『この国は物語にあふれている』お伽草子展

お伽草子展に行ってきました
 ひと月ほど前のこと。「私の智恵蔵」こと歴史専門出版社Y社のできる編集者Iさんから嬉しいお誘い。 「むとうさん、物語って興味ありましたっけ?」 はいはい、詳しくないけど、もちろんお供しますよ。サントリー美術館のお伽草子展ですね!私もすごく気になっていたのです。

美しい図録!さすがサントリー美術館。

お伽草子というと、ちょっとピンと来ないかもしれませんが、子どもの頃、絵本で『浦島太郎』『ものぐさ太郎』とか『一寸法師』とか読みませんでした?あれです!あの物語たちはもともとこの「お伽草子」というジャンルのものなんですね。

お伽草子は、室町時代から江戸時代にかけて作られた、短編の物語のこと。テーマはもののけが出てくる奇抜なものだったり、庶民が出世する成功譚だったりして、多種多様です。基本的に、庶民が楽しめるようなユーモラスな物語って感じです。

一番の特徴は、そのほとんどに絵が添えられてること。図録で解説を書かれている徳田和夫さんは、擬音をたくさん入れたり、声色を変えながら声に出して読み上げてみてほしい、と言っておられます。なるほど、そんな事をしたくなるような雰囲気なんですよね。

物語は変容していく
それにしてもすごい展覧会でした。詳しくない私でもわかるような物語の絵巻や絵本がずらりと並んでいます。 まずは「お伽草子の源流へ」からスタート。『浦島太郎』の元ネタになった『浦嶋明神縁起絵巻』(重文)@浦嶋神社(京都)がどどんと登場。

おお~、これが浦島太郎の元ネタか、と思ってみてみると、あれ??なんか物語が微妙に違いますよ。浦嶋子(浦島太郎)が、海に船釣りに行って、亀を釣り上げてます。ん?確かここは、太郎ちゃんが砂浜で子供たちにいじめられてる亀を助けてあげるんじゃなかったっけ?

しかも、その釣り上げた亀が、美女に変身してますよ!そしてその美女をおうちまで送ってあげたらそこが蓬莱(常世)だった、となってます。ほおお~。これ、私が絵本で読んだときは確か、亀が恩返しに海の底にある竜宮城へ連れて行って、主人の乙姫様に歓待される…って話だったような…。解説によると、お伽草子では私の馴染んでいるストーリーに変容していったみたい。

身も蓋もないストーリー
ほかにもいろんなお話がたくさんありました。まったく知らなかったのですが『福富草紙』という物語がキョーレツでした。福富草紙のメインファクターはなんと『おなら』です。こんなお話です。

「むかしむかし。ある貧しい老夫婦がいました。鉄鈴を神様から賜る不思議な夢を見て、夢解きをしてもらうと『体から妙音が出て、幸いを得るお告げ』だとわれます。夫はお告げ通り、体から出る音=おならを出す芸を体得。それが評判になって大金持ちになりました。
隣に住んでいた老夫婦(ちょっと悪そう)は、それを羨み、夫を弟子入れさせます。『おならを出すには朝顔の実を飲むのが秘伝だよ』といわれ、さっそく服用。偉い人のところにその芸を披露に行きました。ところが、それは秘伝でも何でもなく、下剤だったのです。おならを出そうとしたら、下痢を撒き散らしてしまい…」

おいおいおーい!!なんてお話なんでしょうか(笑)。汚すぎる。っていうかおなら芸でお金持ちに、って。そもそもそこから無理があるような気がするんですけど。
Iさんのお話では、かなり有名なお話らしいんです。中世ではこういう下ネタのお話も多いんだそうです。特におならとか下痢とか、そういうの好きだったみたい。なんか小学生男子みたいw。

ばけもの(妖怪)がかわいすぎる
そんな初めて知るお話もたくさんありましたが、私が大好きなのは『もののけ』系の絵巻。有名な『百鬼夜行絵巻(ひゃっきやぎょうえまき)』(重文)も展示されてました!

図録カバーに登場している『百鬼夜行絵巻』のばけものたち。

百鬼夜行絵巻は、60以上の作例があるそうなんですが、今回展示されていた『真珠庵本』は最古の例だそうです。

昔から、「古い道具は年を経ると魂を持って変化(へんげ)する」と考えられてまして、「付喪神(つくもがみ)」とか「ばけもの」とかよびます。
「百鬼夜行」は、そんなばけものたちが夜に行列するというお話。お話といっても、絵があるだけで物語はないみたいです。何のために行列するとか、そういうのはないんですね。ただ変化して行列するという不思議さ。
うーん。なんだろう。ちょっと怖い、のかな。本来動かないものが動くってことが。 でもこの絵に出てるような化け物だったら全然こわくないぞ!むしろかわいい!

