かつて担当させていただいた、『感じる・調べる・もっと近づく 仏像の本』(仏像ガール著)で、監修をしていただいた西山厚先生。
私にとっては、恐れ多くも「心の師匠」であり、名著『仏教発見』(講談社新書)以降、単独のご著書を待望する声が巷に溢れておりましたが、ようやく出版されました~!まさに待望の一冊です!!
なんとありがたいことに、先生が送ってくださったのです。本当に嬉しいです!!
『仏教発見』でも、ぽろぽろ泣いてしまいましたが(正直言うと号泣しました)、今回もまたたくさん泣いてしまいました。予想した通りでした。これは電車の中では読めません。
先生の文章は、非常に明るくわかりやすく、仏教のことをよくわかっていない私のような素人にもよくわかるように、優しく語り掛けてくださいます。そして、その優しい言葉の重なりが、激しく心を揺さぶるのです。
私は以前、少しお酒をいただいた勢いもあり、生意気にも先生にこんな風に申し上げたことがります。
「先生の文章を拝読しておりますと、聖武天皇が、光明皇后が、生きてそこから立ち上がるんです。そんな言葉を紡げるかたなんてほかにいません!」
正確にいうと、「文章」だけではありませんね、「お話」からも、というべきでした。先生は語りの名手としてもそれはもう高名でらっしゃいますから。
先生の言葉によって、歴史上の人物が、まるで今ここにいて、優しく微笑んでいるような気がしてくるんです。そんな思いを抱く「言葉」に出会うことは、私にとって初めてでした。
そして先生の言葉は、弱き者へその視線が向かったときに、さらに優しく優しくなります。幼稚園の子どもたち、小学生の子どもたち、障害のある人たち……。
そして、愛する我が子を一歳になる前に亡くしてしまい、悲しみに狂いそうになる、聖武天皇と光明皇后にも……。
歴史上の偉人にも今を生きる子どもたちにも、時空を超えて、等しく「尊いやさしさの種」のようなものを見つけられ、それをさっと取り出して見せてくださるんです。それこそが仏教にいう「仏性」なのかもしれません。
今回のご本は、毎日新聞の「奈良の風に吹かれて」という連載を一冊にまとめられたものだそうです。タイトルから連想される通り「奈良」に関するお話をベースに、仏教、歴史上の人物に関するものもあれば、先生が旅をされるというお話もあります。一篇はとてもコンパクトなエッセイでお話は全部で118篇。
随所で胸が熱くなったり、涙がにじんだりしてしまいますが、そのたびに「人間っていいなあ」「生きていくっていいなあ」という気持ちになるのではないかと思います。まさに先生のやさしさと愛に溢れた一冊です!ぜひお手に取ってみてください!!
(むとう)