「百年生きる」と考えた時、現れ出るのは不安と希望。ついに到来した人類未踏の時代を生き抜く新シリーズ登場!/『人生百年時代の「こころ」と「体」の整え方』五木寛之著(PHP研究所)

「こころ」三部作に続き、新シリーズスタート!

五木先生のご本をお手伝いさせていただいて、今回でなんと6冊目!
思いがけずご一緒させていただくようになって、もう5年ほどになりますでしょうか。先生とお会いできるというだけでもラッキーですのに、こんなにお仕事ご一緒させていただくことになろうとは……。本当にラッキーとしか言いようがありません!

この前の三作は「こころ」シリーズとして、三冊立て続けに刊行していただきましたが、おかげさまで、先生の思いは読者の皆さんに受け入れていただけたと思います。たいへんご好評いただきました。

前作までは三部作、と最初から考えておりましたので、一区切り、という感じだったのですが、ありがたいことに、今回のご本から、新しいシリーズをスタートさせていただくことができました!!
写真ではちょっとわかりにくいかもしれませんが、判型は一回り大きくなって、少しやわらかいハードカバーになっています。

「人生百年時代」――宗教者も哲学者も想定していなかった未曾有の時代到来!

皆さんもご存じのように、このところ、「人生百年」という言葉が、表現というだけでなく、現実として、立ち現れてきています。

「長寿の時代、素晴らしい!」と思うのが半分、「そんなに長く生きるなんて不安だ」と思うのが半分といったところでしょうか。いや、ひょっとしたら、「不安だ」という思いの方が、半分以上、7・8割なのかもしれません。

でも、それも仕方のないことですよね。なにしろ、「人類史上初めての事態」に私たちは直面しているんですから…。

「今までの宗教や哲学も、100年生きるという想定では、作られていない。そうなると、新しい世界観、考え、そういったものが必要になってくるのかもしれないね」

五木先生は、そんなふうにいつも話してくださるんですが、いやもう、さすが先生。鋭いご指摘!

例えば、世界三大宗教で見ても、伝えられるところでは、ブッダは享年80ですし、ムハンマドは享年62、イエスは享年35・6です。

日本国内に目を移せば、おそらく宗教者の中でも、最も長く生きたのは親鸞さんでしょうか。平均寿命が50にも満たない鎌倉時代において数えで90歳ですよ。驚異的な長寿ですけど、それでも90歳です。

そう考えますと、親鸞さんも見たことがない領域に、ほとんどの人が到達してしまう、そんな時代ということですよ。やっぱり、嬉しいというよりは、不安です。

今日一日を生き切ること。その積み重なりが人生であること

もちろんこれまでも、100歳を超えて生きる人はいました。
でもそれは、めったにないことでしたから、おめでたいことでしたし、そう言う意味では、《長寿者》に対する接し方、あるいは《長寿者》として生きる振る舞い方の「フォーマット」のようなものはあったわけです。

しかしそれは、100歳生きるという人が珍しいから可能なのであって、それが当たり前となった場合、そのフォーマットは有効ではなくなるのではないか、……先生は以前からそんなことも言っておられたのですが、今回のご本を製作するにあたり、そのあたりのお話をじっくりお伺いする中で、先生がお感じになっている危機感というものが、ジワジワと迫ってくるような気がしました。

私は40代半ばですが、「これは本当にちゃんと考えていかないとまずい問題だ」と実感しました。本当にそういう時代に、自分が生きているということを、ようやく自覚したのです。

そうなってくると、不安が先に立ちます。
どうしよう、どうしたらいいんだろう、と。

しかし、そこで先生は穏やかにおっしゃいます。

「変化し続ける『生』を生きるということだよね。今日一日を生き切る。その積み重なりが人生になる。 そういうことが、ますます大切になってきたんじゃないかと思うよ」

先生がずっとおっしゃってきたことです。
確かにそうかもしれません。人生の長さ、短さは「結果」なんですよね。

「それから、半分くらいの段階で、例えば50歳、60歳でもう50年、40年をどう生きるか、考える時を持った方がいい。『余生』というような長さじゃないでしょう。昔の人の寿命を考えたら、もう一度生きるようなものだよね。その点が、これまでの人類とは決定的に違う点だと思う」

な、なるほど…。

「こころと体、両方だよね。どんなに健康な人でも、どこかしら不具合が出るだろうけど、それでも、工夫して整えて生きていく。病気になっても、『治ったその先』があるんだから。お医者さんに頼るだけじゃなく、自分で自分の整え方を工夫しないとね」

そんなお話から、本書の企画は立ち上がりました。

あまり頭でっかちになるよりも、まずは、一日を生き切るということが大切、という先生のお考えを基本として、先生が「実際やってきたこと」、「今実践していること」を中心に、先生お勧めの「こころと体のコンディションを整えるための工夫」をたくさん掲載しています。

目標は「どんな時も自分らしく生きられるように」でしょうか。
ぜひ、お手に取ってみてください!

