仏頭を作ってみたい

仏像を追いかけてウン十年…。物心ついて以来ずっと追いかけ続けてきましたが、あくまでも「あこがれの人を見る」立場というか、スタイル(それが普通だけど)。あくまでもウォッチャーであったわけですね。
そんなスタイルから、一歩踏み出してみよう、ということになりました。

というのも、何事も弾み、というものがございますね。
日頃お世話になっている奈良博・N先生を囲む飲み会で、新進気鋭の仏師の方とたまたま同席したのですね。で、たまたまそしてその方が、仏頭づくりの体験講座@奈良まほろば館を開催されるというではありませんか!

……こういう御縁はどんどんノル性質(たち)です。
なかなかないですよね!仏師の方と同席するなんて。しかも体験講座が近々あるなんて。これは何かの思し召し、ということで、その場でさっそく申し込みまして、昨日、行ってきました!

雑誌でも特集されてたり!これからさらに要チェックなおかた。

新進気鋭の仏師・Yさんは、彫刻家としても最近大注目の作家さんです。

カッコいいので、女性誌からも引っ張りだこだそうですよ。これをいうとYさんは複雑な顔をされますけど、まあ事実なんだからしょうがない(笑)。

物腰柔らかでユーモアたっぷりでサービス精神も旺盛。講座も、初めは私はもちろんみなさん緊張していましたが、Yさんの語り口で、すっかり和やかなムードになりました。

仏頭づくり、といっても木を彫ったりするわけではなく、紙粘土を使った方法。仏像的な言い方をすれば「塑像」ですね。塑像の簡単バージョンを体験する、とも言えますけど、Yさんがおっしゃるには、これは美術分野の一般的な方法。なので、今回は、「仏像の作り方を体験する」、というよりも「仏像という形をそれぞれが作ってみる」という体験だそうです。

「自分で作ろうとすると、観ているのとは違って、細部までじっくり見る必要があるし、自分の手で触って形を作りますから、また違った視点で仏像が見えてくるようになりますよ」とYさん。なので、お手本はありますが、みなさんの思うように作ってください、とのお言葉。

かっこよすぎる見本に、絶対無理!とビビる私。

それを聞いて、胸をなでおろしました。
だって、目の前にある見本が「旧山田寺仏頭」なんですもの!ハードル高すぎです!

でも、こういう立体の見本がないと、あまりにも見当がつかないので、ありがたいですよね。
このお像には絶対に及ばないけど、とりあえず目標ということで。

さあ、前置き長いですけど、いざ、スタート!
材料は、木組み(新聞紙、荒縄、木。すでに作っておいてくださってました)、紙粘土、水。
シンプルすぎて、逃げ場がないですよ!このセッティング^^;。
でも、きおくれせず、とにかく始めましょう。
木組みに、まず、紙粘土を良くすりこむようにくっつけていきます。最初が肝心だそうですよ、しっかりしっかりつけます。
そして、そのあとは、もう各自自由に!

「面白いもので、みなさん、見本に近づけようとされていても、結局ご自分の顔に似てくるんですよ」(Yさん)

むむ。じゃあ、できるだけ笑顔の仏像にしたいぞ!と意気込む私。
ここまで粘土を盛るのに一時間かかりました。

なんか、埴輪っぽいな。

お分かりと思いますが、すでに見本への道から大きく外れております。ふっくら優しい顔にしたいのですが、どうしても細おもてになってしまいます。私も相当なふっくら丸顔なのに。おかしいなあ。Yさんのアドバイスによると、メリハリがないので、余計にそう感じるとのこと。
うーん。どうやってもふっくらしませんよ!しかも頭の上の肉髻(にっけい)部分が前過ぎてなんかへん。 こういう恐竜いましたよね…

そんなこんな、ここでタイムアウト。講座の時間内(二時間)ではなかなかできないです~。
Yさんがきれいに箱詰めして下さり、お持ち帰り。
あとは家で仕上げ作業です。

そして完成!
結局全然ふっくらしませんでしたが、結果的にかなり好きな顔になって、自己満足!にっこり笑ってくれてよかった。
しかし、見本には全く遠いところに着地してしまいました。とほほ。

それにしても、いい体験をさせていただきました!
Yさんのおっしゃる通り、今までとは違う視点をいただいたような気がしています。
#そして、不届きですけど、また作りたいと思っちゃいました!

