特集「外国人トラベラーにも教えたい 新しい日本の秘境」@『BE-PAL9月号』(小学館)掲載

私は、フリーになる前、とあるアウトドア出版社に在籍しておりました。

その出版社は山やアウトドアの業界では老舗であり、また山や自然を愛する人たちがたくさん在籍されている素晴らしい出版社です。やめてしまった今でも、尊敬してやまない、そして、そこに少しでも在籍させていただいたということを誇りに思っているのですが…。

……しかしですね。

ここで、大きな問題が生じます。自己紹介なんかをするときに、「フリーになる前何やってたんですか~?」という質問が、必ずあるんですけど、その出版社にいましたなんてお話ししますと、私もアウトドアなことが上手な人だ!と思われてしまうということです。

す、すみません。
私、アウトドアなテクニックとか、まるで持ってないんです……。

――この、台詞、いったい何回言ったことでしょう。

あああ、情けない。
自然は大好きだし、旅も大好き。しかし、何の技術もないワタクシ…(涙)。

でも、そんなワタクシではございますが、なんと、小学館の老舗アウトドア雑誌『BE-PAL』さんで、書かせていただいちゃいましたよ~!
アウトドアな知識のない私で大丈夫でしょうか?という私でしたが、
「日本の秘境にかんする企画とか興味ない?」とお声かけていただいて、「あ!それなら私でもちょっとどうにか貢献できるかもしれない!」と思い、飛びつかせていただきました。

20160810-1今月の付録は、今年から施行されます「山の日」を記念したピンバッチですよ~。

そして私が担当させていただいた特集というのは…

20160810-2

↑ これどす!

「秘境」。

なんて魅力的な言葉でしょう。

とはいえ、これだけ交通網も、インターネットも発達しつくしている日本です。「もう日本には秘境はない」なんて言われて久しいわけですが、今回はあえてこの言葉を使わせていただきました。

本文には書きませんでしたが、今回ご紹介した「秘境」とは、
「多様な自然から生じてきた『日本の文化の本質』を今も秘めている場所」
そんな意味も込めておりますのです。

トップページは、「白山(はくさん)」。そしてその次には「檜枝岐(ひのえまた)」と続きます。

どちらもたいへん有名な場所ですので、皆さんご存じとは思いますが、「外国人トラベラーにも教えたい」というコピーにあるように、こちらはいずれも、日本文化の「深み」の一端を感じていただける場所として、ぜひともお勧めしたい場所です。

他にご紹介した場所の一部をご紹介しますと、西表島、赤目四十八滝、国東半島、出羽三山…などなど。
いずれも日本ならではのもの~山岳信仰、祭り、固有種生物、風景など~を体感できる場所!

どこもかしこも、素晴らしい場所ばかりです!
いやあ、ほんとに!!

私の拙い文章で、そのことを皆様にお伝えできているか、とても不安ですが、もしよかったらぜひお手に取ってみてください!

それにしても、このお仕事をやらせていただいたら、
またもっともっと旅に出たくなってしまいました。罪な企画です!w

最後になりますが、今回取材させていただきました皆様、お写真を貸してくださいました皆様、おっ力添えいただきまして、誠にありがとうございました!
そして担当してくださったN副編集長さま、カメラマンMさま、Oさま、そしてO編集長さま、編集部の皆さま、拙いお仕事でご心配をおかけしたと思いますが、本当にありがとうございました!

(むとう)

松下幸之助氏が「美しい経済人」と呼んだ経営者、大原總一郎氏の鮮烈な生きざま!『天あり、命(めい)あり』/江上剛著

倉敷へ行きますと、素晴らしい街並みと共に大原美術館の素晴らしさに驚きます。

と、言いましても私が倉敷を訪ねたのはもう、10年以上前の話ですが、正直言ってあれだけの美術館があの場所にあることに、さらに私立であることに本当に驚きました。

そして、大原美術館を設立した「大原孫三郎」という人物が、あの「クラレ」(の前身・倉敷絹織)創業者である、それくらいのことは初歩情報として知っていましたが、そのあとを継いだ人物「大原總一郎」が、あの過酷な戦中・戦後を乗り切った、まさに「魂の」経営者であることを知ったのは、本書の編集をお手伝いさせていただいたことがきっかけでした。

20160529

私は本書を拝読して、

「ああ、こんな理想を語る経営者の会社なら、ぜひとも働いてみたい」
そう思いました。とにかく、「志」が高い方なのです。

私は以前から、経営者に必要なのは「志」なんじゃないか、と僭越ながら思っております。自分がサラリーマンだったときもいつもそう思っていました。
経営者じゃなくても、上に立つ人、と言ってもいいかもしれません。上に立つ人が志を持てば、各分野のスキルのある人物がそれを支えることもできます。そこさえブレなければ、困難できつい道もどうにか突き進むことができる。そう思うのです。

理想主義者だと、きれいごとと言われてしまうかもしれないけど、どうかやらせてほしい、ついてきてほしい、そういうことを部下にいいながら、誰よりも働き、実現させました。……そして、あっという間に天国へ行ってしまった。