それにしても、日本人の創造力+デフォルメ力って素晴らしいですね。水木しげるさんをはじめとする漫画家の皆さんの世界にこの系譜は見事に息づいてますね。

こうして絵巻や絵草紙を見ていくと、今の文化につながってくものをひしひしと感じます。正直言って、添え書きの文章は、達筆すぎて判読できませんが^^;、絵を見るだけで十分伝わってきます。

「こうしてよく見ていくと、どういう服を着ていたかとかそういうことはもちろん、ああ、当時の人はこんな風にお風呂に入ってたんだ、部屋の中はどうなっていたのかとか、そういうこともわかるんですよ」 とIさんが言っておられました。なるほど、ストーリーだけでなく、そういう部分がまた面白いんですね。

絵巻物などは、これまで難しそうで、敬遠していましたが、もっと気楽に見ていきたいな、と思いました。よく考えてみたら、当時の庶民の人が楽しめるように絵師が工夫して書いてるんですから、私にもわかるはず!ですよね♪

サントリー美術館
http://www.suntory.co.jp/sma/
*『お伽草子』展は、11月4日で終了しました。

 

【犬スペシャル】土佐犬に会いたい①高知って楽しい

高知県への旅
土佐、高知と言われて思い浮かぶものって何ですか?そうです、カツオですよね?(いきなり脱線)

もう5.6年前のお話になります。夏の終わりごろ。高知市内のお医者さんに取材をするというお仕事が舞い込んだので、私は颯爽と美味しいカツオはどこで食べるべきか、とリサーチ始めました。
やはり、一緒に取材していただくライターの方に、少しでも美味しいものを食べていい気持ちでお仕事していただきたいし、ね。実際のところ、美味しいけどそこそこリーズナブルなお店を探すというのも編集者の大切なお仕事なのですよ…。ふふふ…

私はこういう方面では割と有能ですので、なかなかいい感じの郷土料理屋さんを発見し予約。地元の方から「塩たたきを食べるべし」との情報もゲットしました。
なんと!カツオのたたきを塩で食べるとは!さすがカツオ大国です。
#最近はこの食べ方は一般化してるのかな?当時はあまり聞かない食べ方だったのです。

もちろん出張の日程は、さりげなく土曜日に設定。そしてさりげなく自費でもう一泊宿を予約。
取材はちゃんとやりますよ。…でも、日曜、昼間の便でお帰りになるライターS氏を見送った後は自由時間です。つまり1・5日はフリータイムなわけです。
これは、あれだ!
夢の「土佐闘犬センター」に行くチャンス到来!?念のため、Sさんに「闘犬センターで土佐犬を見たり抱っこしたりできるみたいなんで、自費になっちゃいますけど一緒に行きませんか?」
とお誘いしたところ、『お前一人で行け』と冷たくあしらわれました。

今思えば、「あの竜馬で有名な桂浜に一緒に行きませんか?」といえばよかったのか…。普通はそっちの方が有名なんだし、そいで「せっかくですから土佐男の魂・闘犬も見ていきませんか?」とか言ってセンターに行ったらよかったんでわ?と今気付いた…。うーん、失敗した(笑)。

高知県は見たいもの食べたいものがたくさんなのです
しかしとりあえず、高知竜馬空港についた私たちは早速取材地へレンタカーで向かい、無事仕事終了(いや、ちゃんと仕事しましたよ。マジで)。

土佐の郷土料理が食べたくて。5年前の当時では食べログとかそういう便利なもんはなかったんですよね。隔世の感あり。

夕方には予定通り土佐の郷土料理屋さん『陣屋』にて塩たたきにありつきました。いや~、これ美味しいんですけど、カツオが新鮮じゃなかったら無理だわ。塩が容赦なく素材の味を引き立てますので、少しでも臭みがあると多分相当ダイレクトにきます。
ほかに、ニシ貝の焼いたのとか、サバすしとかたくさんいただきました。
#なぜか料理の写真撮るの忘れてた^^;

同行者のライターSさんは、あすの午後一の便で東京に戻りますが、それまでちょっと時間があります。
ここまできたらやはり、高知名物・日曜朝市にいかねばなりますまい!もちろん高知城にも。

日曜朝市、半端ないです!
高知県の日曜朝市はなんと1690年から続いているという歴史ある朝市です。300年もずーっとやってるんですねえ。すごいなあ(もっとも日曜日に開催となったのは明治維新以降でしょうけれども…)
こういうときの私はばっちり早起きできます。6時に起きて支度をし、ライターさんを起こして一緒に朝ご飯を食べて7時半にはホテルから朝市に向かいました。 高知市追手筋というところで、約1・3キロメートルにわたりお店が所狭しと並んでいます。
とりあえず、おお!アサヒガニ発見!(写真一番左・中央下)。
あと、なんだろう、ガザミかなあ。やたら美味しそうなカニも茹でて売られてますよ。ああああ、朝ホテルでご飯食べなければよかった~~
それに、このアユ、見てください!こんなにプリップリで美しいアユがひと盛1000円ですと!