Yさん、まほろば館Bさん。ありがとうございました!!

奈良まほろば館
http://www.mahoroba-kan.jp/
:銀座線・半蔵門線三越駅前から徒歩5分

 

蔵王権現像@金峯山寺(奈良県吉野)

奈良県の山奥、吉野は古い聖地です。 修験道の祖・役小角(えんのおづぬ)が修行した場所。大海人皇子が退避した場所。後鳥羽上皇が南朝の朝廷を築いた場所。 その心臓部ともいえるのが、この金峯山寺です。

金峯山寺は、とても大きな蔵王権現さんがご本尊。しかも同じ蔵王権現さんが三体並び、三尊形式をとっています。

蔵王権現というのは、日本で発見?(発明?)されたオリジナルの仏さん。 役小角が修行満行のさいに感得した仏さんだそうで。 なので、仏教の仏さんというよりは山の神様に近い仏さんなのですね。 どんな格好しているかというと…. ちょっと真似してみますね。 こんなかんじです。
よいしょっと。

蔵王権現のポーズを真似してみました。

右足を高く上げていて、右手を振りあげます。 そして左手は腰のあたりで「刀印」を結んでます。 意外とバランスとりずらいポーズです。
金峯山寺の蔵王権現像は、美しくて大きくて勇ましくてカッコいいのですが、なにぶん写真は掲載できません。なのでイラストで描いてみました。

イラストで描いてみたら、全然こわくならなかった…。筆力の限界。

口元はかっと開けていて牙がのぞき、 肌は青い色で、髪は怒髪。右手にはさんこしょ、左手は 腰にあてて刀印を結んでいます。
実際の蔵王権現像は、もっと荒々しくおおらかでドドーンとしてますよ。実際問題、めちゃくちゃ大きいし(像高7メートルほど)。…でも何となく優しさというか、かわいらしさすら感じちゃうんですね。すごい怖い顔なのに。なぜでしょう。

私の勝手な空想ですが、蔵王権現さんは、自然や山そのものだからじゃないかな、と思うのです。厳しいけど、優しい。怖いけどほほ笑みを与えてくれる。そんな存在。 私はこちらの権現さんにお参りして、なんだかにこにこして元気になってしまいました。

たとえるなら…

いい天気の日。山登りをして。 ようやく山頂についてみたら、空気はおいしいし見晴らしは最高だし、嬉しくて楽しくて、ついついヤッホーと声出してみちゃった、みたいなそんなかんじです(わかりにくいか;;)。

通常は秘仏ですがなんと今年は特別開帳が行われてます! 2012年10月1日から12月9日までです。 ぜひ会いに行ってください!元気になっちゃいますよ~♪

金峯山寺
http://www.kinpusen.or.jp/index.htm
【ご本尊特別公開】2012年10月1日~12月9日

 

おおらかな関東の薬師さん(武蔵国分寺@国分寺市)

平日に秘仏に会える、このぜいたくさ!
東京では、「国分寺」という名前は地名や駅名として有名です。でも、この名前の大本になったお寺が今もあるということは意外と知られていないかもしれません。そして、平安後期の薬師如来さんが今もいらっしゃることも知る人ぞ知る、ではないでしょうか。
私も、その存在はずっと聞いてはいたものの、なかなか訪れることができずにいました。というのも、年に一度、10月10日の一日(11時から16時まで)だけしか、御開帳しないのです!平日だろうが祝日だろうがお構い(?)なし。これは、勤め人にはなかなか厳しい条件ですよね。それから、微妙に近いのがよくない。いつか行けるなあ、なんて先延ばしにしがちです。

