『将軍の切り花 ~帳合屋音次郎 取引始末』/藤村与一郎著

さて、一月中二冊目の刊行のご報告です!

今回も、中面の編集を担当させていただきました。実は、時代小説書下ろしを担当させていただくの初めてだったのですが、ふってくださったN編集長様の心強い励ましと、藤村先生のやさしいお気づかいにより、どうにかこうにか進行させることができました。ありがとうございました!

さて。今回の物語の胆は何といっても『帳合屋(ちょうあいや)』というお仕事。実はこれ、藤村先生の創作とのことなのですが、創作とは思えないほど、江戸の商取引の世界にしっくりと展開しております。
帳合屋は、「A社がB社と、新しく取引をしたい、と考えたときに、間に入って取引できるように取り持つ」というお仕事。なんだか、現在でもこういうお仕事ってありますよね。

本書では、帳合屋のお仕事や人間模様を通して、江戸時代のいろんな商取引の世界を見ることができます。表題作『将軍の切り花』では、江戸時代の「花」と「米」業界の話。また、二作目では、「酒」業界、三作目では「砂糖」業界が舞台になっているんですが、へえええ!そうだったんだ!?と思うことばかりです。こういう角度の時代小説はなかなかないんじゃないでしょうか。

とはいえ、物語巧者の新鋭・藤村先生は、恋物語などの人間模様にも抜かりはありません。
つまり、経済小説がお好きな方にも、時代小説の世話物がお好きな方にも、きっとお喜びいただけるストーリーになっております。
シリーズ一作目ということで、様々な伏線がお披露目されたという感じの今回の一冊。ぜひ皆さんもお手に取ってみてくださいまし!(むとう)

 

 

『この20人は、なぜすごいのか』/泉秀樹著

新年早々、お仕事のご報告ができてとてもうれしい正月二日!
おかげさまで1月は2冊の文庫が刊行されます。

まずはこちらの一冊!中面の編集を担当させていただきました。1月4日の発売です。

こちらは、ビジネス情報サイト「wisdom」で人気連載中の「今に生きる歴史を動かした男たち」から、構成・再編集したもの。
歴史エッセイで高名な泉秀樹先生ならではの情報・視点から描き出される「歴史を動かした男たち」の生きざま。「今を生き抜くための知恵を彼らの人生から少しでも読みとってもらいたい」との泉先生の思いから、本書は造り上げられました。

上杉謙信、武田信玄、織田信長、徳川家康、豊臣秀吉、平清盛、藤堂高虎、島左近、坂本竜馬、勝海舟…。

名だたる男たちの、王道のストーリーはもちろんのこと、意外な素顔も垣間見ることができるかと思います。

歴史に詳しい方はもちろんですが、歴史は苦手だけど「人間の生き方」には興味がある、という方にもぜひお手に取ってみていただきたい、との思いから、タイトルや装丁もいわゆる「歴史物」からは一線を画した造りになりました。

全体ですと360ページほどありましてボリュームたっぷりですが、一人につき20P弱で読み切ることができる構成です。ちょっとした時間の合間にお読みいただくのでもお勧めです。ぜひお手に取ってみてください!(むとう)

『マヤ文明 聖なる時間の書』/(実松克義著)

 

中国で「マヤ暦では12月21日が最後の日と予言している」という説を妄信して、大変なことになっているという報道がニュース番組で流れていましたね。 でも、何事もなくきっちり22日はやってきました。平穏な今日が始まってます。よかったよかった!

とはいえ。
これをマヤのシャーマンたちが聞いたら「当然だろう」と口をそろえるだろうなあ、と思いました。 彼らは「この暦が終わるときに世界が終る」なんで思ってないんです。この説は、アメリカを中心とスピリチュアル業界から発せられたものなんですよね。

なぜ、そんなことにちょっと詳しいかと申しますと、昔、『マヤ文明 聖なる時間の書』(実松克義著)という本を担当したことがありまして、その時にちょっと学ばせていただいたのです。もう10年ほど前に担当した本ですが、私にとって初めて単独で一から担当させていただいた人文書であり、とても大切な一冊です。
マヤ文明聖なる時間の書

本書には、現役マヤ人シャーマン@グアテマラが登場します。著者の実松先生は「マヤ文明とは何か」「マヤ人の精神世界とは?」というテーマで、「マヤ民族本人からちゃんとヒアリングしたい」と6年にわたりグアテマラの各地を訪ね、インタビューし、その結果を一冊にまとめられました。

ご存知のように、中南米に花開いたマヤ文明は、天文学の非常に発達した文明でした。そのため、非常に精度の高い暦がさまざま作られましたが、その中で重要でかつ最も長い暦があります。 一般的に「長期暦」と呼ばれるのですが、これによると一周期が約5125日!なんですね。めっちゃくちゃ長い!

で、この5125年に一度の終りの日がやってくる、というので、一部の人たちはこれが「人類滅亡の日なんじゃないの?」と言って不安がってたんですが、マヤ民族のシャーマンたちは「長い暦の最後が来る、そして新しい時が始まるという意味で、それ以上でも以下でもないよ」と言っていたよ、と実松先生がよくいっておられたのを思い出しました。

ちょっと神秘的な印象の強いマヤ文明ですが、本書を読むと、シャーマンたちの言葉がかなり「シンプル+クリア」なことに驚きます。

儀式を行ったりしてるので、一見ちょっとおどろおどろしいのですが、その根底にあるのは、科学者的な世界観でなりたつ精神的伝統によって支えられてるんです。意外なんですけど、なるほどなあ、という感じ。
あれだけの暦を生み出した文明ですもの。ねえ。

本作は、『知的エンターテイメント』を標榜して先生と作り上げた一冊なので、研究書ではなく、物語としてもお読みいただけるつくりになっています。
マヤ民族の文化や精神史に興味のある方は、ぜひお手に取ってみてくださいね~!