「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)、連載第6回掲載!!

昨週末、中村彰彦先生の「疾風に折れぬ花あり」、第6回目掲載の『文蔵』2014年3月号が刊行されました。
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奇しくも、14日の大雪の翌日。本書の舞台にもなっている甲府や勝沼などのある、山梨県は本当に大変なことになっています。雪のために陸の孤島と化している、と…。

私はテレビをあまり観ていないのでわかりませんが、キー局などでのニュースがとても少ない、と友人から聞きました。心配ですが、とにかく今日、また雪が降らなくて本当に良かったです。除雪作業はマンパワーでどうにかするほかないので、限界があります。とにかく、気温が上がって早く溶けてくれることを、遠くから祈るばかりです。

さて、今回のお話は、いよいよ、いよいよ武田家は…です。

武田家の最後の良心というべき、仁科盛信(にしなもりのぶ)は、前号見事に武田武士らしい死にざまを見せました。
そして主人公の松姫さんは、幼い姪っ子の姫たちを連れ、向嶽寺というお寺で、甲斐国脱出の機会をうかがっている…という状況です。

そして、武田家当主の勝頼さんは…。

…最後までひよりましたですよ。重臣の勧めで新府城という本城を脱出し、重臣の城まで逃げて再起を図る、と決めて、新府城に火を放ちます。しかし、この判断はいったいどうだったんでしょう。戦術に詳しくない私のようなものからしても、この一手はやばいんじゃないの?!?と思いましたです。

だって、織田信忠軍はすごい大軍ですよ。家臣たちがどんどん自分から離れていった結果、勝てそうもなくなってるところに、勧められたからと言って家臣の城に逃げ込む、だなんて。なんか無理ですよね??

さて、さてさて。

もう結論は出てしまっておりますが。あああ、武田家、悲し…。

とはいえ、最後の最後には、勝頼もはらを決めます。はらをきめてからの勝頼は、いかにも戦国の武士らしいふるまい。そばで戦った家臣たちもまた、いかにもな見事なふるまいであったことを、先生の筆は教えてくださいます。

いやあ。

なんともいえぬ、余韻の残る今回のお話です。

ぜひ、お手に取ってみてください!
人生の「選択」とは、なんとまあ難しいものか、と改めて考えさせられます!

(むとう)

 

 

「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)、連載第5回掲載!!

年が明けたと思ってましたら、1月ももう下旬に入りました。早いですねえ。…って今年の年末年始にも同じことを書いてしまう予感がしますが(笑)。

さて。

昨週末、中村彰彦先生の「疾風に折れぬ花あり」、第5回目掲載の『文蔵』2014年2月号が刊行されました。
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今回の号は、いよいよ主人公、武田信玄の末娘・松姫さんの最愛のお兄さん、仁科五郎盛信(にしなごろうもりのぶ)が、壮絶な戦死を遂げてしまいます~~!弱冠26歳!!

仁科盛信は、武田信玄の五男なのですが、4男の異母兄・勝頼が家を継いだ後も、勝頼を立て武田家に尽くし、最後には世の誰もが「さすが武田武士よ」と賛称するであろう見事な死に方をしました。今号でははその様子が見事に描かれています。
#ちなみに、言うまでもありませんが、私は尋常でなくこの五郎さんに入れこんでます^^。先生の描かれる五郎さんがほんとかっこいいんですよね!

今号の原稿を拝見した私は、先生にため息交じりに何度も申しあげてしまったのですが…。

もし、この五郎さんが武田家を継いでいたら、武田家は滅びなかったのじゃないかと思うのです。それぐらい見事な武人で、家臣にも愛されました。

血筋も勝頼と比べて申し分ないのです。お母さんは側室ですが、武田家の親戚衆・油川氏の出であり、いろいろと問題を生じやすい諏訪氏出身のお母さん(側室)を持つ勝頼と比べてみたら、むしろ圧倒的にいい感じなのです。

