フランスに渡った仏像たち(ギメ美術館@パリ)~その四~

パンテオン・ブディック(仏教諸尊ギャラリー)へ
本館を出ると、歩いて5分ほどのところに日本の宗教美術を終結させた別館「パンテオン・ブディック」はあります。
paris-9こちらは、フランスにおける日本仏教研究の大家である、ベルナール・フランク氏の指揮により、1991年に創設されたとのこと。パンテオン・ブディックというのは日本語に訳すと「仏教諸尊ギャラリー」というそうですよ。

本館の方にも、あれだけ充実した仏像があったというのに、まだこっちに本体があるっていうんですから、驚いちゃいますよ。
しかも、こちらには日本庭園や、お茶室などもしつらえてあって、さすがヨーロッパにおける日本趣味の中心地・パリならではです。

特別展「お札」もすごかった

パンテオン・ブディックでは、特別展「お札」開催中でした。渋すぎる。

パンテオン・ブディックでは、特別展「お札」開催中でした。渋すぎる。

さて、ではその特別展も拝見しましょうか。

さすがの展示!まずお像が置かれていて、それに関連するお札を展示してます。

さすがの展示!
まずお像が置かれていて、それに関連するお札を展示してます。

規模としてはさほど大きな規模ではありませんが、この企画展を考えることができるという部分で、収集の層の厚さを感じます。

たとえば、写真左はちょっと定かじゃないのですが^^;、写真中央は、「聖徳太子」に絡んだお札、写真右は、元三大師絡みのお札を展示してます。

こんなに、突っ込んだ展示に、日本以外で出会うなんて思ってもみませんでした。ここの学芸員のどなたかが、お札を研究対象にされてるのかもしれませんね。この熱意はただ事じゃありません。

神仏習合モノもめちゃくちゃ充実してます
この特別展以外の場所では、江戸時代のちょっと民俗学寄りのものかなり見受けられました。
本館の日本コーナーはどちらかというと芸術的に優れたものが多かったですが、こちらはもっとコアで珍しいものや民俗学的なものが置かれているような気がします。

特に、神仏習合系のコレクションはかなりの充実っぷり。
「神仏習合」というのは、仏教の仏さんと、もともとそこにいた日本の神様(の要素)を合体してお祀りしたようなもので、日本独自のものです。

神仏習合の諸尊たち。

神仏習合の諸尊たち。

一番左は、蔵王権現(ざおうごんげん)ですね。蔵王権現は役小角が感得したという、日本オリジナルの仏さんです。
中央写真の左は馬に乗って錫杖(しゃくじょう)を持っていますね。これはおそらく、愛宕大神(あたごおおみかみ)。左のキツネに乗ってるのはたぶん秋葉権現(あきばごんげん)、かなあ^^;。
一番右の写真は、小さいお像が多分、飯綱権現(いづなごんげん)、大きいほうのお像はちょとわからない^^;。

これらのお像は、仏像、ときっぱり言い難いんです。「神」の像ともいえるし。でも、お寺にお祀りされてたことを考えたら、やっぱり仏像ともいえるんですね。

とはいえ、ちょっと前までは、日本人は神も仏もわけずにありがたくお祀りしてたので、分ける必要もないのかもしれません。

それにしても、こんなにこの手のお像がずらりと収集されてるのって、日本でも珍しいかもしれないですよ。ほんとすごいわあ。
(続く)

フランスに渡った仏像たち(ギメ美術館@パリ)~その参~

続々現れる仏像たち
中国ゾーンで早くも息切れる私。
たぶん、あのフロアにいただれよりも盛り上がって写真を撮りまくってましたが、いかんせんIphoneしかもってかなかったもんで、無理があります。
熱意があるなら、カメラ持ってきたらいいのに、と周囲の人は思っていたに違いない…。

日本ゾーンはぐるりと回って最後のエリアになります。本館の展示は日本コレクションの一部で、収蔵本体は別館「パンテオンギャラリー」にあるみたい。なので、さほど量はないだろうと思い油断してたどり着きました。

どーん!日本ゾーンに入るなりこの状態。

うわあ。すごい量の仏像が!
しかも、非常にクオリティが高いものばかりですよ!正直言って日本にあったら重要文化財だろうなあ、なんてお像も何体もありました。やばいでしょう、ほんと。こんなに揃ってますけど、ここパリですよ。日本じゃないですよ。どれだけ日本から流出しちゃったわけ!?と呆然となりました。

(右)菩薩像・10世紀末、(中央)菩薩像・10世紀、(左)観音菩薩像・12世紀。

たとえば写真の一番左のお像。900年代後半のお像だそうですが、衣紋も流れるようで美しいし、何よりいいお顔です。どっかで見たことあるなあ、と思ったら、室生寺の十一面観音菩薩像ですよ!こちらの方が面長ですが雰囲気かなり近い。年代もかなり近いので、何かしら関係のある来歴があるのかもしれません。
中央のお像も10世紀ごろのもの。体は失われていますがきらびやかでゴージャス。骨太な感じがしますね。
右のお像は12世紀藤原時代のもの。いかにも定朝様で、滋賀県あたりの天台宗のお寺でよくお目にかかる感じです。

もうどれもこれも素晴らしくて、めまいがしそうでしたが、そのなかでも、こちら!

