【山梨旅】武田氏ゆかりのお寺で仏像を観る①大善寺さんの「葡萄薬師」

「葡萄薬師」で有名な名刹・大善寺からスタート!
中村彰彦先生の連載を担当させていただくようになって、こうなったらどうあっても一度現地を訪れないと始まらない、…と思うようになり、先週末その願いをかなえることができました。

山梨を旅すると決めたとき、まず頭に浮かんだのが、「大善寺」さんでした。
というのも、以前私が編集させていただいた本『感じる・調べる・もっと近づく 仏像の本』(西山厚監修:仏像ガール著)の薬師如来をご紹介するページで、大善寺さんの有名なお像のお写真を貸していただいたんですね。その時に「かわいらしい薬師三尊さんだなあ」と感動した、という記憶があったからなのでした。

大善寺

また、中村先生の「疾風に折れぬ花あり」にも「大善寺」は登場します(2014年3月号)。
織田軍に追い立てられた武田勝頼が、愚かにも重臣小山田信茂の勧めを受け、本拠地の新府城を捨てて、信茂の本拠地・都留郡(つるごおり)を目指して脱出したのですが、その途上でこの大善寺に一泊しているのです。

この大善寺は、創建は9世紀ごろと伝わりますが、鎌倉時代のころから武田家と縁の深いお寺です。もともと、郡内(ぐんない)と呼ばれた都留郡と、国中(くになか)と呼ばれた甲州盆地とを結ぶ道の要衝にあり、軍事的にも重要な場所でした。

なので、武田信玄の叔父・信友はこの大善寺の境内を削って館を構えたようですし、信玄自身も、台風で被害を受けた大善寺の修繕を外護し、寺領も安堵しました。

また、大善寺には「理慶尼(りけいに)」という尼さんがいました。この人は信友の孫で、信玄からみると、従弟の娘にあたる人です。一説には勝頼の乳母も務めていたことがあったそうで、勝頼が逃げてきたときに、本堂にかくまった、という伝承があります。この人が書いた『理慶尼記』は別名「武田滅亡記」と呼ばれるもので、東寺の様子を知らせてくれる貴重な資料として、大善寺に今も所蔵されています。

仏像だけじゃなく、建物もすごい!
…ということで、武田家ともとてもご縁の深いお寺さんですから、歴史好きの皆さんにもたまらないと思いますが、仏像好きにもたまらないお寺さんです。

こちらでは何と言っても有名なのは、ご本尊の薬師三尊像。ほぼ創設当時のお像で、平安時代初期までさかのぼる名像(国指定重要文化財)です。
また、このお像のとてもユニークな点は、お薬師さんが葡萄の房を持っているということ。だから「葡萄薬師」と呼ばれるんですね。葡萄栽培とワイン醸造で高名な、勝沼町にある名刹にふさわしいお姿ですね!
大善寺どっしりとした山門をくぐり階段を上ると、本堂(薬師堂)が見えてきます。この本堂は鎌倉時代の建築で国宝。のびやかで気品あふれる佇まいが素晴らしい!!

大善寺

お寺のかたから後でうかがったところによりますと、東日本大震災でも被害がなく、また今年の大雪の際にも、こちらの本堂だけはびくともしなかったそうです。鎌倉時代の宮大工さんの腕って、本当にすごいですよね。

悲報!!葡萄薬師さんがいつの間にか「秘仏」になってた!!
さて、早速本堂に入りますと…

あれ?
嫌な予感…

なんか、本堂の中のお厨子に写真が貼られちゃってるけど!??

「ああ、すみませんねえ、数年前から5年に一度ご開帳させていただくように変更したんですよ。以前は毎日拝観していただけたんですけどね」

……呆然とする私に、衝撃の一言!

「昨年ご開帳したので、次回は30年になります。お客さん若いからまだまだ大丈夫。また来てくださいよ」

の~~~!!!

