目からうろこが落ちすぎる究極の「虫食」レシピ本登場!『人生が変わる!特選昆虫料理50』/木谷美咲・内山昭一著(山と渓谷社刊)

突然ですが、少し懐かしい話です。

高校時代、考古学者になりたかった私は史学部を希望していました。進路指導の時、胸を張って「史学部を受験したいです!」と爽やかに言い切った女子高生の私に、担任の先生が「む。。。」と唸りながらじっと私を見つめると言い放ちました。

「むとう。お前は史学向きじゃない。考古学者はお前には無理だ。やめとけ」

いつもはお調子者で、ふざけたことばかり言っている先生のあまりにシリアスな表情に動揺する私。偏差値がどうだという前に「向いてない」とは何だ。そんな言い方あるかいな…とちょっとむっとして、

「…え?なんで?歴史大好きなの、先生も知ってるでしょ?遺跡掘ったりも…。私はシルクロードの研究者か、中南米の研究者になりたいんです」

「…うん。それは俺もよくわかってる。でもお前はかなり飽きっぽいし、遺跡発掘のような地味で地道なことはむいてないと思う。社会学部とか経済学部がいいと先生は思うんだ」

「いえ、そんなことはありません!好きなことはずっと変わらないし、遺跡を掘るのも大好きです!」

まったく、なんてこと言うんだ!飽きっぽいのは否定しませんが、好き嫌いが激しいだけで、好きなものへの執着度の高さは相当なものがあると自負してました。まあ、先生が何を言おうが、私は考古学をやりたいんだし、遺跡を掘りたいんだから史学部にするけどね…、と心の中でつぶやいていると、

「おれのアドバイスなんて聞く耳持たないって顔だな。わかった。じゃあもうはっきり言おう。お前、肉食べられないよな」

「……!? に、肉はいざとなったら食べられますよ。なんですか急に…」

実は今でこそ好き嫌いはありませんが、20代前半までほぼベジタリアンでした。動物性たんぱく質はほとんど食べられなかったのです。ただ、どうしても食べなくてはならないシーンでは食べられましたし、別にそんなことを急に言われても意味が分かりません。

「まあ、いい。じゃあ肉は食べられるかもしれない。でも、虫はどうだ。食べられるのか?」

えええええええ!???
虫!??なんでえ?!

「お前がいきたいと言っている中南米はジャングルが多い地域だし、お前が好きな地域は未開の地が多い。食料が少なくなったときやその土地の人がご馳走してくれた時、お前はそれをちゃんと食べられるのか?」

??!!!

そ、それは、マストスキルですか?
虫食べられなくても大丈夫じゃないの?!
だめなの??!

……当時も「めちゃくちゃなこと言うなこの先生!」と思いましたが、今思い起こしても無茶苦茶だなと思います。しかし、無茶苦茶だなと思う一方、世間知らずの私は「確かに考古学者になったら野菜ばっかり食べてるわけにもいかないのかな」と、進もうとしていた足をふと止めてしまったのです。

結局、史学部は受けましたが、どちらかというと歴史学に強い学校が受かり、最終的に入学を決めたのは全然関係ない社会学部でした。まるで先生のアドバイスが、予言のように思えたのも、無理からぬことでした……。

さて、前置き長すぎてすみません。

この私の人生のエポックメイキング、というか人生の曲がり角に登場した「虫食」、そしてそのエピソードを思い出してしまったのも、あまりにもすごい本が刊行されたからなのです。
20140718-1我が古巣、山と渓谷社からまさに本日発売!!

虫食(昆虫食)の本はここ数年結構出てますけど、こんなにお洒落で美しい、いわゆる〔レシピ本〕らしい仕上がりの本はないと思います。

著者の先生方は存じ上げませんが、担当された編集者のYさんはよく存じ上げてます。とにかくお洒落で凝った作りの本を上手に作られるんですが、その才能は昆虫食をテーマにしてさらに冴えわたっておられます。

構成もさすがです。

第一章では「見た目に優しい昆虫料理」と題打って、見た感じちょっとわからないかな?という料理を紹介。
第二章「素材を生かした昆虫料理」、
第三章「野趣を楽しむ昆虫料理」とだんだんと「昆虫色」が強まっていき、
第四章「スペシャル昆虫料理」では、お寿司やおせちなど、すっかり「お祝い料理にも堂々と昆虫使っちゃうもんね♪」とばかりに、しれっと進行させてしまいます。

す、っす、すごごご!!!!!

と、とにかくこんなすごいレシピ本、ほかにあったでしょうか、いや、ない!!!!

でも、でもね。

だからと言って、急に「虫食べたい!」と思うようになるかというとまたそれは別問題なのですけどね。しかし、この本は同業者としても目からうろこが落ちる素晴らしい本だと思いますし、物事というのはここまで極まることができるのだな、と人としての道までも何かこう、変えてくれちゃうような衝撃があるのです。

まさにそのタイトルに冠している『人生が変わる』、

…至言です。

高校時代の私にも、ぜひ見せてあげたい。しかし、(ほぼ)ベジタリアンだった私に見せても虫が食べられるようになったとは思えないんですけど、でも、なんでしょう。こういう物事へのかかわり方があるとあのころの私に教えてあげたい、とそんな風に思ってしまうのでした。

ぜひ、皆さん、手に取ってみてくださいね!!

涙腺決壊!トルコと日本、宝石のような友情の物語!!『海の翼』/秋月達郎著

いつも大変お世話になっている、PHP文芸文庫の腕っこき編集者・Yさん。

ちょっと全体通読してみて~、とお仕事振っていただいたりして、よく部分的にお手伝いさせていただいております。

今回もそんな気軽な気持ちでお預かりしたゲラ(注:校正紙)を、何の気なしに読み始めましたところ、あえなく涙腺決壊!!仕事にならず!

