稀代の超人・空海さんが完成した、明朗で深遠な密教に出会う!『空海と密教解剖図鑑』(エクスナレッジ刊)

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苦節3年。ようやく形になりました!

エクスナレッジさんより、『空海と密教 解剖図鑑』がいよいよ発売になります。早いところですとそろそろ店頭に並べていただいてるかも…?とのこと。

思い返せば、担当編集の久保さんが「解剖図鑑シリーズで、密教を書いてみませんか?」とご連絡くださったのが2021年の夏。そこから刊行するまでに、約3年の月日が必要でした。

空海さんはあまりにも天才、空海さんの密教はあまりに深遠…。

私に、この巨大すぎるテーマは書けるのだろうかと不安でいっぱいでしたが、宮坂先生のご教導や、久保さんの励ましで、どうにか完走できました。いろいろと不備はあると思いますが、今は、とにかく形にできたことに、心よりほっとしております。

「空海さん」と生きた時代を想像しやすいように…

ご存じの方も多いと思いますが、「解剖図鑑」はエクスナレッジさんの大ヒットシリーズです。人文分野などのちょっと難しいテーマを、イラストを贅沢に用いて、解剖しよう!という企画で、本書はその一角においていただく一冊になります。実はこの「イラストで図解しなくてはならない」というのが難しいんですね。通常でしたら文章でお伝えするところでも、必ずイラストで図解します。文章を書いた上に、図解のラフも書く……。これは私にとっては、なかなかのハードルでした。

それはさておき。

本書は、前半は空海さんについて、後半は空海さんが大成した密教について、と言う流れで構成しております。

前半では、空海さんのライフヒストリー細かく追っていけるようにとと、一つの項目の冒頭見開きに、年表を入れるようにしてみました。そして見開きのあとに、2ページから4ページの各論があります。この年表上に起こった出来事を、各項目で詳しく書いていく…という構成です。

年表ありの見開きページで大まかな流れをご紹介。

そしてイラストの周りにも、小さな字で恐縮ですが、情報をできるだけ詰め込んでいます。ここのところは、気になる所だけ読んでくださいね。まずは本文を通しで読んでいただく方が、分かりやすいと思います。

各項目ページで、より深掘りした情報を掲載。

空海さんが大成した密教の基本的部分

そして後半では、空海さんが完成した「密教」の基本を解剖しようとしています。

宮坂先生は解説してくださるときに、仏教用語をかみ砕いて、私たちにもわかりやすい言葉で教えてくださいます。それがとにかく面白くて、心にすっとしみ込んでいくのです。

そんな体験をそのまま皆様にもしていただきたいと考え、先生がしてくださったように、普通の言葉で解剖しようと頑張りました。

とはいえ、どうしても言い換えられない言葉もあって、漢字が多くなってしまいます。上のページは、「三密加持」という密教ならではの概念をご紹介しています。この辺はちょっと難しいかな~と思いますが、初めから順に読んでいただくと、少し読みやすいかも??と思います。

私たちの中に「密教」をインプットしましょう!

そして、最終章は「実践!今日から始める密教」というタイトルにしました。

せっかく本書を手に取っていただいたのですから、存分に役立てていただきたいんです。実際、「空海の密教」は、人間という存在の内的活動を、スムーズに動かすためのプログラムだと思うんですね。

もちろん密教のプロフェッショナル(密教僧)になるのは別の話としても、そのプログラムをダウンロードしてインプットするのは、誰にでもできるのです。そして本書が、そのインプットを助ける役割をしてくれたらいいなあと思っています。そのためにできることを、第6章でいくつかご紹介しています。

その中の一つに「巡礼」があります。巡礼は聖地と聖地の間を巡る行です。有名な「四国八八カ所巡り」もまさにそれ。そのような伝統的な巡礼はもちろん、本書おススメの巡礼もご紹介してみました。

空海さんは超人ですが、実在の人物です。空海さんが実際に見たであろう風景を、私たちも追体験することができるのです。そんな場所を巡る旅もご紹介してますので、ぜひ参考にしてみていただけたら嬉しいです。

    ※    ※    ※

簡単なご紹介にするつもりが、だいぶ長くなってしまいました。

空海さんや密教、仏教に興味のある方はもちろん、日本の文化全般に興味のある方にも、ぜひお手に取ってみていただきたいです。空海の密教が日本文化に与えた影響は、とてつもなく大きいですし、今もその上に私たちは立っている、と言っていいと思います。

また、これからも、もうちょっと各論のご紹介を、本HPでも書いていこうと思います。特に、各地を取材したときの旅行記は本書の中ではちょこっとしか載せられませんでしたので、写真も含めてご紹介できたらと思っております。ぜひご覧くださいね!