そのほかにも、これでもかと美味しそうな物が売ってましたが、とりあえずおばあちゃんが売ってたお寿司とあんこの入ったお餅を買って食べながらそぞろ歩き。
買いたいものがたくさんでしたが、何しろ生ものは日持ちがしないので、あきらめてお城へと向かいました。

高知城、いいわ~
さて、高知城です。こちらは本丸の建物がごっそりと建造当時のまま残る、全国でも唯一のお城。重要文化財に指定されています。
おおお。かっこい~!そいでもってここの天守閣からの眺めがまた格別でね。
ふは~~。いい気分です。
高知というと、幕末が有名ですが、それ以外にもみるべきものがたくさんありますね。満足して疲れ切ったSさんを空港までお送りして、いよいよ一人で念願の土佐闘犬センターです。わあ。どきどきするなあ。
(土佐犬に会いたい②大志を抱きたくなる桂浜と闘犬に続く)

【犬スペシャル!】日本犬にあいたい

日本犬が好きなんです!
ニホンオオカミに思いをはせていますと、日本犬にもまた思いが飛んでしまいます。
日本犬って、ほんといいですよね~~。

日本犬と言えば「柴犬」。カレンダー「子柴」2013から。かわゆいなあ。

はっきりいってどんな犬もそれぞれ素晴らしいんですけど、日本犬のりりしい姿には理屈抜きで魅かれてしまいます。

私は、以前とある出版社に所属していた時、犬猫のカレンダーを作っていたことがありまして、その時には、「柴犬」のカレンダーを二点新作として担当させていただきました。

当時、企画会議では、
「マーケティング的に、景気も悪くなると保守的な風潮が高まり、内向きになるため、従来の犬種が人気が出るのです」…なんてプレゼンしましたが、もちろんこれも本当にそうなんですけどね、何のことはない、自分が好きだったから、っていうのが一番の理由です。

実は個人的に、「日本犬」はずっと気になってひそかに追いかけていたテーマなのです。ご存知のように、犬は人間が最も早く家畜化した動物で、生活を共にしてきたコンパニオンアニマル。このイキモンブでも、実際に日本犬の故郷に行って、日本犬のレポートをしていきたいともくろんでます!

けっこう多い!日本犬の種類
日本犬、と一口にいっても実はいろんな種類があります。実は、日本犬って「天然記念物」なんですよ。知ってました??!

文部省(当時)は、純血種がどんどんいなくなっていくことを危惧し、「狩猟の暮らしを伝える猟犬」を日本犬として天然記念物に指定しました。
一番初めに指定されたのは「秋田犬」(昭和6年)。ついで、甲斐犬、紀州犬、越の犬(残念ながら絶滅)、柴犬、北海道犬、四国犬が指定されました。現存では6種が指定されています。
ほかにも、川上犬(長野県指定天然記念物)、琉球犬(沖縄県指定天然記念物)など、県指定の日本犬、「山陰柴犬」など、また指定されていなくても、たくさん在来犬種がいるんだそうです。すごいですね。

ちなみに、今一番有名な日本犬は、ソフトバンクCM「おとうさん」ですよね。彼は北海道犬(アイヌ犬ともいう)です。北海道犬は白い色、ってわけじゃなくて、赤色(茶)が多いんじゃないかな?
それからちょっと前に、ブサカワで有名になった「わさお」君。彼は秋田犬です。「ハチ公」も秋田犬ですが、だいぶ印象が違いますね。わさお君は長毛種の秋田犬です。

「和犬」じゃない日本犬もいます
和犬じゃない日本犬、というのもいるんです。どういう意味かというと、もとは外国からやってきた犬なのですが、日本で交配されて固定化され、日本原種と認められるようになった犬なんですね。こういうのも広義では「日本犬」と呼びます。狆(ちん)、日本テリア、日本スピッツ、土佐闘犬の4種類がいます。

土佐闘犬は一般的に土佐犬と呼ばれますね。よく飼い主や隣人をけがさせてしまったとか、殺してしまったとかでニュースになってしまう犬種です。
そのために、どうも「怖い犬」というイメージがありますよね。なにしろ「闘犬」だし。

だけど、これもある意味しょうがないんです。だって闘犬を行うためにより強く、闘争心をもった遺伝子を組み合わせて犬種を固定化してるんですから…。ふと闘争心に火が付いてしまったりするのも、犬のせいじゃありませんよね。
ですので、土佐犬を愛しているであろう飼い主の方でけがをされた方は、むしろ、自分を責めたりしてるんじゃないかな?と思います。それだけ強い犬なんですから、人間がいろいろ気配りをしなくちゃいけませんもの。それを一番知っている人たちですからね。

さて、土佐犬、ほんとにそんなに怖い犬なんでしょうか?…そう疑問を感じたら、会いに行くしかありませんよね!!
そんなこんなで、数年前になりますが、土佐犬に会いに行ってきました。土佐桂浜まで!(出張にかこつけて!)
(土佐犬に会いたいに続く)