中国の岸辺に立って、小手をかざして奈良の美術の本質を眺め暮らしてきたのです。」(「はじめに」より引用)

師匠への溢れるばかりの敬愛は、本書のなかでも随所に感じられるのがまた素敵なのですが、その視野の広さ、柔らかさは、私のような一般読者にとっては目からうろこの嵐です。何よりその人柄がにじんでいる文章がいいんですよね。たまにキカンキの強い少年のような表現があるんですけど、それすら微笑ましい。

藤の木古墳の年代比定についても一言在り
すべての章が面白かったんですが、特に抜いてご紹介するとすれば、本書には日本の古代美術から頻繁に登場するモチーフである「鬼神」「天女」「仙人」について、目からうろこのお話があります。

例えば、「鬼神」について。

藤ノ木古墳から出土した鞍金具には、二つの武器を持った鬼神が浮き彫りされていました。この鬼神を見て、小杉先生は一瞬で「これは『蚩尤(しゆう)』だ」と思ったというのです。

『蚩尤』というのは、古代中国の美術を見てますと、めちゃくちゃよく出てくるモチーフです。古代中国の神話の中で、大人気の神さまで、5つの武器を発明したことから最強の戦神として崇敬されました。

ちなみに、この蚩尤さんはとても長い間中国の人々が信仰し、表現していたので、時代によって徐々にその形状が変わっていきました。

例えば、指の数。当初は三本指が多かったのですが、6世紀末から7世紀末徐々に5本指になったと小杉先生は言われます。また、武器も、最初は5種類持っていたのが簡略されて二種類になっていくのですが、それもわせて考えますと。

この藤の木古墳の鞍金具に彫られている鬼神(蚩尤)の指は、五本指でかつ二つの武器を持っているので、そのモチーフが変化していく過程を考えたときに、7世紀後半が妥当だと思う、と言われるのです。

おおおお!?ほんとに??

ちなみに、その指摘は藤の木古墳が発掘された当初から、小杉先生は指摘されておられたとのことですが、当時は6世紀前半、現在では6世紀後半と比定されてるようです。そうしますと100年余りの差がありますね。

「私はあえてこのことで藤の木古墳そのものの年代をうんぬんしようとは思わない。古墳ができてから後に馬具だけが何かの理由で入れられることも十分にありうることではある。
(中略)6世紀前半か中ごろとされる藤の木古墳から、7世紀中期以後の5本指の蚩尤が出土したというのは、江戸時代の墓とばかり思っていたのが、中からコカ・コーラの瓶が出てきたというわけなのである。」(P160より引用)

アハハ、すごい言い方ですね^^;。

だけど、それくらい、モチーフからみたらおかしな話なわけですよね。

「これは蚩尤と言ってもいい、しかし5本指だからといってそれを気にしすぎる必要ないんじゃない?たまたまこれが5本指に描かれただけかもしれないじゃないの?だから、6世紀のお墓である、という説をまげるつもりはありません~」(むとう解釈で要約)

当事者から、そんな風に言われちゃった小杉先生の精一杯な皮肉です。

でもね、やっぱり変な話ですよ。モチーフ、っていうかデザインってその時代を反映しているし、特にこんな大事なところに、王族のお墓に入れるようなものなんですから、かなりしっかりと選びますでしょう。その人物が愛用していたもの、またはその時代ならではで高品質なもの、宗教的思想的に意味のあるものを副葬品にするはずですよね。

なかなかいいたとえが浮かびませんけど…

例えば、火の鳥というモチーフはものすごく昔からあるモチーフですけど、手塚治虫さんが書いた「火の鳥」ってありますね。それまでの火の鳥とは違いますよ。よりデフォルメされ擬人化した表情の火の鳥です。
この「手塚さん型火の鳥」が、とあるお墓から発見されたとしますよ?そうしましたら、少なくとも手塚さんが火の鳥が描かれたのは1954年からなので、このお墓は1954年以降のものだろう、とそう推理するでしょう。

「あとから入れたんじゃない?」ということはできますけど、100年ほど前の人のお墓に、あえていれますかね??なんかおかしくないですか???