なんじゃ、このエエ話は~~~!!

と叫びましたよ。

それが今日ご紹介するこの『海の翼』(秋月達郎著)です!!
20140711-1

トルコが大変な親日国であることは、よく知られています。明治期のエルトゥールル号事件の話も結構有名ですので、それは私も存じ上げてました。

でも、イラン・イラク戦争の時、トルコが「エルトゥールル号の時の恩返しですよ」と言って、邦人を救うために救援機を出してくれたという、すごい事実は知りませんでした。

昭和60年。イラン・イラク戦争のさなか。

イラクのフセイン大統領は、48時間以後のイラン領空において、航空機無差別攻撃を宣告しました。この時、イランには200人以上の日本人が取り残されていました。日本政府は救援機を日本から送りたかったのですが、憲法上の問題などもあり万策尽きてしまったのです。

ほかの国に助けを求めたくてもわずか48時間です。そもそも空港の離発着の数だって限界がありますし、各国はまず自国民を救うのが急務ですから、…いえ自国民さえ全員助けられるかわかりませんから、いくら助けてあげたくても、そんな余裕はありません。

日本政府から救援機を飛ばせないと宣告されてしまった、在イラン・日本大使・野本さんと大使館の皆さんは、どうにか自分たちで日本人を助けられないか走り回ります。どうにか航空券もかき集めますが、どうしても全員が乗れる枚数は揃えられません。

そして、野本大使は、最後の助けの綱、個人的にも親しくしていた在イラン・トルコ大使ビルセルさんのもとに赴き、(親しいからこそ迷惑をかけたくない、負担をかけたくないと思っていた相手なのですが)日本人を助けてほしい、と懇願します。そして、ビルセルさんは、その場で快諾。頼んだもののほとんど不可能と思っていた野本大使に、ビルセルさんは「エルトゥールル号の、恩返しですよ」と答えるのです……。

ううう。

このくだり書いてるだけで、目頭を押さえてしまいましたよ。

エルトゥールル号事件というのは、日本に表敬訪問のため訪れていたトルコ軍艦・エルトゥールル号が紀伊半島沖で難破してしまった、という事件なのですが。この時、無心にトルコ人を助けたくて、冷たくなったトルコ人の体を、それこそ裸になって温め、自分たちの食料も投げ出して救いだしたという、紀伊大島の島民のみなさんの人間愛が、100年後になってもよいことを起こし続けているのです。

うううううう。人間っていいですねええ。

いや、もうこれ以上書くとネタばらしになってしまいますので、このあたりにしておきますが、トルコのひとたちが100年もの間、ずっと覚えていてくれたことへの感動。また、100年前、明治の日本人がした、素晴らしい行為そのものへの感動。

そして、良いことはまた良いことを生むのだ、ということへの、感動。

文化・宗教がまったく違っても相手を思いやることで、理解し、愛し合うことができるのだということを、秋月先生はそのたくみな筆さばきによって描き出されています。

ぜひ、読んでみてください!
こういうことは、ぜひ語り継いでいかねば!ですよ!

(むとう)

 

家康って半端ない苦労人なのねえ、と気づいたあなた。そんな家康の家臣の皆さんはもっと苦労人、かもですよ!?あるじシリーズ最終巻『あるじは家康』、刊行!/岩井三四二著

第一弾は『あるじは信長』、第二弾は『あるじは秀吉』と……続いてきました岩井先生の「あるじシリーズ」。

第三弾は、もう言わずもがなですよね。

そうです、『あるじは家康』、です!
20140710-1

家康と言えば、「ザ・苦労人」ですよね。

三歳、物心つくかつかないかで実のお母さんは政治的理由で離縁されて離れ離れになっちゃうし。
6歳で宗主である今川家に人質に出されるかと思ったら、途中で誘拐されて敵対していた織田家の人質になっちゃうし。
8歳の時にはお父さんが家臣に殺されちゃうし、いや、もっとさかのぼればお祖父さんも家臣に殺されちゃってるし。

ふわああ、なんですかこのすさまじいまでの、不幸の連続。

子ども時代からこんな過酷な出来事を乗り越え、生き抜いたからこそ、天下人になったのかな~、家康、本当にすごい、とみなさんも思われると思います。

が。

そこでみなさんに気づいてほしい。

この過酷な条件で生き抜いたのは家康さんだけじゃないということを。
こんな天中殺ばっかり押し寄せてきてるような、相当に不運な主君に仕えた「家臣のみなさん」がいたということを!!!

『あるじシリーズ』は、「家臣」が主役の短編連作集です。『あるじは家康』にも、嵐のような災難の中をどうにか生き抜いて、最終的に天下をとった偉人・家康に仕えた皆さんの悲喜こもごもが描かれています。

前二作に比べて、大久保忠隣、石川和正、茶屋四郎次郎、ウィリアム・アダムスといったいわゆる有名人が多いですけど、そこはさすがの岩井先生。ならではのユーモアと新しい解釈とでぐいぐいと引き込んでくださいます!
家康マニアの方にも、家康を全く知らないという方にも、ぜひ手に取ってみていただきたい、愉しい連作小説集だとおもいます。
20140710-2そして、ぜひぜひおすすめしたいのが、この三冊・一気読みでございますよ~!

並べてみましたがいかがでしょう?
O編集長、渾身のコピーがさらに効いてきますね~!

ぜひお手に取ってみてくださいね!

(むとう)