仏陀坐像。11世紀初。

虫食いの跡が痛々しいですが、ほんと~~~に美しいお顔です!!ネームプレートには「仏陀坐像」とありましたが、仏陀、というと釈迦如来、ということになりますが、時代的に考えますと阿弥陀如来像かもしれませんね。うーん、でもお釈迦さんでもおかしくないなあ。

こんな風に、いろんな時代、いろんな様式の仏像が一堂に会してますと、自分の好みの仏像を発見しやすいですよね。

仏像は、時代によって、顔・身体の雰囲気、衣装などが違います。その時の流行や時代観みたいなものがそこには現れてくるのですが、これから仏像を観てみたい、という方にはまずその、「自分の好み」を発見してもらうといいんじゃないかなと思うのです。
その好みが、仏像を観るとっかかりになってくれると思います!

……そうこうしているうちに、時間はあっという間に過ぎていきます。
油断していると閉館しちゃう!ということで、別館へと向かいましょう。

(続く)

フランスに渡った仏像たち(ギメ美術館@パリ)~その弐

さて、そんなわけで、私は颯爽と地下鉄の乗り方をRに教えてもらい、ドキドキしながら地下鉄に乗りました。
この時のドキドキは、「あこがれのギメ美術館に行けるのドキドキ」3割、「地下鉄に一人で乗るのドキドキ」7割です。私は、一人旅をするくせに、かなりなビビりなのですよ…。心にウサギがいるのですよ…。

とはいえ、何にそんなドキドキするんだって感じで、乗り換えもあっさりすみ、あっさりギメ美術館そばの駅につきました。イエナ(léna)駅というところ。

ギメ美術館本館です。立派!

ギメ美術館は、19世紀終わりごろ、リヨンの実業家、エミール・ギメによって創設されました。
ギメは、世界の宗教博物館を造りたかったらしいのですが、特に東洋学・アジアの宗教美術に関心が深く、熱心に収集したようですね。
このギメのコレクションを中心に、同じような志を持ったさまざまなコレクターによるもの、またフランスがアジアに派遣した発掘調査隊が収集したものなどがこちらに収蔵されていきます。
そして、その後、エジプト部門の遺品をルーブルに移管した代わりに、ルーブルの東洋部門のコレクションをギメ美術館にそっくり移管、ルーブルの東洋部門を担う形になったそうなんです。
なので、ギメ美術館は国立の美術館なのですね。
ルーブルにアジアの美術品がない理由もこれでお分かりになるかと思います。そうなんですよ、こっちにあるんですよ~!意外と知らない人も多いんじゃないかな^^;。

そんなわけで、こちらでは特にアジア各地の仏教美術を、網羅的に見ることができます。特にクメール美術に関しては、ひょっとしたらカンボジアよりいい状態のものを収蔵しているかもしれません。いやはや。

チケット売り場に行くと『セット券』が売ってます。本館と別館のセット券です。ちなみに、別館では特別展「OFUDA」を開催中でした。 『お札』ですよ~~! 日本でだってなかなかできない、この渋さ。 さすがギメ美術館。半端ないです。

ちなみにこの別館は『パンテオンブティック』というところで、日本美術の収蔵されているところ。この本館から歩いて5分くらい。同じ通りにあるとのこと。では、本館の常設展を見たら、別館で『お札』展も見ることにしましょう!

さてさて。

ここの凄まじさは、ルーブルを想像していただければ、ほぼ間違いないです。あそこのエジプト美術を見るだけで、いったい何時間かかるというのでしょう。そうです、そのコンパクトバージョンだと思ってください。

インド、中国、クメール、東南アジア、日本、朝鮮半島…みたいな感じで別れていますが、そのどれもがすごいので、大変です。しかも本当にクオリティが高いので、ふお~っと叫びながら見続ける感じです。これもルーブルと同じです。魂の体力根こそぎ持ってかれるような、あれです。

まずはインドコーナーから。

踊るシバ。あまりにも有名なこのお像とか…

インドの宗教美術、やばい。素晴らしいクオリティ!!!
あんまり感動していたからか、この時撮った写真のほとんどがピンがあってなくてブレブレです。すみません。でも多分動揺してたんだと思います。シバ神は、インドの3最高神のひとりで、仏教では大自在天として登場します。

そして中国も。
わああああ、まじですごいんですけどお!!!!

10世紀ごろ(五代十国時代)。木彫・金箔・漆。

千手千眼観音菩薩立像!
興奮して、写真も撮りまくりましたよ。
素晴らしいお像です。ひょっとしたらこれだけ状態のいい中国の仏像は、本国にもほとんどないかもしれません。かの国は王朝が変わるとその前の文物を焼いてしまう文化があったりして、意外と古いものが残っていないのです。
こちらのお像は、唐の時代が終わって直後。五代十国時代のものだそうですが、どこの国のだか分りません。日本だと、平安中期くらいですね。

ふお~。やばいです。まだ入り口から50メートルくらいしか進めていません。日本部門までまだまだ先は長いのです。
(続く)