…小杉先生はそんなことをおっしゃりたいのかな、と思いました。私も同感です。

日本美術、仏像、古代史に興味のある方には、特にお勧め!
少々長くなってしまいましたが、ほかにも目からうろこなお話が、とても分かりやすくかかれています。
ぜひ、そのあたりにご興味のある方で未読の方は是非読んでみてください!すごいおもしろいですよ!
それまでなんだこれ?と思っていたものが、そういう意味だったのか!となります。すごい楽しいです。

少々余談ですが、実は小杉先生は、画家として高名な小杉放菴の息子さんなので、絵もデザインも上手。このカバーデザインの原案もご自分でされてるそうです。説明する為のイラストも先生の自筆です。

file.56 つるし柿本舗愼栄の「深里のつるし柿」

 

いちにちいちあんこ

お砂糖が高価だったその昔、「甘さ」は工夫して作るものだったんですよね。

例えば、甘酒。お米に糀を入れて発酵させると、ものすごく甘くなります。
例えば、焼き芋。お芋をじっくり炭のなかで焼き上げると、さらに甘さが増します。
そして、干し柿。
渋い柿を寒い乾いた空気の中で干すと、ものすごく甘くなりますね。これ、発明した人、ほんとにすごい!

さて、そんなわけで、本日のいちにちいちあんこは、その干し柿をぜいたくに使ったあんこものです。
深里のつるし柿

以前から秩父在住の母の友人が、ことあるごとにもってきてくださるので、我が家では定番の「深里のつるし柿」です。

かなり大胆なお菓子でして…

深里のつるし柿

パッケージを開けますと、干し柿が一個コロン、と入っています。
ちゃんと柿のへたもついてますよ。
これのどこが一体「あんこもの」かと申しますと…

深里のつるし柿

柿の中に、あんこが入ってるんですね~~!!

つまり、皮が干し柿、ってわけですよ!!
なんかすごいでしょ??!

さらにすごいのは、これだけあんこが入ってるのに、食べ終わるその最後の瞬間まで、ほぼ干し柿の味で押し切られるということです!(笑)

あんこが甘くないからかな?と思って別に食べてみたら、あんこもちゃんと甘い、丁寧に作られた美味しいあんこなんですけど、干し柿と一緒に食べると、一気にその気配が遠くなってしまう、という…

干し柿、オソルベシ。

とはいえ、どちらにしていてもこれは、お持たせに最適です。

干し柿のヘルシーな甘さが、何かこう郷愁を誘ってくれるので、チョと目上のお世話になった方に手土産でもっていきたいってかんじ。一緒に食べたらきっと話も弾むだろう、と思うのです。

つるし柿本舗 愼栄
http://saitama.sweetsplaza.com/shop/%e3%81%a4%e3%82%8b%e3%81%97%e6%9f%bf%e6%9c%ac%e8%88%97%e3%80%80%e6%85%8e%e6%a0%84

 

 

file.55 昇月堂の「桜まんじゅう」とおまけのひと品

いちにちいちあんこ

三連休、いかがお過ごしでしょうか。

私は、昨日だけお休みして、友人と、埼玉県神川町にあります金鑚(カナサナ)神社と、金鑚大師こと大光普照寺に初詣しまして、その後、これまた神川町の名湯「白寿の湯」に行って、心も体もリフレッシュしてきました!

この流れは、とても気に入ってましてここ数年パターン化しています。白寿の湯のお湯はまるで美容液のようですし、カナサナ大師さん、カナサナ神社さん、ともにものすごく気持ちのいい場所で、ついつい訪れたくなっていまいます。

さらに、この白寿の湯では、売店を覗くのもまた楽しい。

近隣の和菓子屋さんのおまんじゅうなんかを気軽に買うことができます。
桜まんじゅう

さて、その中から今回私が選んだのは、こちらの「桜まんじゅう」!!
かわいいですよね?!!