思わず白目むいたかもしれません。

同行の友人Kは、「い、いく??大丈夫?」と心配してくれましたが、お厨子の外にある12神将と鎌倉時代の日光・月光菩薩さんは拝観できるので、どうにか持ちこたえました。

ああああ、でも観たかったなあ。

こちらの三尊像は、本当にかわゆらしくてねえ。

ご本尊のお薬師さんが優しいお顔で、手に葡萄の房を乗せてるさまもかわゆらしいですが、特に、両脇時の手のかたちが可愛いのです。ピングーの手みたいな、というかなんというか。先がピョンと反っているんです。ううむ、ちょっと下手な絵で描いてみますと…

大善寺

普通は手のひらを前側にひらいているかたち(印相)や、もう一方の手で持っている蓮華の茎の下部分を持っていたり、そんなのが多いかなと思うんですけど、ここまで反り返ってるのは見たことないですね。「おしゃまさん」みたいなポーズに見えます。お顔も少女のようにかわいいので、見ていると思わずにっこりしてしまうようなお像です。

…ってここまで語ってますけど、結局本物観られてないですけどね。写真で見てここまで語ってますけどね(涙)。

(続く)

file.67 道の駅大滝温泉の平(でえら)

いちにちいちあんこ

この週末は、埼玉から自家用車で山梨県へと旅してきました。片道3時間半の車旅。私にしては大冒険です。

実は、中村彰彦先生の連載「疾風に折れぬ花あり」をお手伝いさせていただいているのに、山梨県の肝心なエリアには子供のころ以来行ったことがなく、ぜひ一度ナマで味わってみたい、と思っていたのです。

とはいえ、運転がシロウトに等しい私の運転です。無理はいけませんから、埼玉県から高速に乗れずに行けるルートでまずは入ってみよう、ということになり埼玉県は秩父を目指しました。現在秩父市になっていますが、私が子供のころは「大滝村」と呼ばれていた秩父山地の一角にあるエリアを通って、雁坂トンネルを抜け、山梨に入るルートです。

大滝村に入るまでに、埼玉県中央部にある我が家から一時間半。

ちょっと休憩をしようということで、「道の駅大滝温泉」に入りました。
道の駅大滝温泉みてください!この青空!!
本当にいいお天気で、こいのぼりも泳ぐのが楽しそうです。

さて、この道の駅は、かなり大きくて、日帰り温泉、レストラン、歴史資料館、そして物産直売センターがあります。

私たちは、先を急ぐ身ですので、物産センターにちょろっと立ち寄るだけにとどめましたが、温泉に入ってゆっくりするのも楽しそうです。

さて、物産センターに入ると、私が探すのはもちろんあんこもの!

さっと店内を見渡すと何やら見慣れぬもの発見!!

でぇら

なんでしょうか、これ!

「平(でえら)」と書いてあります。埼玉では「素まんじゅう」と言いう素朴なおまんじゅうがあって、大好物なのですが、生地はそれに似ていますね。でもなんか平たいですよ。でえら、というのはたいら、というのの方言ですね。

それにしても、初めて見ました!

これは食べてみなくちゃですよ!
三色入り、というのを購入。あんこと、しゃくし菜と、おなめ。
しゃくし菜は秩父特産のお漬物で、野沢菜みたいな感じです。おなめは田楽味噌みたいにちょっと甘いお味噌です。

でぇら(あんこ)

なんといってもいちにちいちあんこ、ですからね!

まずは、この小豆あんの入っている「でえら」から。

ところで、この「でえら」ですが、秩父市でもこの辺りの特産みたいですね。素まんじゅうを平たくした感じで、味は素まんじゅう。でも、ちょっと違うかな…。

でぇら(あずき)

なかはこんなかんじです。

小豆あんは塩味が利いてて美味しい!素朴な味ですね。

ほかのしゃくし菜とおなめも食べてみましたが、どれもおいしかったですが、ふと思いつきました。これ、おやきに似てます!

おやきと素まんじゅうの間くらいです。なので、たとえば、パンでたとえてみますと菓子パンというよりは食事パンに近い位置づけなんじゃないかな。だからかもしれませんが、しゃくし菜のでぇらが一番おいしく感じました。記事のほんのり甘い感じと、しゃくし菜のお漬物のしおっけがベストマッチなんですよね。…あんこ好きとしてはあるまじき発言かもしれませんが^^;。

それにしても、埼玉県に生まれて育ってはやうん十年ですが、まだまだ知らない食べ物がありますねえ。嬉しい出会いでした!