最後になりますが、五木先生、そしていつも共に歩んでくださるN編集長様、今回もありがとうございました!
引き続きよろしくお願い申し上げます!

(むとう)

仏像ブームを牽引した仏像ガールさんの処女作、約10年の時を越えて、再誕!『仏像の本<手のひら版>』西山厚監修・廣瀬郁実著(山と溪谷社)

2008年。「仏像ブーム」のなかで

フリーになる前に勤めていた会社で作った最も思い入れのある本に、『感じる・調べる・もっと近づく 仏像の本』という本があります。

物心ついて以来ずっと仏像ファンだった私は、どうにか仏像の本を編集したいとずっと考えていましたが、なかなか新しい切り口に出会えずにいました。
……しかし、ある時。

ネットで、『仏像ガール』さんが運営している素晴らしいサイトに出会い、その存在を知りました。彼女は、「仏像は、まず感じることが大切」と言い、シンプルな言葉で仏像の素晴らしさをより多くの人に知ってもらおうと活動していたのです。
私は珍しく即座にメールを送りました。ぜひお会いしたい、と。

そして、仏像ガールさんは、私の(あつ苦しい)思いを、あたたかく受けとめてくださいました。そうして出来上がったのが『感じる・調べる・もっと近づく 仏像の本』だったのです。

2007年から2008年というのは、「仏像ブーム」にわいた年でした。
そんな時代に呼ばれて登場したのが「仏像ガール」さんという様相で、まさにあのブームをけん引されていたと思います。

おかげさまで仏像ガールさんの大活躍により、本は大ヒット。私も、大好きな仏像の本を編集することができ、なおかつたくさんの方に手に取っていただけるという、この上ない幸福感に浸りました。

やせ我慢、そして独り立ちの時を越えて

そして月日が経ち。

私は会社を辞め、フリーランスで仕事をしていますが、古巣のお仕事はこれまでしてきませんでした。
一番の理由は……「もし古巣のお仕事をやるなら、やめないほうがよかった、ということだ」と思っていたからです。
だから、私は苦しいけれどもやせ我慢をして、ほかの出版社のお仕事をさせていただけるように頑張りました。そして、大先輩Hさんのご紹介で、P社のN編集長との出会いをいただき、それをきっかけにどうにかお仕事をいただけるようになりました。

たいして力がないこともわかっていたので、「とにかく全力でやる」と決めました。
調べるならとことん調べる。確認するならとことん確認する。思いつくことは全部やって先生とご相談する…。
何より、「心を込める」ことだけは忘れないようにしよう、と思ったんです。
真心を込めたら、それは著者の先生にも、編集長にも、そして読者にも、きっとちゃんと伝わるはずだ。私はそう信じていました。楽天家なのかもしれませんん。

でも、結果それがよかった。

もちろん最初は失敗ばかりでしたが、真心をしっかりと受け止めてくださる編集長、著者の先生に、ちゃんと出会えました。本当に私はラッキーだったと思います。

10年前の自分と出会うような時

そんな中、私にとって恩人でもある元上司のK編集長から、「仏像の本を作り直したい、ついてはムトウにお願いしたい」という、嬉しい連絡をいただきました。

K編集長は、長らく書籍編集の現場から離れて、八面六臂の活躍をされていましたが、書籍に戻ってきた、というではありませんか。
そもそも、この本もKさんの後押しがあって作ることができた一冊です。
やせ我慢も何も、「ぜひやらせてください!」という返事以外考えられませんでした。

そして、Kさんは、この本をつくった時のメンバー全員に声をかけてくださいました。

仏像ガールこと廣瀬郁実さん、監修者の西山厚先生はもちろんのこと、カバーデザインとイラストを担当してくださったかしわらあきおさんも。
まさにあの時のまま、「仏像の本」チームが再結成されたのです!!

そして、嬉々として再編集作業に入ったのですが…

なんというか、もう。

あの時の自分が、そこにいるって感じなんですよね。
「ああ、ここで時間切れ。力尽きたな」
「なんでこんな不思議なことした?私w」
そんな感じです。

仏像ガールさんや、Kさんとのやり取りも、時の流れをほとんど感じない。10年前の自分に戻ったような、いや、今の自分と昔の自分が重なって存在しているような不思議な感覚でした。

でも、あの頃の自分よりは、だいぶマシになったなあ。
そんなふうに思えたことは、自己満足ですが、ちょっと嬉しかった。
こんなことは、なかなかない経験だったように思います。そういう意味でも、本当に貴重な時間でした。

「仏像と出会う」ことをサポートしたい、という願い

そうして、いよいよ発売日がやってまいりました!

