祝!第六回歴史時代作家クラブ賞作品賞受賞!!!7世紀東アジア世界の大動乱を描き切る歴史小説『白村江』/荒山徹著

タイミングを逃してしまい、ご報告できていなかったのですが、編集のお手伝いをさせていただきまして、今年の1月に刊行されました荒山徹先生の歴史小説『白村江』が、このたび第六回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞されました!

そんなおめでたい機会ですので、こちらでもご報告させていただけたらと思います。

最近でも、朝鮮半島、中国、そして日本の間には、かなりの緊張状態が続いていますが、7世紀の東アジアでも、同じような、いえ、それ以上の緊張状態が続いていました。

本書、『白村江』のタイトルにもあるように、「白村江(はくそんこう、はくすきのえ)の戦(たたかい)」としてその緊張はひとつの頂点をなし、そこを分岐点として、怒涛の如く歴史が動いていくわけなんですが、本書は、その有様を、日本、新羅、百済、高句麗、それぞれの視点も入れこんで描き切った、まさに渾身の大作だと思います。

百済の王子・豊璋(ほうしょう)の生きざまを縦軸として、
倭国の葛城(かつらぎの)皇子(中大兄)、蘇我入鹿、中臣鎌子(足)、
新羅の王族・金春秋(きんしゅんじゅう)、
高句麗の宰相・泉蓋蘇文(せんがいそぶん)

が入り乱れて繰り広げられる思惑の応酬に次ぐ応酬。息をつく間もないような、正に怒涛の展開。
そして、それぞれの人物がこれまたとても魅力的なんです!
古代の人物ですから、時間的距離はあるはずですが、今の私たちからしても人間として共感してしまうような魅力的な人物造形です。
そして、随所に光る荒山先生ならではの歴史解釈は正に「荒山史観」とも言える斬新な読み解き方で、本当に面白い!「あああ、なるほど!そうだったのかもしれない…」と膝を叩いてしまいます。

どうしても登場人物の名前が長めの漢字だったり、場所の名前も少々読みづらかったりするかもしれません。出来るだけ読みやすいようにルビを多目に振ったり、巻頭には地図、巻末には各王家の系図も付させていただきました。
そんなものも活用していただきながら、この世界にダイブしてみていただけたらと思います。
もっとも、そんなことをすっ飛ばしても、とにかく読み始めてしまえば、その魅力的な世界観で一気に読み進んでしまうとおもいます~!
ぜひともお手に取ってみてくださいまし!

(むとう)

過酷な運命の最中にも、その清冽な魂は凛として輝く!――信玄の末娘・松姫の一生を描き切った傑作歴史小説、登場!『疾風に折れぬ花あり』/中村彰彦著

文芸雑誌『文蔵』さんの連載をお手伝いさせていただいてから、約三年。

思い返すも楽しい日々でした。毎月毎月、一番初めにお原稿を読めてしまうんですもの!これぞ、まさに編集の役得ですね!幸せとはこのことです!!

そして、いよいよ。
この時がやってきた~!!と、躍り出したいような気持で一杯です。

中村彰彦先生の『疾風に折れぬ花あり』

とうとう発売されました!

装丁がまた素敵ですよね!?
華やかで女性らしさがにおい立つようなデザインです!
そして同時に、中村先生のお作らしい重厚さもしっかりと兼ね備えていますから、中村先生の往年のファンの男性も、きっとためらわず手をのばしてくださることでしょう!
こちらはあの菊地信義さんのデザインですよ!さすがとしか言いようがないです。

そして、装画は日本画家として活躍されている宝居智子さんです。ステキな日本画ですね。
特にこの手の表現!ご覧ください!
八重桜の花びらが舞い落ちるのを夢見るように見上げてます。そして自然と指先が追いかけている。そしてその指先は、まるで花弁のようにピンクに染まっているのです。
いや~、眼福眼福。

