仏像holicになった理由ーブツタビのルーツを追え!ー

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あなたが一番好きな仏像は?
仏像好きなんですよ~、というと、一番好きな仏像は?と聞かれることが多いです。この質問が一番困るんですよね!、って仏像好きな人はみんな言うと思うんですが。 数え出したらきりがないですものね~~。
#でもこういう話題は多分すべての仏像好きは好きだと思う。「困る~」とか言いながら頬はゆるんで目じりは下がっているはず(笑)。

私も、なかなか上げずらいのですが、うんうん唸りながら、…渡岸寺の十一面観音(滋賀県)さんをあげます…
渡岸寺の十一面観音さんは、白州正子さんはじめ多くの文化人が褒め称えている、あまりにも有名な仏像。まさに問答無用のお像です。
私がこのお像に初めて出会ったのは20歳の夏。それまでも、何冊かの本で存在だけは知ってたんですけど、みうらじゅんさん・いとうさいこうさんの名著『秘見仏記』を読んで、こりゃあ絶対行かなくちゃ!と思ったんですよね。

「見仏記」に続く第二弾。私にとってはシリーズの中で最も大切な一冊。

んで、実際見て。その美しかったこと!!!
私は、今もその時のブツトモ(仏友)Mと交わした会話まで記憶しています。自分がノートに興奮して書きつづった内容すらなんとなく覚えてるくらい。とにかく、あまりにも強烈に美しい存在と出会ってしまったのです。

「ブツタビ」のルーツ
この旅こそまさに、私にとって「ブツタビ」のルーツなんじゃないかと思います。それまでも展覧会があったら行くし、近所の仏像はよく見に行ってましたが、「仏像を見るために遠くまで旅をするという行動=ブツタビ」を始めてやったエポックメイキング的な出来事でした。その時に出会った十一面観音さんに会いたくて、その後、2年に一度はこのお像を訪ねて滋賀県高月町を訪れるようになりました。そういう意味でものすごく私にとって大切な仏像です。

…いや、まてよ。
ブツタビのルーツといえば、…最も影響を受けたという意味では小学三年の時に出会った、伊豆の願成就院か?!
そうだ、そうです。ルーツといえばこれかもしれません。

実は、私の父親の一族は箱根から伊豆半島にかけて分布してまして、伊豆の真ん中へんには一番お世話になった伯母の家があります。
夏になるとその伯母の家で夏休みを過ごしていたのですが、ある日、私が仏像好きだと知った伯母が連れて行ってくれたのがこの願成就院なんです。伯母の家から車で20分くらい。源頼朝・北条政子ゆかりのお寺です。

とはいっても、こじんまりとした街のお寺といった雰囲気。建物は鉄筋コンクリート製。重たい扉を開けて薄暗い庫内に入った時、その仏像たちの姿が浮かび上がりました。

「うわ!」
子ども心に「息をのんだ」のを覚えています。めちゃくちゃかっこいい仏像が所狭しと並んでいたのです。

当時は知る由もありませんでしたが、私が度肝を抜かれるのも当然といえば当然。
こちらのお像は、あの運慶が造像した仏像たちだったのです。
運慶さんは、今から800年ほど前(鎌倉時代)の仏師。一言で言うと「天才」ですね。奈良仏師・慶派の棟梁の息子として生まれ、東大寺・興福寺などでも活躍した人です。

当時、仏像の知識なんて全然なかったですけど、このお像たちがずば抜けてかっこいいことはすぐにわかりました。理屈じゃないですね。
それ以来、夏休みに伯母の家を訪ねては、伯母にねだってこのお寺に連れて行ってもらいました。自力ではありませんが、これもブツタビのルーツといってもいいかもしれません。

木や空や海が美しいように、美しい
子どもの私にとって、仏像はどんな存在だったんでしょうか。
後付け理由みたいになってしまいますが、当時の私からしたらそれは美しい木や空や海と同じような存在だったと思います。

木の名前も知らないし、海も空も名前はありません。でも、美しい。それだけは変わらぬ事実としてそこにあります。本当にすごい仏像は、たぶんその領域にあるものなんじゃないかな、と思うんです。だから理屈じゃなく反応した、と。

すごい仏像には、とても人の手で作られたとは思えないような「気配」があります。ある仏師のかたが『木の中にある仏さんをほりおこすんです。木の中にもう仏さんはいらっしゃるから』と言っておられましたが、なるほど、そういうことかと思います。

仏像というのは、世界の真理を表す仏さんの姿を現したものですから、自然が美しいように美しいんでしょう。…特に私は日本のアニミズム的な世界観の中から仏像を見ていると思います。ですからなおのこと、木や山、空のように感じるのかもしれません。

(続く)

 

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