Amazonさんでは、明日(3/5)発売。
リアル書店さんでも今週中には並び始めると思います。

前作よりもだいぶ小さく、持ち歩きやすいようにと、ハンディなサイズになりました。
もちろん、中身の濃度はそのままですよ!
「仏教用語がわからなくても、調べやすいように」と、工夫した構成は変わりません。

郁実さんの優しく語り掛ける言葉、かしわらさんのポップでかわいいイラスト。そしてご紹介する仏像は、郁実さんが大好きなあったかくて素晴らしい仏像ばかりです。一冊持っていれば、お寺巡りも、きっともっともっと楽しくなると思います!

本書は、「超入門書」です。

「まず、知識より何より、『仏像と出会う』という体験をしてほしい」

郁実さんも、監修の西山先生も、いつもそうおっしゃいます。
その体験さえあれば、心も体も動くでしょう。もっと知りたかったら、本を探すでしょうし、もっと会いたかったら何度も足を運んでしまうでしょう。

そんな体験を、読者の方一人一人にしていただけたら、本書に込められたお二方の、そして不肖ムトウの願いは、成就するのです。

今回も不首尾はあるかもしれませんが(すみません;;)、とにかく全力で真心を込めました。ぜひ、お手に取ってみてくださいね!

また、最後になりますが、今回もたくさんのお寺、博物館の皆様に大変お世話になりました。お電話して、皆様の優しいお言葉に何度となく癒されました。本当にありがとうございました。

そして、廣瀬郁実さん、監修者の西山厚先生、デザイン・イラストのかしわらあきおさん、そして、K編集長。改めて御礼申し上げます。ぜひまた、お仕事ご一緒できたらと思っております!

(むとう)

累計58万部の大好評シリーズ、記念すべき第10巻発売。そして早くも重版決定!『本所おけら長屋(十)』/畠山健二著

編集のお手伝いをさせていただいている『本所おけら長屋』シリーズ、第10巻発売。いよいよ大台に突入しました~~!!
発売日は、昨日。バタバタしておりまして、ご紹介が遅くなってしましましたが…

なんと今日。

PHPの担当編集者・Aさんから、「発売日2日目にして、重版決まりましたよ~~!と、めちゃくちゃ嬉しいお知らせが~!

ぎゃ~~!!
素晴らしい初速~~~!!!

Amazonでのランキングもいい感じで、本シリーズの読者の皆さんの「待ってました!」という掛け声が聞こえてくるような気がします。

さて、そしてその記念すべき10巻目ですが。

今回も、めっちゃくちゃ面白いですよ~~!!
安心して、期待してください!

第10巻のテーマは「男の友情」。

いろんな形の「男の友情」が、笑いと涙に彩られて、また何ともいい調和を生み出しています。

第一話「さかいめ」
おけら長屋に新入りが登場。小さいながらもお店の若旦那のくせに、不良を気取る弥太郎。商いの基本を学ぶためにと、ぼて振り八百屋の金太の手伝いを始めますが、金太を騙して売り上げをくすね…

第二話「あかぎれ」
旗本屋敷に通い奉公するお福が、ある日助けた富山の薬売りの和助。年に二回会えるだけでいい、何の約束もしないで…というお福さん。なんともしっとりいい女です。これぞ、畠山先生流の「大人の恋愛」!

第三話「あおおに」
人付き合いの下手な青年・喜之助と、折り合いの悪い継母のいる家で、なんとなく居場所のない少年・長太郎。長太郎が病弱な弟のために動き出そうとするとき、年を越えて芽生える友情とは……

第四話「もりそば」
異常なほど恋愛体質な研ぎ屋の半次。お美代が自分に一目ぼれしたと思いこみ、自分も惚れてるから夫婦になろうと告白するため、万松にそそのかされて大食い大会に出場するが……

第五話「おくりび」
江戸っ子も憧れる「火消しの中の火消し」松五郎。いい男で、気風がよくて鯔背でまさに「完璧な江戸っ子」。しかし、実は、人には絶対に言えない秘密があって…

今回も、色とりどり揃いました!

人によって、またお好きな物語は違うだろうと思いますが、個人的には、第三話「あおおに」と、第5話「おくりび」が特に堪らなかったです。

「あおおに」はとにかく長太郎と、清一郎という兄弟が健気で……
二人は異母兄弟なのですが、とにかくお互いを思い合っているのです。
そして、人との付き合いができない喜之助にも、口やかましいけど弟思いのお兄さんがいます。この二組の兄弟がもう、なんともいいのです。

そして「おくりび」は、いやあ、もうこれこそ「おけら長屋」の真骨頂!
本当にこの人たちときたら、なんて優しいんだろう。
――ラストシーンでは、そんな思いで胸がいっぱいになって、目頭熱く…

そんなわけで、ぜひ皆様。
お手に取ってみてくださいね~!

(むとう)