「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)第14回「陣馬街道 その二」掲載!

武田信玄の末娘・松姫さんこと、現在出家して信松尼(しんしょうに)さんが主役を務める「疾風に折れぬ花あり」。

前号で、信松尼さんを経済的に援助してくれていた北条氏照(うじてる)が城主を務める八王子城が、落城。殲滅、つまり皆殺しにされてしまいました。

そして、今号ではいよいよ、本拠地小田原城は、あまりに巨大な秀吉軍によって包囲されて、当主・氏直は降伏、北条家は滅亡してしまいます。
20140912-1

武田家のお姫様であった信松尼さんにとって、北条家は縁戚であり、また、八王子に移ってからは、経済援助をしてくれた大切な人たちでした。

それが、あっけなく滅亡してしまった……。心情的悲しさだけでなく、現実的な危機でもあります。今や援助の道は絶たれてしまいました。幼い姪たち3人だけでなく、彼女たちを慕って仕えている家臣たちを養わなくてはならないのです。

いよいよ「自立」の道を確立しなければならなくなったわけです。そこで、信松尼さんが思いついたのは「機織り」でした。つまり養蚕、絹を生産すること、です。

古代から、信松尼さんが住む八王子がある武蔵国(今の東京都・埼玉県一帯)や上野国(群馬県)は、絹の名産地でした。そのため、彼女がそういう風に思いついたのはとても自然なことでした。

今でも上州(群馬県)名物として、「かかあ天下とからっ風」なんて言います。

これは、上州の女性は働き者で強いということなんですけど、女性が養蚕をしていたので、女性のほうが収入が大きくあったことで、経済的自立をしていたので、強いというわけなんですね。

そして、この「養蚕」ですが、これまた古来より女性の仕事と考えられていました。

蚕を育て、糸をとり、機を織る、という仕事は、手先の細やかな女性のほうが向いていたのかもしれませんね。この大変な作業の果てに生み出される「絹」は大変高価なもので、これを生み出すことができるというのは、相当な経済力を持っているということ。家庭内でも大きな権力になったろうと思います。

そんなわけで、目の付け所はすごくよさそうなんですが、果たしてうまくいくのか否か…。

歴史小説、というとらえ方でなく、現代に引き寄せてみると、信松尼さんはまさにベンチャー起業家ともいえるかもしれませんね。

詳しくはぜひ本誌をご覧くださいませ!

(むとう)

圧倒的才能。少女漫画の王道力を知る!「私のマーガレット展」@森アーツセンターギャラリー

私の中の『少女の夢プール』がけっこう健在だと自覚した日

思えば私にも10代がありまして…
少女漫画、大好きでした。自分でも下手な漫画描いたりしてね。コマ切るのが驚愕するほど下手だったんで、挫折しましたけど…。

初めて買ってもらった漫画は小1の時、『王家の紋章』でした。

古代エジプトにタイムスリップしてしまう金髪のアメリカ人少女が主人公の名作ですが、もし今これやるとしたら、主人公日本人か日系人だろうなあ。今大人になってみますと設定にも時代の趨勢が感じられます。

『王家の紋章』が好き、と言えば『プリンセス』by秋田書店さんですよ。そうです、私は秋田書店さんと『花とゆめ』by白泉社さん派なわけですよ。

……とおもっておりました。

でも、よくよく考えてみますと、『リボン』も『マーガレット』『別冊マーガレット』も、『なかよし』『フレンド』も一通り読んでました。自分のお小遣いだけでは到底無理ですから、友達と貸し借りしたりして。

あれ?

今ふと思い出しましたけど、私『別マ』は毎月買ってたなあ!ほとんどお客さんの来ないタバコ屋さんで、一日フライングして『別マ』をうってたので、毎回そこにわざわざ買いに行ってました。ってことは、かなり好きってことじゃないでしょうか?!!

そんなこんなで、前置きいつも長くてすみません。

「私のマーガレット」展、行ってまいりました!!

恐れ多くもお誘いしましたのは、かつて編集を担当させていただいておりました漫画家・エッセイスト・占い師のMさんです。ほんとめちゃくちゃ贅沢です!

