12年に一度だけ会える女神さま(井の頭弁財天)②ハッピー感が止まらない!

 

人面犬?
そんなこんなで和気藹々と行列で待ちながら、境内を眺めていますと、何やらこのお堂の境内には、ハッピー感を高めずにはいられないお像がたくさんあります。いわゆる仏像ではないですけど…
獅子吽形まずはこの獅子ですよ。なんでしょう、この見事なデフォルメ。極限までむだをなくしたこの体の表現。そして顔は……人間じゃん。これって人面犬みたいですよね。
素晴らしい尻尾表現そして、尻尾はこんな尻尾ですよ。なんだろうこのデフォルメ。かわいすぎる!
日本犬のような立尾の子たちって、なんかお尻の穴丸出しで無防備すぎて笑っちゃうんだけど、そんな感じの気持ちになります。
獅子阿形とお神楽そして、こちらが阿形のお獅子。わあ、なんかもうおっさんにしか見えない。
この写真見てると、お神楽とこのお獅子の顔があまりにも愛らしくて、ハッピー感垂れ流しですよ!

「まだ弁天様見てないけど、なんか楽しい!!」
Yさんがにこにこしながらおっしゃいます。ほんと!なんか楽しい!テンション上がります!

しかし散々笑ってしまったこのお獅子、帰宅してから調べてみたところ、実はこの手のものにしては結構古いお像で三鷹市の文化財でした。笑って済みません。

さて、私は先程から「お獅子」と読んでいて、「狛犬」と呼んでおりません。実はこれには理由がありまして、本来、狛犬というのは、犬みたいな動物で、頭部に一本の角のある神獣なのです。

ですが、鎌倉時代に有識故実などを記した書物に、「向かって右側には、口を開いている獅子、左側には口を閉じている狛犬を配す」とあり、その当時から、この両者を一セットとして「狛犬」と呼ぶようになりました。
ところが、その後、いろいろ簡略化されることが多くなり、狛犬の角がなくなり、江戸時代中期以降はついに両方とも獅子で表されることが多くなりました。

狛犬+獅子=狛犬

狛犬(角なし)+獅子=狛犬

獅子+獅子=狛犬

こんな感じ。いつの間にか狛犬いなくなっちゃったじゃん、みたいな。世の中結構いい加減にできてますよね。

ハッピー感が止まらない!!?
そんなこんなで人笑いして、目を転じると…おおおおお!これは!!!!
宇賀神さんでた~!宇賀神(うがじん)さん!!あははははは!!

いや、笑っちゃいけない。この神様はとても大切な神様なのです。
実は、今回拝観しに来た弁天さんは、「宇賀弁天」と聞いてます。宇賀弁天さんというのは何かというと、弁財天という女神さんなんですが、頭の上に宇賀神という神さまを乗っけてる、というスタイルの弁財天なのです。

この宇賀神さん、いったいどんな神様かと言いますと、その出自はよくわからない(諸説あります)のですが、ざっくりいうと穀物の神様です。体は蛇、頭が人というお姿です。
蛇というのは、水霊の象徴ですから、水に関係してる神さまともいえるんじゃないかと思います。弁天さんも水の神様ですから、天台宗の教理の中で、一緒にまつられるようになり、ついには合体パターンが誕生して信仰された、ということみたいです。

それにしても、こちらの宇賀神さん、ものすごくキュートです。まるっとしてるし。
宇賀神さん目の形がへにょんとしてて、笑いジワがあります。頬の筋肉が上に上がっていて、鼻の横にしわが入り、笑いをこらえてるような表情。
体のほうをみますと、尻尾の先がぴょんと上へ跳ね上がっていて、かわいらしいし。

なんだか見てるこちらも、含み笑いしちゃうって感じです。これだけ異形なのに、蛇におじいちゃんの合体型で不気味なはずなのに、なんか、すごい楽しくなっちゃうのが不思議です。

「なんか、なんか楽しいですね!」

私とYさんは、にっこりとほほ笑みあいました。

(続く)

12年に一度だけ会える女神さま(井の頭弁財天)①やっぱり大人気!


「秘仏」という存在

皆さん、「秘仏(ひぶつ)」という言葉はご存知でしょうか??
実は、日本ではなかなかそのお姿を見ることができない仏像、というのがありまして、それを「秘仏」と呼んでいます。

年に一回だけとか、春と秋の限られた期間だけ、とか。
普段は、奥ゆかしく扉付の厨子に収められていてます。ですのでその扉を開く、ということで、この秘仏を観られる期間のことを「秘仏ご開帳」と言います。

仏像好きとしては、この秘仏ご開帳は、ものすごく重要なファクターです。
いつそのお像に拝観できるかを毎年チェックしてます。とはいっても、どうしても見逃しがあって、「ああああ、この観音さん、次にあくのは32年後だああ!」なんてことになってしまうことも多々あります。
49年に一度とか60年に一度、なんて仏像もあって「生きてるうちにはもう会えないなあ」なんてこともよくあります。
さらにさらに。お堂に収めて以来、ご住職でさえ会えないという究極の秘仏もいます。これを「絶対秘仏」と読んだりします。有名なところでは、浅草寺のご本尊の観音像、善光寺の御本尊の阿弥陀三尊像は絶対秘仏。

さて、今回ブツタビで訪ねましたのは、12年に一度、巳年の巳の週の三日間だけ会えるおかた、井の頭公園の、「井の頭弁財天」です!!