(むとう)

女系の血統に注目すると見えてくる古代史の真相!『女系で読み解く天皇の古代史』関裕二著(PHP新書)

どの時代でも「生きもの」としての人間は、そうそう変わらないと思います。特に喜びや悲しみ、祈りたくなる…といったエモーショナルな部分は変わらないですね。一方、環境に伴って、より生存しやすいパターンに暮らしを合わせていくという点では、変化はつきものです。歴史を振り返る際には、その変化を想像のうちに入れておかないと見誤るでしょう。

今回、関先生が改めて提案されているのは、「女系の血統から古代史を読み解く」という方法です。というのも、古代史の社会と、現在の私達が属する社会とで決定的に違うのが、子育ての主体が「女系家族」にある、という点です。「妻問婚」とも言いますが、男性が女性の実家に通い、子どもができたら、女性の家族が養育します。つまり母の一族に、養育の主体があり、基本的には、父方は口を出せません。

そんな社会であるということを念頭に古代史を見てみたら、これまで、男系の血統ばかりを見すぎてきたのではないか??……ということなのです。帯に、

「古代の天皇は父親よりも、母親の血統で決まった」

とありますが、この視点は非常に重要ですよね。当時の王族は、母方氏族に育てられて大人になり、その後、経済的に支援してくれるのも母方なのですから。その母方がどんな氏族であるかを知ることは、当時の実態を想像するのに必要不可欠なことでしょう。

今回先生が読み解くのは、6世紀から8世紀にかけて。日本史上でも「女帝」が続出した特別な時代です。一般的には、「中継ぎ」として女帝が登場した…と説明されることが多いのですが、果たしてそれだけが理由でしょうか。他に男性王族がいるにもかかわらず女帝が立ったことには、もっと積極的な理由があったのではないか…ということを、関先生が「女系血統」という一つの視点を示しながら、読み解いてくださいます。

またその視点から、そもそも古代には、大王になれる「三つの血統」があったのではないか、とおっしゃいます。その血統は、女系血統から読み解けるのではないか、…と、まさに目から鱗が落ちる「関先生史論」が展開されていますよ!

ぜひ、お手に取ってみてくださいね!

(むとう)

これからを生きるために、自分の足元をちゃんと知りたい。日本文化の源流と叡智へ迫るシリーズ第一弾登場!『今を生きるための密教』/本田不二雄・武藤郁子著

日本文化の根源に迫る新シリーズ、ついにスタート!

密教をテーマに書いてるんですよ~、と言い続けて、早幾月。なかなか本にならなくて、白目をむく日々でしたが、明けない夜はないんですねえ。ついに、12月17日に発売になります!(少々フライングです。すみません!)

私たちの足元にあるものーー私たちの思考や精神の土台になっている大切なもの。

日本文化の基層にあるものを、本田さんと武藤なりに、一歩なりとも迫っていこうとするシリーズが、ついにスタート。第一弾は「密教」です。

これまでにも、仏教をテーマにした本などは何冊か「編集」として経験してはいるものの、今回は執筆者としてですから、ニュアンスが違います。

今回、このような機会をいただいたのは、神仏探偵としても名高い本田不二雄さんの大胆なご推薦によるものでした。そして、幸運なことに版元の天夢人(テムジン)さんの社長・勝峰さんは、私が勤めていた出版社の先輩。不安もおありだったと思いますが、快く承諾してくださいました。いずれにせよ、シロウトの門外漢である私が、「密教」について書いていいのか…。そんな葛藤を抱えながらでしたが、兄と慕う本田不二雄さんのおおらかさと導きによって、どうにかこうにか…。

結局自分なりに考えて、「シロウトで門外漢である」、そこを立脚点にしようと決めました。知らないことは知らない、知ったかぶりは絶対しない(出来ないけど)、と。本書は、本田さんという先達と、武藤という門前の小僧が辿る、「密教を知るための軌跡の記録」と言えるかもしれません。

そのため、ちょっと変わった構成になっています。

章立ても、「章」ではなく、「門」としました。ひとつひとつ、門をくぐって奥へ進んでいくようなイメージです。ですから、序(プロローグ)は「門前」という名前にしました。「密教」という大いなる叡智を前にして、「門前」に佇む私たち自身を、ちょっとでも表現したかったのです。

(本田さんが書き下ろしてくださった「まえがき」をぜひご覧ください!本書はそんな心持でお読みいただけたら幸いなのです)