何しろ、諏訪氏と武田氏というのは因縁がありすぎて、勝頼のお母さんを側室にする、というのは武田家家臣みな反対したと言います。なので、信玄にとって勝頼は「諏訪氏」を継がせるときめられていた息子でした。武田氏を継ぐ息子は長男がいたので、特に問題なかったんですよね。それでも。

勝頼、という名前を見ればわかりますが、武田家の男子が持つべき「信」の字が入っていません。「頼」は、諏訪氏の通字で、勝は、幼名からとったそうでですけど…、ちょっと変わってる。

普通に考えたら、「信頼」か「頼信」と名乗るでしょう。どうして「信」の字を入れなかったのか…

第20代続いた甲州武田家のなかでも唯一「信」が入っていない当主です。何だろう、この違和感。

そして、この後、その勝頼によって名門武田家は滅びるのです。うーむ…。

と、ちょっと余談になってしまいましたが、一度「滅び」へと舵を切ってしまった武田家の、雪崩を打つように止まらない様子が今回も五郎さんの死でもって、見事に描写されています。

ぜひ、お手に取ってみてくださいね!

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さて、連載のお話はここまでなのですが、

なんとこの『文蔵』、今回の号で100回を数えるんだそうです!すごい!
おめでとうございます~!

月刊誌ですから、年に12回。としますと9年目ですよね
出版不況といわれるこの時代にこの着実な歩み…。ほんとにすごい。

そんな記念すべき号の特集は「働く人が元気になる100冊」です。今回も情報たっぷり、インタビューたっぷりで読み応えすごいですよ~!

(むとう)

「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)、連載第4回掲載!!

さて、早いもので、中村彰彦先生の「疾風に折れぬ花あり」、第4回目掲載の『文蔵』2014年1月号が刊行されました。

雑誌はひと月早いですからねえ。もう来年の名前が付いた巻が刊行されるなんて、…何やら気が急いてまいりますね。
文蔵2014年1月号さて、今回の掲載第4回目では、武田家がいよいよのっぴきならない状況になってきてます。主人公の松姫さん(信玄の末娘)がいよいよ新府城を落ちて、これから始まる逃避行への序章…。

今回のエピソードで私が大好きなのは、松姫さんが城を落ちる途上、異母兄で盲目の龍宝さんに、最後のあいさつに行くところ。

この龍宝さんは、武田信玄の次男で正室の息子。生まれつき盲目だったので半分出家した形をとり、家督は継げなかった人なのです。先生の描かれる龍宝さんの、なんともいえぬ優しく無邪気な様子がたまらない!末の妹である松姫さんを慈しむ様子がまたいいのです。

優しい人ですが、その心はやはり武田の男です。武田の滅亡を前に、一寸の揺るぎもありません。

それにしても、中村先生はこういう人を描くのが、また本当にお上手です!

「見事」な生きざま。

今回のお作の中にも、そうした見事な人たちが次から次へと出てきます。もちろんそれに対して、「わあそれはないわあ」と思う人物も登場してきます。その最たる人は、当時の武田家当主である勝頼なのですが…

…と、あまり熱を入れて書き出してしまいますと、せっかく楽しみにされてる方に申し訳ないので、この辺にしておきます。今回の掲載話も、めちゃくちゃ切なくて、面白いお話ですよ!!
ぜひお手に取ってみてくださいまし!

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さて、そうそう、『文蔵』のご紹介もちょっと。今回の文蔵はいかにも年末年始にふさわしい特集です。

「書店員が最も惚れた小説」

ですよ!なんだかとっても気になりませんか??!

書店員さんへのアンケートをもとにランキングではなく、「推薦する一冊」という見せ方。本の利き手である書店員さんが個人的思い入れを込めてお勧めする本ですから、そりゃ面白いだろうと思うわけです。

お恥ずかしいことに、浅学な私は、まったく存じ上げない本も多数ありました。年末年始はこちらで登場している作品をできるだけ読んでみたいと思ってます。

そして、第二アンケートでは「私が注目しているこの作家」。
こちらも、本当に浅学な、そして文藝音痴な私にとって初めて拝見するお名前も多数…。もっと勉強しないといけませんね。ほんと。