あこがれのMさんとご一緒して、マーガレット展。ほんと幸せ…

「むとうちゃん、展示の最初にある映像がまたすごい良いらしいよ」

Mさんからそんな前振りが。おおおお、それはちょっと、キンチョーしますね!
会場につくと、気持ちがいいほど、女性ばかりです。だいたい私たちと同じくらいの女性が多いかな。40代50代が目立ちます。

そして、入場。

この展示のために作成された4分間の映像は、入場者は一度しか見られないそうです、そりゃますますキンチョーする。瞬きしないで見ないとね。

映像は、『マーガレット』(集英社刊行)に生まれた名作たちの歴史の流れを感じさせる内容ですが、次から次へと畳みかけられるように、あの名コマが押し寄せてくる、といった感じで…

……。

………。

…………。

…う、う、うわああ~~!!
ま・まじ、もう、限界、む、むりす、みませんん~~~~~!

3分はぐっとこらえてましたが、最後はなんとキスシーンの嵐になり、わたしもう、黙ってられなくなりまして、Mさんの腕をガッとつかみ、思わず助けを求めました。

「むとう、こらえろ」

冷静なMさんの言葉に、ぐっと暴れたくなるような衝動をこらえて、どうにか4分終了……。

「Mさん、わたしもうこころの体力使い果たしました」

「むとうちゃん、気持ちはわかる…」

この時の暴れたくなるような衝動は、なんでしょう。なんと言って説明したらいいのか。

見始めは、
「おおお、懐かしい、わああ、こんな名シーンあったなあ、私も大好きだった」
と余裕があったんですけど、それを3分くらい見させられたら、自分の中に残っていた『少女の夢プール』が瞬く間に満杯になってしまい、堪え切れず溢れだした何かが、身のうちで暴れ出した…みたいなかんじでね。

私の中にもまだ『少女の夢プール』のこっとったんか~!

そんな驚きです。

ちなみに少々フライング気味ですが、本展の図録の表紙をご覧いただけば最後の畳みかけるシーンをお分かりいただけると思います。

20141014-5

ラブシーンのコマ抜いて貼り付けただけで、この破壊力ですよ!

実際に売れてきた、読者に支持されてきた「絵」しかない、このすごい空間
さて、そんな衝撃で始まった本展、あまりにもすごい。素晴らしいとしか言いようがありません。

そもそも、『マーガレット』という雑誌は、50年の間、ずっとメジャーを走り続けてきた漫画誌なわけです。私たちが愛してきた少女漫画の牙城なわけです。

一般書ではありえないような巨大な部数を売り切り、何十年も売れ続け、いまや世界を席巻している、そんな漫画の砦なわけです。

しかも、その50年の中で、特に歴史に残すべき作品だけ抽出しているわけですから、この展示会場の原画すべてが、何十万、何百万と売り上げ、多くの少女を一喜一憂させてきた、問答無用の実績のあるものだけが置かれているのです。

こんな問答無用な作品って、なかなかないですよね??!!!

少女たちが少ないお小遣いの大半を使ってでも買いたい、欲しいと思った漫画。
毎月500円しかお小遣いがない小学生の女の子が、390円払って買う、このすごさをみよ!……と思うわけですよ。
今の私で言ったら給料の8割を使ってでも惜しくない、そう思うのと同じことですよ。そんなにも欲しいものだったんですよ。

大人になり、また出版の片隅に身を置いている身としてもう一度この作品たちを見ると、そんな凄まじいオーラが全体からバシバシあふれ出ているのに改めて圧倒されます。

そして、改めてマーガレットの歴史を振り返ると、問答無用に「世界を作った」作家さんが浮かび上がってきます。

どの漫画家さんも素晴らしいのですが、明らかに大きなラインを作った人。それは、「池田理代子」さんと「紡木たく」さんなんですよ。

池田理代子さんは、十分わかってました。でも「紡木たく」さんがここまですごい方だったとは、思っていませんでした。私はリアルタイム世代で、別マでずっと読んでましたし、好きでしたけど、あの表現をすんなり受け入れてしまってました。