正直言ってノーマーク!あの井の頭公園にこんな秘密が!井の頭公園内の弁天堂皆さんもよくご存じ、吉祥寺の井の頭公園です。
「住みたいまち」に必ずナンバー1とかで入ってくるあの吉祥寺。私も、お仕事ではちょいちょい訪れてきた街です。でも、埼玉の自宅からだとちょっと遠いので、用事がないとなかなか行けないエリア。
今回、この貴重な情報を教えてくださったのは、先輩フリー編集者のYさん!!
さすがの吉祥寺在住。ネットで探してもなかなか上がってこないレア情報です!

「小さなお堂ですから、あんまりみんなに知らせてしまうと、大変なことになっちゃいそう。だから大きくお知らせしなくていいと思ってるのかもしれませんね~」

とYさん。なるほどねえ。確かにそんな感じかも。
それにしても、正直言って井の頭弁天さん、盲点でした~。ノーマーク!!
弁天さんがあることはわかりますけど、「秘仏」だったなんて…!
ちょっと変な言い方ですけど、秘仏でも、文化財に指定されてるとチェックできるので、なんとなくわかるんですが、文化財になっていないお像は、なかなか情報をつかみきれないところがあります。

あ、そうだそうだ。

ちょっと誤解していただきたくないのは、文化財になっていない、ということが、イコール価値がないとかそういうことじゃないんですよ。文化財指定には調査が必要ですけど、その調査をするために秘仏を日の下にさらしてしまうことになります。仏像というのは、あくまでもお祈りするためのお像です。だから、調査のために決まりを破るというのは、それは違うでしょ、とお考えの方もいらっしゃるわけで、それはそれでなるほど、と思います。なので、一切調査をお断りされているお寺さんもいらっしゃるわけで、ひょっとしたらこちらもそんな感じなのかもしれません。逆に、お像を子々孫々まで伝えていきたい、と保存のことなども考えて調査を了承したり依頼される場合も多々あります。今はこちらの選択をされるお寺さんのほうがですが、どちらの場合も「大切にしたい」という目的は同じだと思います。

ちなみに、このお像に関する情報は本当に少ないです。
お寺のHPには「最澄作と伝わるお像」と書かれているだけです。最澄さんが作ったとなると、平安初期にまでさかのぼってしまいますが、さて、どうなんでしょうか。ワクワクしてきましたよ!
弁天堂入口それでも、やっぱり知る人ぞ知るなんですねえ。
私たちがお堂のあたりについたのは、12時ごろ。かなりの行列が!入口付近の張り紙で、待ち時間45分、と書かれてます。

いやいや、そんな。
待ちますよ~全然問題ないっすよ!
弁天堂とお神楽

お堂からは、獅子舞のお神楽がずっと聞こえています。途切れることのない笛と太鼓の音が、あったかいこの井の頭公園の空気にものすごく合う!
ならんでる人たちもみんな笑顔。和気藹々と弁天さんに会えるその瞬間を待ちます。

井の頭弁財天
http://www.inokashirabenzaiten.com/welcome.htm

美術手帖の特集が「円空」ですよ!?

さて、前回に引き続き、お勧め本のご紹介です。
本というか、今回は雑誌ですね!

なんと、美術手帖さんですよ~!
20代のころ、現代美術が好きでよく買っていた美術雑誌ですが、なんと、2月号(ちょっと遅いですけども^^;)の第一特集が円空さんです!

何しろ、東京国立博物館では現在円空展を絶賛公開中ですから、紹介するなら今っちゃ今なんですけども。
あの美術手帖さんが、円空さんかあ~~。なんだか新鮮です。
だって、1月号の特集は会田誠さんですよ!ンで、3月号はフランシス・ベーコンだし!
そういう雑誌で「円空」という人の作品として円空仏を紹介している、というのが何か非常に面白いのです。

さらにもう一ひねりなのが、漫画家の井上雄彦さんと一緒に円空仏を見に行くという特集があったり、彫刻家棚田康司さんが、円空仏を研究している職人さんと一緒に円空仏を掘ってみる、という企画があったりしてね。
さらに、円空仏の基本データもちゃんと掲載してくれてますし、みうらじゅんさんががっちり寄稿もされていまして、とても充実感のある内容です。

さらに偶然に、と言っていいのかわかりませんが、
第二特集に「白隠展」が入ってます。
なんだか二度おいしい、みたいな感じですよお。

それにしても、久しぶりに美術手帖を買いました。
「雑誌」らしい頑張りが紙面を生き生きとさせている気がしていて、同業者の端くれとして、すごく嬉しくなっちゃいました。面白がったり、これいいよね?と読者に提案を投げかけるような部分。そういう部分があってこその出版ですよね。この美術手帖にはそんな提案がたくさんあるような気がしたのです。

今月中に、円空展は必ず見に行くつもりですが、こちらを読んで、とてもさわやかな気持ちをいただきました。ますます楽しみです!