白とピンクの皮で、さらに美しい桜の塩漬けが載ってます。
春って感じですよね。

こちらの製造元、昇月堂さんは、ネットで調べてみますとあまり情報は多くないのですが、どうも近隣のカンザクラで有名な桜山公園の近くにある和菓子屋さんのようです。
桜まんじゅう

白い皮のほうがこしあん、ピンク色のほうが粒あんでした。(粒あんのほうは写真撮るの忘れちゃいました。すみません^^;)

あんこは、つぶもこしも、とても丁寧で、優しいちゃんとした味です。しみじみと美味しい!

3個のパックが350円。このクオリティで一個120円くらいで買えるのは、ほんと良心的ですよ!!

白寿の湯
http://www.yugo.co.jp/spa/hakujyu/

昇月堂
群馬県藤岡市鬼石518-10
0274-52-2151

………………

さて、今回はちょっとおまけ。番外編として、もう一つご紹介します。

この白寿の湯の近くに、明治時代から続いているというヤマキ醸造という醤油屋さんがありまして、ちょっと軽く食べることもできると知り、お昼でもいただこうか、と足をのばしました。
ヤマキ醸造御用蔵行ってみましたら、こんな感じで、なんだかとても立派です。見かけも立派ですが、志も立派。安全でおいしい食品を作ろうと努力されてるみたいですよ。

「ヤマキ醸造『消費者御用蔵』で使用する原料は、農薬・化学肥料・除草剤など使用せず、土作りからこだわった自然農法(有機栽培)を親子2代に渡り約60年間の経験を持つ須賀さんが代表をする『豆太郎』グループで丹精込めた大豆・小麦・米など環境保全型農業の国産有機栽培・国産特別栽培の原料のみです。自然風味を大切に活かし、化学合成添加物など使用せず、『安心』・『安全』・『健康』にこだわった食品造りをしています」(HPより引用)

なるほどなあ。店内では、直売もしてまして、みそ・しょうゆ以外にお豆腐、クッキーやケーキなど様々なものを販売されてまして、そのほとんどが試食できるんですが、みんなとても美味しかった!!健康な味、と言いましょうか。

さて、私たちは、この直売所に併設されている「糀庵」でお昼をいただきました。キーマカレーと、豆乳うどんをいただいたんですが、食後のデザートに…と、「卯の花まんじゅう」も注文しました。
卯の花まんじゅう

こちらが卯の花まんじゅうです!
ホカホカと湯気が立っていて、なんともおいしそうでしょ??!
卯の花まんじゅうなんといっても、何を食べても丁寧で美味しい味でしたから、このおまんじゅうの中のあんもきっとおいしいに違いありませんよ。

と、ムフムフいいながら割ってみましてら…
卯の花まんじゅうええ!?卯の花じゃん!!

あんこじゃないじゃん!!

思わず叫ぶワタクシ。

そこで、はたと理解しました。私勘違いしてました。そもそもこのおまんじゅう、名前に「卯の花」ってついてるんだから気づけよ…、と。

個人的にはちょっと当てが外れてしまいましたが、ものすごーく大きい意味でいえば、これは「餡」です。豆を使ったあんこではありませんが、おまんじゅうの餡なんだから、広義にはあんこの一種と言えなくもない…と無理やりこじつけながら、パクリ。

あら。
美味しい。

中の卯の花は、非常にスタンダードな味付けのおからなんですけど、やはりおから自体が美味しいからでしょうか、とても深い味がします。そして何より、この皮がいい。少し甘めの皮です。通常のおまんじゅうよりも甘味が強いんですけど、その甘味と、この卯の花がよく合います。

これはいいわ。

例えば、お子さんへのおやつにも最適。体にいいし、腹持ちもいい。何より安心して食べさせられますね。それから、甘いものが苦手な方へのお土産にもおすすめ!と思います。

ヤマキ醸造御用蔵・糀庵
http://www.yamaki-co.com/user_data/chokubai.php