そして旅は続く…

道の駅 大滝温泉
http://www.ootakionsen.co.jp/index.html

 

「朋あり 遠方より来たる また楽しからずや」

一昨日の晩は20代の頃よく遊んでいた友人Mちゃんと12年ぶりの再会を果たし、お土産に食パンをいただきました。食に関するライティングも多くものしているMちゃんだけあって、この食パンが美味しいのなんのって!!

Centre the Bakeryという、銀座にある食パン専門店の食パン。調べてみるとなんとあのVironの姉妹店みたいなお店です。ううむ、さすがMちゃんだなあ。

美味しい食パンって、本当に幸せな気持ちにしてくれますね。たとえるなら、「自分が猫になって、なでるのが上手な人に背中を撫でてもらってご機嫌になってる」みたいなかんじですよ。

トーストにしても素晴らしいし、そのまま食べても素晴らしい。こんなに美味しい食パン、なかなか出会えないですよお。

そんな食パンを幸せだわあ、と思いつつ目をつぶっていただいてると、今度は宅急便が。友人Tさんからの宅急便。

メールで、「借りてた本を発見したから送るね。あと武藤さんが好きそうな本も一緒に入れといた」と連絡をもらっていたので、あ、あれかなといそいそ受け取ってあけてみると…

20140509-1

まずこの二冊は、私が貸してたもの。あ、Tさんが持ってたのか!!ないなあ、と思ってたんですよね。
実はこの二冊は私にとってとても大事な本(図録、雑誌)なんですよ。私の趣向のすべてがこの二冊で説明できるかもしれないってくらい。

そして、Tさんがおまけで入れてくれたのが、
20140509-2この三冊!!!

Tさん、私の大好物分かりすぎ~!!

まず、一番右の船尾修さん著『カミサマホトケサマ』は一見わかりにくいかもしれませんが写真集。かつてこの中で見た光景を生で見たくて、大分まで足を運んだことがあります。懐かしいなあ。

大分県の国東半島は、非常に濃ゆい宗教的土壌があり、仏教的であり、土俗的なさまざまな事象が今も伝えられていて、本当に素晴らしい場所です。この『カミサマホトケサマ』はその風土をこれ以上なく正しく捉えていて、素晴らしい一冊だと思います。

そして、中央の『自然と文化そしてことば』は、初見。なんと特集が「祭文と呪文の力」ときたもんだ!不勉強でまったく存じ上げませんでしたが、アジア・アフリカ言語文化研究所の研究活動を発表する場として発刊されていたものだそうです。

そして一番左は『大津絵』。日本を代表する「民画」である大津絵を集成した一冊。Tさんはかねがね「民画」に強い興味を寄せていたけど、大津絵にも手を出してたのか…とその博覧強記ぶりに思わずうなってしまいました。
大津絵をこれだけまとめてみたことがなかったのですが、なるほど、これはいい!!
Tさんが「民画」を愛してやまないことの意味が、ちょっと理解できた気がします。大津絵研究と言えば柳宗悦ですけど、今度そちらも読んでみようかなあ。

それにしても。

友人が買ってくれた最高に美味しい食パンを食べながら、友人が送ってくれた大好物な本を眺め観る、この幸せさ、ときたら…。

私って、かなりの「幸せもの」じゃない?
と、ふとおもいました。仕事が大変でプレッシャーに負けそうになって、お腹が痛くなったりしても。いわれもない悪意を受けて、泣き寝入りしたりしても。

こうして、理解してくれる人がいる。いつも一緒にいるわけじゃないですけど、「今頃どうしてるかな?元気かな?」とお互いを思うことができる人がいる。

本当にありがたいなあ、と。

『朋あり 遠方より来たる また楽しからずや』
論語の一節がふと頭に浮かびます。孔子師匠の言う通りですよ!ほんと!

さあて、それでは、今日ももうちょっと頑張りますか!!