松下幸之助さんが「美しい経済人」と呼んだことの意味が、とてもよくわかります。

そして、なんといっても江上先生。先生の誠実で温かい筆致は、まるで本当に大原總一郎氏がそこで語っているように感じられます。

本書は「経済人ノンフィクションノベル」ですので、経営に興味のある方はもちろんですが、経済に興味がない人もぜひ読んでみてください。

58年の人生を生き切った、一人の「美しい人」の人生を知ることで、何か心にあつい勇気が生まれてくるのではないか、と思います。

(むとう)

終戦のあの時、いったい何が起こっていたのか。「今の日本」の始まりを知るための絶好の一冊、登場!『マッカーサーと日本占領』/半藤一利著

戦後71年目を数える今年。

昨年は70年ということで、新刊のラッシュに加え、『日本の一番長い日』が映画化され、年末には菊池寛賞の受賞と、大忙しだった半藤一利先生。
年が明けて、いよいよこちらの本書も刊行とあいなりました!
20160418

半藤一利先生のご本をお手伝いさせていただいて、なんと三冊目。単行本としては初めてになります。

これまでは、どちらかというとエッセイ的でしたが、今回はかなりずっしりとしたテーマです。
正直言って、「マッカーサー」「日本占領」なんてど真ん中のテーマを、私なんぞで大丈夫かと危ぶみました。しかし、そこは長年ご担当されてきたO編集長がいらっしゃるので、大船に乗った気持ちで、でもコマゴマビビりながらお手伝いさせていただきました。

そんなわけでしっかりずっしりながらも、そこはさすがの半藤先生。とにかく読みやすい&わかりやすい!
「あの時」の、マッカーサーと昭和天皇のやり取りなどから、マッカーサー、昭和天皇がどういう人であったのかを、知ることができますし、
改めてあの敗戦を見てみると、その凄まじさに改めて驚くとともに、その後に起こった様々なことが、本当にすれすれ、紙一重の決断や成り行きによって決まっていったのだ、ということがとてもよくわかり、改めて肝が冷えます。

そして、もう一つ、やはり本書のポイントは、カバーにも使われている「写真」かと思います。(巻頭には写真が24p載ってます!)

カバーのカラー写真、拝見してその状態の良さに驚きました。フィルムの退色がほとんどなく、とても70年前のものとは思えないほどクリアなんです。
だからこそ、この生々しい表現につながるんですね。

何の説明もなくこの写真を見たら、今現在、戦災などでダメージを受けたどちらかの国で撮影されたものと思ってしまうかもしれません。

先生と編集長が、この衝撃的な写真をカバー写真に決められたと教えていただいた時、私は思わずうなってしまいました。
元々は、マッカーサーの顔写真を…なんてお話もあったのですが、それがこちらで決定というのは、ものすごい方向転換とも言えます。

マッカーサーを軸にした本でありながら、この本の主役は被災した名もない日本国民なのではないか。先生はそれを示すためにこのお写真を選ばれたんじゃないか……と、そんな風に想像して、思わずうなったのです。

あの時、日本人はみんな、こうした状況だったんですよね。履くものもなく、着るものもなく、焼け跡になってしまった愛するこの地を呆然と眺める。そんな状況です。

そして、それは、一見遠い風景のようでありながら、決して遠いことではないのですね。
わたしたちが生きているこの社会は、「あの時」定められた方向性の上に成り立っているのです。

良い悪いではなく、まずそのことを知らなくてはならない、そう痛感します。

例えば、憲法についても、
「日本国憲法は、アメリカに押し付けられたものだから、我々の憲法ではない」
そういった言説をよく聞きます。

確かに、日本国憲法は、日本人だけで作ったわけじゃありません。アメリカの、というかマッカーサーの意図が大きく働いたことは間違いないでしょう。
しかし、第二次世界大戦という途方もない戦争を経て、もう今後戦争なんて言う馬鹿げたことをしてはいけない、マッカーサーを始め、そう痛感した人たちの思いが――当時の時代を代表する大きな痛感が、人種を越えてあの憲法に結晶化したってことじゃないのか……そう感じられるのです。

「歴史を勉強する意味なんてあるの?」
歴史が好きだというと、そんな風に聞かれることがありますが、私は意味があると思います。歴史を知るということは、「今」が、「なぜ」「どうして」こうなっているかを知ることです。

本書はもちろんオススメなのですが、一緒に半藤先生の『昭和史』も読んでみてほしいと思います。

こちらは、太平洋戦争以前から、戦後の復興までの流れを知ることができます。(戦後篇ではそのあとも知ることができます!)
『マッカーサーと日本占領』はどちらかというと「点」です。特に戦後の5年間、マッカーサーという人をたどることで、その時の日本が見えてきます。
一方、『昭和史』は「線」です。流れの中で、その時の日本を知ることができると思います。

今まさに、熊本・大分地震が発生し、多くの方が被災しています。
災害も多く、国内外に課題が山積している日本に生きている私たちです。あの未曾有の大惨事、何が起こり、大先輩たちがどう対し、乗り越えようとしたのかを学ぶことは、必ず意味があると私は思います。

是非、お手に取ってみてください!

(むとう)