しかし、今年こそどうにかお会いしたい、と腹を決めたんです。
なんと言っても、西国分寺から歩いていける距離ですよ。仕事の合間にぶち込んじゃえ!…ということで打ち合わせの合間に、いそいそと中央線に乗りこみました。

武蔵国分寺薬師堂。

西国分寺駅から歩いて15分強。
本当は、史跡国分寺跡や、公園、お鷹の道、湧水なんかもありますし、ゆっくりブラブラと観て回りたいところですが、今日は何と言っても時間がないのです。特に同行者のYさんは、もう一度S社に出向かないといけないという制約が…;。残念ですが、とにかく早歩きで国分寺を目指します。大きな道路からこんもりとした緑が見え、そこから市街地へ入り、しばらくすると国分寺が見えてきます。現在の国分寺は真言宗ですが、ご存じのとおり創建は奈良時代の聖武天皇までさかのぼります。
741年、国家の安泰と人々の安寧を願った聖武天皇が発願し、全国約60か所の国分寺と国分尼寺を建造するよう号令(詔)しました。武蔵国分寺はその詔から20年余り後に伽藍が完成したそうですが、それから500年ほどたった1333年、戦火に会い消失してしまったため、現在のお寺は江戸時代以降の建物だそうです。

いよいよ、秘仏にご対面
さて、薬師さんは、本堂よりちょっと手前の階段の先にある、薬師堂にいらっしゃいます。薬師堂の前は、ちょっとした売店も出ていて、ちょっとだけ賑わってます。平日とはいえさすが年に一度の御開帳日です。

お堂を入ると、ちょっと簡素な印象。でも目が慣れてきてよく見てみると、外陣天井には大きな龍の図があり、内陣天井の格子天井には花草図が描かれていて、なんだかじわじわとステキです。さらに、内陣にはいってお参りすることができます!やったー!

そして、念願の薬師如来さんとのご対面!

薬師如来さん。全体的に黒ずんでいて、お顔がちょっとわかりにくい。でも、おおらかな雰囲気が全体から漂ってくるような。

こちらが念願の薬師如来さんです。正直言って、ものすごくうまいお像ではないですけど、何とも言えない優しい感じ、おおらかな感じがします。平安末期とのことですが、奈良時代のおおらかな雰囲気を持ったお像だなあと思いました。時代、というよりひょっとしたら武蔵の国のおおらかさなんだ、といったほうがいいのかかもしれませんね。地方仏の素敵さ、ともいえるかも。

向かって左が日光さん、右が月光さん。

そして、個人的にかなりぐっときましたのは、こちらの両脇侍。室町時代のお像ですが、なるほど~という端正なお顔立ちながら、なんかゆったりしてていいかんじ!真ん中に薬師さんを挟んで、向かって左が日光菩薩、右が月光菩薩。

なんでしょう、この優しい雰囲気!
よく見たら、うっすらとほほ笑んでらっしゃいます。そうかあ。優しいと思うはずですよね。

薬師三尊の周りには十二神将が。江戸時代のものだそう。

優しいお顔の菩薩さんの周りには、十二神将さんがぐっとお守りしています。いいですね、迫力があります!

関東にもステキな仏像がまだまだたくさんいらっしゃいますね~。
短い時間でしたが、年の一度の邂逅の時を楽しむことができて、とても幸せな気持ちになりました。お近くの方はぜひ足を運んでくださいね。次回は来年の10月10日ですよ!(ちょっと先だけど!)

武蔵国分寺
所在地:東京都国分寺市西元町1-13-16
アクセス:JR西国分寺駅から徒歩17分ほど。
開帳日:毎年10月10日(*念のため、開帳日時は行く前に確認してくださいね~!)。