「門前の小僧」を自称。素朴な質問を連発

そんな門外漢の私にとって、宮坂宥洪先生(真言宗智山派・智山伝法院院長、照光寺住職)との出会いは、最高の幸運でした。私の「わからない」に優しく応えてくださり、そのあたたかい言葉の数々があまりにも「目から鱗」だったので、本田さんにご相談して、本書の冒頭の「門前」の根源にさせていただきました。じつは、この「雲」の言葉の源は、宮坂先生のお言葉です(ちなみに、熊は本田さん、メガネ狸はワタクシ、武藤がモデル)。

(この可愛らしいイラストを書き下ろしてくださったのは、唐木みゆさんです!)

「密教とは何なんでしょう。できるだけ簡単に教えてください」

冒頭にそんな台詞を言っちゃってますけど、本来こんなこと聞けません。「密教を簡単に説明なんてできない」、多くのお坊さまはそうおっしゃるんじゃないかと思います。それはそれで、「おっしゃる通りです」とこうべを垂れるほかないのですが、しかし、本当の始まりとして、この質問をどうしてもいれたかったのです。

そして幸いなことに、宮坂先生は、こんな質問にも優しく、しかしはっきりとわかりやすい言葉をくださいました。さらに、本田さん執筆の第二門「密教を知る」では、「特別講話」として、密教について深く、わかりやすく語ってくださっています。

さらにさらに、私が書いた「第四門 仏尊の世界」を監修してくださいました。先生が見てくださったので、解説文はもちろんですが、密教ならではの仏尊の種子も真言も、間違いのない内容になっているのではないかと思います。

そしてもう一人、大変お世話になったのが羽田守快先生(天台寺門宗・金翅鳥院住職)です。本田さん執筆の第三門「密教の現場を知る」では、密教の祈祷が今どのように行われているかを、歯に衣着せぬ口調で、縦横無尽に語ってくださいました。
私も、「遊行」という章で、戦国時代の呪法について書いているのですが、羽田先生に呪法についてご教授いただきました。歴史研究者が間違えていることをたくさん教えていただいたので、今(だけは)瞬間風速的に、戦国時代の呪法についてはちょっと詳しい人になっています。それにしても、文献は大切ですけど、根本的な知識があって読まないと、読み間違えてしまいますね。

とにかく感動してしまったのは、空海という人の凄さ

今回、自分なりに勉強し、先生方にご教示いただいて、驚き・感動したことは本当にたくさんあります。しかし、あえて何か一つ、と思うと、やっぱり「空海さんって、本当にすごいな!」ということです(素朴で恐縮です)。

こんなにすごい存在が、約1200年前に実際に生きていた人なのかと思うと、何だかもう、不思議な思いすら湧いてきます。どんなにすごい存在であるかは、本田さん執筆の第一門「空海を知る」をご覧いただきたいのですが、こんなに魅力的な人物が日本にいたのか、とつくづく感動してしまいました。

私が「密教」に感じる魅力というのは、ほとんど「空海」さんとイコールと言っていいかもしれません。表現力、言語力、構成力、デザイン力、そして包容力、他者への慈悲の深さなど、そのすべてが空前絶後だと思います。

本書が、そんな空海の、ひいては密教の魅力を知るための、ささやかな一助になれたらいいなあと、心から思います。

そして、私自身も、本書を書かせていただいたことで、小さな一歩を踏み出したような気持ちでいます(その軌跡はぜひ「遊行」という章をご覧ください)。密教を知った、わかったとは、思っていません。

ただ、あえて言うならば、「密教」という、「美しくて大きくて、果てしなく広がる深い森がある」ということを知った。そしてその深い森の入り口でちょっとビビりながらも、ワクワクしている、そんな心境なのです。

これからも、「密教」という大いなる叡智を、勉強していきたいと思います。今回の本は、私にとって始まりです。本書を手に取ってくださった皆さんも、そんなふうに感じていただけたら最高に嬉しいです。

ぜひ、ぜひ、お手に取ってみてくださいね~!!
よろしくお願いいたします!

最後になりますが、共著者の本田不二雄さん。一緒に歩んでくださって、本当にありがとうございました!そして、様々な形で導いてくださった宮坂宥洪先生、羽田守快先生、取材にご協力いただきました皆様、素敵なイラストを書いてくださった唐木みゆさん、デザイナーの高橋潤さん、そして編集を担当してくださった天夢人の武田さん、そして勝峰さんに、改めて御礼申し上げます。

(武藤郁子)