20160408

実は、この「桜」。本書にもとても大切な場面で登場します。

ちょっとネタバレになっちゃうかもしれませんが、本書の主人公、松姫さんは武田家が滅んでしまうことで、とてつもなく過酷な人生を歩むことになります。

その過酷な人生を、ともに歩んでくれたとも言える小袖があるのですが、その銘が「桜花(おうか)」というのです。桜色のとても美しい小袖です。
「桜花」は、大好きなお兄さんの奥さんが形見としてくれたもの。この「桜花」、これぞという時に松姫さんを導いてくれるような、そんな存在に思われるのですね。

名門のお姫さまだった世間知らずの松姫さんが、三歳の女児3人を育てながら、出家し、戦国の世を生き抜いていく。
何度も何度も絶体絶命といった場面がたち現れます。しかし、松姫は、涙ぐみながらも決して逃げません。一見たおやかで、素直で優しげなのですが、こころが強くなければ生き抜くことは、到底無理だったでしょう。

***

どんな人生でも、生きていくということは山あり谷あり。
楽な人生なんてないんだな、……と40過ぎて、ようやく実感を持って分かってきました。
突然ウソのような幸運が舞い込むこともある。想像を絶する不幸が襲い来ることもある。

そうしたことが起こった時、それをどう乗り越えていくのか、切り開いていくのか、それによってその人の魂のありようが見えてくるように思うのです。

とてつもなく過酷な状況の中でも、魂の輝きを失わず、まるで暗闇の灯火のように、蓮の花のように静かに生き抜く人が確かにいた――。

中村先生は、いつもそんな素晴らしい魂を、歴史の中から掬い出して、私たちに見せてくださるような気がします。

本書の主人公、松姫然り、そして保科正之公もそうです。
あれだけ魅力的な人物がいたことを、私は先生の小説で知ることができました。

そうそう、保科正之公も、本書で登場しますよ!健気でかわいらしい少年の幸松君として、ですけどね。ぜひ、お手に取ってみてくださいまし!

そして最後になりますが、中村彰彦先生、そしてN編集長さま、Y副編集長さま。
ご一緒させた時間は何もにも代えがたい、私の宝物です。
至らぬことも多々あったと思いますが、本当に素晴らしい時をありがとうございました!

(むとう)

異色コラボ!戦国ファンタジー小説『ヤタガラス』/豊田巧著・カズキヨネ画

昨年はアニメ化も果たした人気ラノベシリーズ『RAIL WARS! – 日本國有鉄道公安隊』などものされている豊田巧先生と、『薄桜鬼』など大ヒットゲームの原画やキャラクターデザインで大人気のカズキヨネ先生が異色のコラボ。

実は企画が起こってから二年ごし。
お忙しいお二人ゆえに少々お時間がかかりましたが、どうにかこうにか無事、出版していただくことができました。

さて、歴史ものは初めてという豊田先生ですが、リキを入れて取り組んでくださり、本格な戦国ファンタジーにしていただきました。そしてそこにさらなる躍動感を吹き込んでくださったのが、カズキヨネ先生です。

このカバーをご覧ください。
20150127-2美しく強い、しかしどこかガラスのような繊細さを感じさせるこの瞳…。
これこそまさにカズキヨネ先生にしか描き出せない「孫十三」像なのではないでしょうか。

ここで、簡単に内容をご紹介いたしますと…。

時は戦国、乱世の時代。桶狭間の戦いの少し前からお話は始まります。
主人公の雑賀孫十三は、天才的鉄砲撃ち。相棒の四郎はこれまた天才的な鉄砲鍛冶で、暗殺稼業をして諸国を行脚しています。金にはシビアな二人なのですが、実はそれには理由があり…。

キリスト教信奉者となった孫十三の姉、カタリナの「弱者でも平和に暮らしている平和な世の中をつくる」という夢をかなえる手助けをしようとしているのです。しかし…。

今回は全部で4話。明らかにされたこともあり、しかし新しい謎も現れ…。この4話でも十分楽しんで読んでいただけると思いますが、今後の展開をつい期待したくなってしまう内容になっております。

ぜひ皆さん、お手に取ってみてください。

(市森むべ)