でも、流れの中で、もう一度紡木たくさんの漫画を見ると、「うわ!」と思うんです。

20141014-3

実際、展示もそのような強弱になってます。『ホット・ロード』の映画化のタイミングもありますから、特別な扱いでした。しかし、そのオトナな事情を抜いてみても、どう考えてもやはり特別なんです。
(上写真のようにお二人だけ写真撮影OKな特別展示コーナーがありました。拡大複写ですけども)

何で、マーガレットのひとたちが紡木たくさんを大切にするのか、本当によくわかりました。

そしてそれは、原画で見るとすごくわかりやすい。

明らかに、このお二人の原画は違います。もちろんものすごく上手い。でも、それだけじゃない。上手い下手、そんな次元でなく明らかに「突出」しているのです。

面白いことに、このすごい絵が印刷されて、あのにじみやすい紙にのった途端、ある種の平均化が起こります。熱を帯びて突出した部分が、不思議と収まってしまう感じなんですね。

以前、水木しげるさんの個展に行って原画を拝見した時にもまったく同様に思いましたけど、面白いですよね、この均質化…。

とにもかくにも。

この企画展、少女漫画ファンはもちろんですけど、出版関係の人は全員みにいったほうがいいんじゃないかと思いました。漫画に興味がなくても、少女漫画はだめだと言う人でも、このすさまじいパワーのシャワーを一度浴びたほうがいいんじゃないかと思うのです。

読者に支持される、売れる、そういうことがどういういことか。またそんな作品に吹き返ってくるパワーのすごさ、そんなものを感じるとすごく勉強になるように思います。

会期は19日まで。

ぜひ行ってみてください!


「私のマーガレット」展@森アーツセンターギャラリー
http://my-margaret.jp/

(むとう)

カエル好きの皆さん!世界で最も美しいカエルカレンダー『FROGS』by松橋利光さんが今年も登場しましたよ~!!

そろそろ今年もあと三ヶ月。

書店さんも年末に向けてどんどん模様替えしてますよね。

この時期最も大きく変わるのは、カレンダー・手帳の特設コーナーができることではないでしょうか。

さて、私は以前山と溪谷社という出版社におりまして、その時にはこのカレンダーも担当しておりました。哺乳類(犬・猫)をメインに担当しましたが、カエルカレンダーも担当しておりまして……

カエルカレンダー『FROGS』がまた素晴らしいんですよ~~!!

この、美しい写真は、カエル好きなら誰もが知っていると思いますが、松橋利光さんのお写真でございますっ!

いいですよねえ。松橋さんのカエル。

もともとカエルは好きでしたが、このお仕事を通じ、松橋さんのお写真でさらに好きになってしまい、会社を辞めてからもこのカレンダーは買い続けています。

松橋さんは、ありがたいことに辞めた後もお付き合いくださってまして、そろそろ本格的に何か一緒にやろう!といろいろ画策中。めちゃくちゃ楽しみです。

さてさて。そんなこんなで。最近はちょくちょくお目にかかれる機会があるのですが。
先日お目にかかった際、「はい来年のあげる~」とこちらいただいちゃいました!!

20140912-1

おお!
可愛いです~!

今年の表紙はトウキョウダルマガエル。目が金色。顔から胴体に、葉っぱのミドリの色が反射して青みがかってますね。

 

今回は、日本のカエルの登場がいつもより多めかな?

どのカエルもきれいでかわいいけど、3月のアズマヒキガエル、いいなあ。ヒキガエルって身近すぎて気づきにくいのかもしれませんが、いいかんじの質感と佇まいしてますよね。
松橋さんの写真は、必ずそういう「あ!!」という気付きを与えてくださいます。いいなあ。

今年は、編集のほうを大好きな編集の大先輩・Yさんが担当されたとのことなので、なんとなくYさんらしいレイアウトになっている気がするな~。

中のレイアウトもお見せしたいところですが、それはちょっとあれですのでw、ぜひ書店さんで見てみてくださいね!今年もすっごくかわいいですよ!!

あ、それから、このカレンダー、カエルの写真のシールも付録でついてるんです。これで860円(税別)は本当にお買い得ですよ~!

(むとう)